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[ショートショート] カバー小説:世界はなかった [まくらさんの10文字ホラーをカバー]

小説のカバーをやってみよう、という試みです。
原作は、まくらさんのこちらの作品。

観測無しで世界は無い

世界はなかった

 目を閉じる。そこには何も無い。

 目を開ける。目の前には道がある。

 俺は歩き始める。特に理由はない。そこに道があるからだ。

 横断歩道。赤信号。目を閉じる。世界が消える。

 俺が目を閉じると世界は消える。そういうふうにできている。

 目を開ける。横断歩道。青になる。みんなが一斉に渡り出す。
 俺も歩き始める。特に理由はない。

 いつもの路地を右に曲がる。
 古びたビルに入る。
 階段を上る。

 2階の部屋に入る。

 上着を脱いでベッドに横になる。

 天井にはいくつものシミがある。
 それが顔に見える。

 誰かの残り香がする。
 俺は知らない。こんな奴は俺は知らない。

 目を閉じる。世界は消える。

 俺が見なければこの世界は存在しない。
 この世の何も存在しなくなる。

 だから俺は目を閉じる。再び目を開くその日まで。

(おしまい)


あとがき的な

10文字の世界をカバーするのはむずい。
だけども、まくらさんの10文字ホラーが、私の感覚にどんぴしゃでゾッとしちゃってカバーしちゃいました。

シミュレーテッド・リアリティ
この世界は私が見ていないと存在しない。
このテーマでずっと長編小説を書いてて、そっちの世界とも私の中で勝手にリンクしちゃいました。

そんなイメージで、以前に作った曲をそっと添えておきます。
なんか本文よりこっちの方がカバーっぽいかも。


椎名ピザさんの『カバー小説』に挑戦です。


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