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「心が叫びたがってるんだ。」

すでに、「空の青さを知る人よ」のエントリーでも書いたが、監督:長井龍雪、脚本:岡田麿里、作画監督:田中将賀による、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(2011年)」に続く「秩父三部作」の真ん中の作品(2015年)。

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順は、幼いころ「山の上にあるお城」にあこがれていた。そこでは王子様とお姫様が舞会で踊っている・・・ところが、その「お城」の門から、王子様のお父さんと知らない女の人のお姫様が走り出てきた。

家に帰った順は、母親に、興奮しながら見てきたままを話す。母親の顔は硬直し、「そのことは誰にも言っては駄目」と釘を刺す。

しばらくして、お父さんは「お姫様」のもとへ引っ越してしまう。順への「お前が話したのが悪いのだ」との言葉を残し。

順の前に卵の妖精が現れ、口にチャックを入れてしまう。

それ以来、順は言葉を話せなくなる。話そうとすると、お腹が痛くなる。

高校生になって、順と同じクラスに、もうひとりの主人公である、坂上拓実がいる。

拓実の両親もまた、教育方針の違いから離婚していた。

2人のいるクラスは、「地域ふれあい交流会」の催しの担当にされる。音楽教師は、順と拓実、そして野球部の田崎大樹、チアリーダー部の仁藤菜月を勝手に指名する。

ミュージカルを上演したらという話になるが、みんな気が乗らない。声の出せない順が担当することをいぶかしむ声も上がる。

しかし、順は歌う時だけは美しい声で歌えるのであった。

彼女は、携帯メールの画面を通してしかコミュニケーションをとることができない。拓実の携帯に、長文のメールで、ミュージカルの台本案を送りつける。それは、順のこれまでの苦しみと共に、順の夢を託したものだった。

上述の4人の関係を軸として推移していく、群像劇的学園物語である。

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ほんとうによくできた脚本のストーリーだし、作画も丁寧だし、音楽もいいし、しゃべれない順のキャラデザも、動きもかわいいいし、声優の水瀬いのりも実にうまい。

音楽については、「のだめ」でも有名な、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」の第2楽章のメロディが、"Around the World"のメロディと対位法的に一致することなど、誰が気づいたのだろう?

テーマは、「ひとに本当に思っていることを言えるかどうか」である。主要登場人物の4人は、すべてこの点で葛藤を抱えている。

エンディングは乃木坂46。

年に1本あるかないかの、劇場用アニメの傑作であろう。

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」も是非観たくなったが、なにぶんTVシリーズである。少し時間をいただきたい。




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