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大人でも解決困難な社会課題を、子供に考えさせてはいけないのか?

社会課題はだれのもの?


社会科の研究授業で、耳にする言葉があります
「大人でもわからない問題を、子供に考えさせていいのか?」
という言葉です

社会科では、具体的な社会的事象を取り上げ、そこから汎用性のある知識や技能を学びます
それらの知識や技能を使って、思考判断し、友達と討論していく中で自分の思いを表現していきます
最終的には、変化の激しいこれからの世界を生きていく力を身につけさせていく教科だと思います
だからこそ、子どもたちには多くの社会課題と出合わせていく必要があります

4年生でもここまで考えます

例えば、4年生の社会科では、

「廃棄物を処理する事業は人々の健康や生活環境の維持と向上に役立っていること」

を学びます
この中で、最終処分場の敷地は有限であることを学びます
「処分場が一杯になってしまったらどうするの?」
「処分場がすぐに一杯になってしまわないようにするためにはどうするの?」
という大人でも解決困難な社会課題に向き合う必要があります

さらに、「供給の仕組みや経路」の発電に関しては、学習指導要領に

「電気を取り上げる場合には,電力を大量に消費する大都市圏に住む人々の生活は,消費地から離れた県などにある発電所から電力の供給を受けることで成り立っていることに触れるようにする。その際,先の東日本大震災において原子力発電所で大きな事故が発生したことに伴って生じ,現在なお直面している多くの困難を踏まえ,当該地域やその住民,一時避難者に十分配慮して指導することが必要である。」

と書かれてあります。つまり、
「大都市圏の電力消費のために、福島の人々が犠牲になっている面がある。
この指導をする際には、この問題で今なお大変な思いをしている人がいるから、気を付けて指導してほしい」
ということが書いてあるのだと思います
さらっと書いてあるけど、これを4年生にきちんと向き合わせるとなると、今なお解決できていない問題を、子供たちにきちんと向き合わせる必要性を感じるのです
私の知っている先生は、授業のために、人が住めなくなった街で写真を撮って、子供たちに提示していました
こうしたことを、子供たちが教室のみんなで一緒に考えていく授業が大切なのだと思います
というように、小学校の4年生という早い段階で、大人も解決困難な問題を学ぶことになっています

注意点

この際、注意しておくべきことがあります
それは、「あくまで小学生の世界の中で、社会課題と向き合うこと」です
小学生には、選挙権がありません
もちろん、経済活動も限られているわけです
稚拙な行動化を求めてはいけません
学習指導要領にも、選択・判断について

私たちはどうすればよいか,これからは何が大切か,今は何を優先すべきかなどの問いを設け,取組の意味を深く理解したり,自分たちの立場を踏まえて現実的な協力や,もつべき関心の対象を選択・判断したりすることなどである。

と書いてあります。つまり、
「大人も解決できない問題について、小学生として何ができるのか、現実的に考えてください
 今は深く理解して、関心をもつべきことを決められれば大丈夫」
ということだと思います
大人も解決できない問題を、あくまで小学生として見つめ、きちんと関心をもつ
そして、大人になったときの準備をしましょう
ということなのだと思います
こうして、「公民的資質の基礎」を養っていくわけです
「基礎」を養うために、小学生の世界で、積極的に、大人も解決できない社会課題に向き合うべきなのです
一番大切なことは、小さな授業論にとらわれることではなく、これからの激しい変化の社会を生きていく子供たちに、
「自分は社会とは関係ない」
と思わせないことなのではないでしょうか?

                   三浦健太朗

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