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「せっかくだから」を飲み込む勇気

 数年前の私の学級に、不登校のAさんがいました。参観日当日、Aさんは、朝からふらりと学校に来ました。教室に入ると、「先生、給食の前に帰るけどいい。」と聞いてきたので、「うん、分かったよ。」と答えました。
午前中、周りの子たちも特別扱いせず、いつも通りに過ごしてくれていました。

 そして、午前中は、あっという間に過ぎ、給食の時間になりました。私は思わず、
「せっかくここまで来たんだから、給食食べていこうか。」と言っていました。あんまり調子よく過ごしていたからかも知れません。もっといえば、そのまま参観日の授業にも参加できるかもと期待していた自分がいました。

 結局、Aさんは、給食を食べてから帰ったのですが、次の日からは、また、学校には来ませんでした。当時は、深く考えませんでしたが、その後いろいろ経験したり、勉強したりした今は、「せっかくだから」と何で言ってしまったんだろうと後悔しています。

 Aさんは、久しぶりに登校することを決心し、午前中、必死で頑張って、やっとゴールの4校時までたどりついいたのです。私から
「午前中、やり抜いたね。はなまる。さあ、帰ろう。」と言ってもらえると思っていたはずなのに、私からの言葉は、
「せっかくここまで来たんだから、給食食べて帰ろうか。」だったのです。Aさんにしてみれば、裏切られたと感じたでしょう。

「せっかくだから」を飲み込む勇気をもつことも大切だと思っています。不登校児童が抱えている背景は一人一人違います。そして、何より一番、悩んでいるのは、子ども本人。

「せっかくだから」は教師のわがままだと今は言えます。
                           大賀重樹


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