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道徳授業「持つ国と、持たない国」

私は社会科が好きです。
戦後、社会科も道徳も同じ教科でしたので、とても近いところがあります。
社会科が道徳っぽくなっちゃうことがよくありますが、社会科っぽい道徳の実践を紹介します。

「宿題、今日は無しにしてください!」
「今日は自学をやりたくありません!!」

そんな声がよく届きます。勉強の価値を伝える日々ですが、道徳からのアプローチがあってもよさそうです。
そこで、ナウル共和国のことを授業化しました。

ナウル共和国は、南太平洋の島国で、世界で3番目に小さな国。日本だと、ちょうど品川区と同じくらいの面積の国です。リンの鉱石が見つかり、一気に豊かになった国です。
子どもたちに、次のようなスライドを提示し、どこまでが本当?と聞いてみます。日本では、考えられないことばかりですね。というか、世界のどこに行っても、こんなことはそうあり得ることではありません。

子どもたちは、
「①もないんんじゃないかな。正解は、0だな」
「さすがに、④はあってはならないよなあ。③までだな」
「④が本当なら、⑤もあるなあ」
などと言いながら、どこまでが本当か、手を挙げていきました。

そして…

なのです。ナウル共和国は、リン鉱石の販売で稼いだお金で、国民全員に年金を支給しました。つまり、全員にベーシックインカムを保証。1割だけが国家公民として働き、あとの必要な労働力をお金で海外から雇いました。だから、基本的にナウル国民は働きません。

反面、日本は資源に乏しい国です。生活に必要なエネルギーや金属のほとんどを輸入に頼っています。しかし、最新のGDPの結果は、世界で3位だと紹介します。すると、子どもたちは、
「きっと働きまくっているんじゃないかな」
「努力しているんだ!日本人は!!」
などとつぶやきだしていきました。

ここで子どもたちに聞きました。
「資源があって、働かなくても生きていけるナウル共和国と、資源がなくて、働きまくっている日本。どちらに住みたいですか?」

すると、驚いたことに、クラスの9割以上が日本に住みたいと答えました。ナウルに住みたいと答えた子は、全体の2人だけでした。日本に住みたいという子に話を聞いてみると、やはり努力が大切だとか、働くことの大切さを語っていました。

最後に、ナウルがどうなったのかを子どもたちに紹介しました。
ナウルは、30年でリン鉱石が枯渇。国に残ったのは、30年間働くことを忘れた国民。実に国民の90%が肥満で、30%が糖尿病というデータを伝えました。今、国の再建に向けて模索が続いているそうです。

金属や資源をもたなくても、努力と勤勉さをもつ日本国民こそが、本当の資源。これが、一番伝えたかったことです。

私たちの職場でも、先生たちこそが資源だし、子どもたちも資源。そんな学校の姿を、常に忘れずにいたいものです。

                     三浦健太朗

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