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「130万円の壁」

大変ありがたいことに、長期継続を前提とする高単価の仕事を頂いた。

事前に調査すべきことが大変多い上、初稿納品後もクライアントの要望がこれでもかと盛り込まれて後から加筆すべき項目がどんどん出てくるような長文案件で、初稿完成までに最低3~4日必要とする。が、そのような案件こそ得意とする私にとっては願ってもないチャンスの到来だった。

けれども、その仕事を受けるといわゆる「130万円の壁」を中途半端に超える可能性が濃厚になってきたので、多少無理をして仕事をもっと増やすか、高単価の仕事を断るか、全体的に仕事の受注量を最小限に抑えるかの三択を迫られた。

そこで家族や親兄弟などとも相談した結果、フリーランスはいつ受注している仕事が消滅するかわからない不安定な状況であるということで、仕事を縮小して扶養控除の恩恵を受けておいた方がよいという結論に達した。つまり仕事をセーブし、扶養控除を受けながら細々と長くこの仕事をする方向にシフトすることにしたということだ。

幸い、その旨を全て包み隠さず話したうえでクライアントに相談したところ、こちらの勝手な都合にかかわらず発注量を調整し、扶養控除の範囲で仕事を下さる事となったので、扶養控除の恩恵を受けられるうちはそれで行こうと思う。

フリーで仕事をしているサラリーマンの妻が扶養控除(=誰もが受けられる基礎控除)を受けたい場合、「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を出し、基礎控除38万円に加え青色申告の65万円控除を受けることで扶養内パートと同じ103万円の扶養控除が受けられる。

これは報酬の中から源泉徴収された税金や経費(クラウドソーシング手数料や交通費などの必要な出費)を全て引いた「所得(手取り収入)」で計算する。ただ、自営の場合は経費の計上でうまく調整できるためこの点についてはあまり問題がない。

けれども、社会保険料(国民年金料、健康保険料、介護保険料)は源泉徴収されている税金はもちろん、各種経費も全て含めた「総収入」を元に算定される。扶養範囲内とされる金額は130万円以内。つまり税金やクラウドソーシングの手数料が引かれる前の報酬金額が年間130万円、(1カ月あたり108,333円以上)となるとアウトとなる。

その社会保険料は、改めて計算してみると恐ろしく高い。サラリーマンと違い事業主が折半してくれるわけでないので本当に高い。中途半端にしか稼げないなら頑張って働いた意味がないと思うくらいがっぽり徴収されてしまう。だから、この恩恵は受けておいた方がサラリーマンの夫がいる私にとっては大きな得なのだ。

クラウドソーシングの手数料が20%、源泉徴収10.21%。合算でかなり大きな金額が引かれているので全く実感がないが、それを入れて改めて総収入を勘定したら思いのほか収入があり、年間収入130万もそう遠くはないとわかったので大変驚いた次第だ。

現在は子育ても終わりまだ介護もない。だからまだ多少は余力があるのでその仕事をフルに受けても全く差し支えない。けれども、中途半端に130万を越えれば労力が増えても収入は大幅に減ってしまうし、高い社会保険料を取られてもプラスになるほど仕事を増やせば今度は自分で自分の首を絞めることにもなりかねない。

そんなわけで今、全く贅沢過ぎる悩みを抱えている次第だ。

収入が安定しないフリーで仕事をしている私にとって、この130万の扶養控除は大変ありがたい。けれども、企業に雇われているサラリーマンの妻だけがこの恩恵を受けられ、夫が専業主婦の妻の社会保険料を払わなくても妻は国民年金をもらえる、というのは、普通に考えればかなりおかしな制度だ。

それに、社会保険とは別の話だが、同じように仕事をしているのに宮仕えではない、という事だけで、フリーの労働者は労働基準法の適用外となり、サラリーマンが有する当たり前の労働者の権利が全くないという状況も異常だ。それはフリーに対する一種の人権侵害ではないかと思うほどその扱いは違う。

政府は、働き方改革だなんだのと言って税金をもっと徴収したいなら、組織に属さず働いている人が理不尽な思いをせずにすむ法律を作るべきだし、社会保険に関しても戦後の高度成長期のままではなく、抜本的な改革をするべきではないだろうか?もはや時代は180度近く大きく変わっているのだ。

追記:健康保険料に関しては、会社が所属する健康保健組合、共済組合等により扶養控除となる金額が違います。詳しくは、勤務先の各健康保健組合に問い合わせてください。

画像:PhotoAC

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