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奈良美智: The Beginning Place ここから@青森県立美術館 240102

青森県立美術館には「あおもり犬」と「森の子」があるので、今回の企画展では、建物全部で奈良美智美術館といってもいい印象を受けた。



展示自体は展示数自体は多すぎず少なすぎず、ちょうどよかった。
1,家
2.積層の時空
3.旅
4.No War
5.ロック喫茶「33 1/3」と小さな共同体

上記のテーマに沿って、1979年から2023年までの作品からチョイスされていた。
5つのテーマは奈良美智の作品を観ている人なら納得がいくと思う。

80年代の作品は現在の絵とはだいぶビジュアル的なテイストが違うのだが、人物の目はすでに今の目と同じなのが興味深かった。奈良美智にとって目とは、どういう意味を持つのだろう。


奈良美智はかわいくてポップな絵が人気なアーティストという扱いなのだと思うが、それではモダンアートでは相手にされないだろう。
それではなにが評価されているのだろうか、という疑問が以前からあった。

個人的には、初期衝動的な反発心や寂しさといった子どもの頃に持っていた「感情の根っこの部分(本来はつかまえることができずにあいまいになってしまう感情)」をそのまま表現できる、というところが斬新なのではないかと思っている。

この「売り」は強力だと思う。平面だけでなく、立体でも表現できるし、音楽や詩でも表現できる。奈良美智の感覚が鈍らない限り、なにをやっても奈良美智の作品になる。
もちろん、「感覚が鈍らない限り」というのが大変なことなのだが。何十年もの間、初期衝動を失わずに活動し続けることができる人がどれだけいるだろうか。だからこそ、奈良美智は評価され続けているのだろう。

そういう観点から、今回の展覧会はいかに奈良美智がブレずに活動を続けてきたか、というコレクションであり、作風の変化や多様化はあれども、昔から奈良美智は奈良美智だったんだな、ということを一望できたのはよかった。

それにしても世界のお金持ちは戦争で儲ける人もいるだろうに、奈良美智のように声高に反戦を掲げて、ビジネス的には大丈夫なのだろうか、とも思う。村上隆よりも市場価値が高いという話をどこかで聞いた気がするのだが。そのあたりのからくりはどうなっているのだろう。
下世話な話、と思われるかもしれないが、モダンアートってそういうものだし、大事なところだ。


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