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なぜトムは日本語が上手なのに、英語で指示するのか?

トム・ホーバス監督は、男子日本バスケットボール代表に就任以来、快進撃を続けています。トムは、東京オリンピック女子ヘッドコーチ就任以来、固定観念を次々と打ち破りました。そして、誰も予想し得なかった東京五輪銀メダルという快挙を成し遂げたのです。こうしたトムのリーダーとしての手腕は、教育界でも多く取り入れられると思いますが、今日は指示の出し方に目を向けて考えていきます。

日本語が堪能なトム

トムは、日本語が非常に上手です。23歳の時に日本リーグのトヨタ自動車ペイサーズ(現:アルバルク東京)に入団しました。4年連続の日本リーグ得点王や、2年連続の3ポイント王を獲得しています。こうした日本でのバスケット経験に加え、奥様が日本人というのが大きいかもしれません。バラエティー番組でも、トムが日本語でユーモアを交えて話している姿をよく見ます。

女子代表では日本語で指示

トムは、女子代表の時には日本語で指示しています。その際、インタビューに対して、このように語っています。

「通訳をつけようと考えたことは一度もない。通訳がいると選手たちは話を聞く時に、私ではなく通訳の方を向く。それが好きじゃないんだ。トヨタでプレーして日本語を分かりかけていた時、通訳がコーチの言っていることのすべてを訳すのは本当に難しいことも分かっていた。だから自分で日本語を話せればいいと考えたんだ。」

BASKET COUNTより

納得です。やはり、日本語で話せた方がメリットが大きいのは、だれもが疑いようもないことです。

男子日本代表では、英語で指示をする

トムは、オリンピックという大舞台で、女子を銀メダルという結果に導きました。もともと、世界で一位を公言していたので、納得はしていないとは思いますが…すごいことです。つまり、素晴らしい指導方法で、結果も出しているわけです。しかし、男子代表の試合では、トムは日本語を捨てて、英語で指示をするようになりました。もちろん、通訳も付けています。世界で通用した指示の出し方をトムは変えたわけです。一体何があったのでしょう?

きっかけは選手の一言

英語で指示するきっかけとなったのは、選手の、
「英語で指示してくれた方が分かりやすい」
という一言でした。もちろん、外国につながりのある選手が多いですし、アメリカで活躍する日本人が増えているということもありますが、それでも日本語の方がよく通じます。オリンピックで結果を出した「自分に集中してくれる」というメリットもあります。それを、選手のそうした一言であっさり切り替えられたわけです。

私たちに教師とっては?

過去にうまくいった手立ては、子どもが変わっても使いたくなるのが人情です。教師のこだわりと言い換えることもできますし、悪いことでもありません。また、心理学では、「自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向性」があることがわかっています。うまくいっているのは、前から私がやっている方法がうまくいっている、と思いたいものです。でも、トムはあっさり男子選手の言っていることに合わせました。自分が信じて、うまくいっていた方法を捨てたのです。教師目線で言うと「今年の子どもたちに合わせ切る」ということと言えると思います。

4月、新しい学級開きの前に

3月には1年を締めくくり、4月には新しい1年が始まります。ちょっとでも、トムのように「今年の子どもたちに合わせ切る」という意識をもってみたいものです。私も、これまでうまくいっていた方法を一度やめて、新しい出会いの方法にチャレンジし、子どもに何が一番よいのか、考えてみたいと思います。

                      三浦健太朗


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