カウンセリングのロールプレイを「見せること」について

選択理論心理学を学ぶ過程で、 選択理論のカウンセリング領域である「リアリティーセラピー(現実療法)」のロールプレイをすることが推奨されています。

そのため様々な場所でロールプレイが実施されており、 日本では第一人者の柿谷先生のロールプレイがYouTubeで見ることができます。

しかし多くのカウンセリング法・心理療法では、 私が知らないだけかもしれませんが、ロールプレイが公開されているかわかりませんし、選択理論(現実療法)のロールプレイも動画で公開する事は基本的にありません。それについてなぜなのか少し書いてみました。

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先に、選択理論心理学を学ぶ過程でリアリティーセラピーのロールプレイをすることが推奨されていると書いたのは、 ウィリアム・グラッサー博士の言葉が関係しています。

というのも、そもそも最初にグラッサー博士が確立したのがリアリティーセラピーであって、それを理論化したものが選択理論なので、選択理論を学ぶにはリアリティーセラピーのロープレが一番役に立つとおっしゃっていたからですね。

ではできれば他の心理療法の、実際のカウンセリングの録画とかロールプレイとかからも学びたいなと思っていたところ、「グロリアと3人のセラピスト」 と言うフィルムがあることを柿谷先生に教えていただきました。

ところがこのフィルムは、現在アメリカでは上映禁止になっているとのこと。日本でも「教育現場でのみ使用」ということですが、柿谷先生も「学会の倉庫のどこかにあるはずだけど」と仰る状態。 たまたま参加した講座で1部上映したものを見たと言う仲間がいて、羨ましいなと思っていたところでした。

そんなこんなでいろいろ調べているうちに、なぜ上映禁止になったのかと言うことがわかりました。

このフィルム、当初はアメリカでのカウンセリング普及の過程で、不特定多数に対して「劇場で上映されていた」ばかりでなく「テレビ放映もされた」という事実。しかもビデオ撮影はたった一日で行なわれ、ビデオを撮影されることに対しての、クライエントであるグロリアさんに対する、事前の説明もなければ同意も契約もなかったということ。またグロリアさん本人は悩みを抱えていたものの、カウンセリングを必要としていなかったが、自分のことを包み隠さず語って、それが録画されたものだったということ。

当然のように、後日グロリアさんには体験談を求める依頼が殺到したため、企画者のショストロム氏に対してグロリアさん側は訴訟を起こし、これによって上映には配慮が必要になったという背景があったというのです。

またグロリアさん自身、自叙伝を書く準備をしていたさなか、1979年に死去したのも問題を複雑化させることにつながったようです。(交通事故でも自殺でも無く病死された。ちなみにグロリアさんの意志は子供さんが引き継いで活動している。)

・それから発生した不幸は主に次の2つ

1.カウンセラーやセラピスト===グロリアさんに「人格障害、神経症、依存症」などの部分を探し、症状を当てはめて理解・解説するようになった。

2.一般大衆===カウンセラーやセラピストの発信する情報を元に「自殺、交通事故、セックス依存、レズビアン」など、事実と異なる噂と誹謗・中傷を拡大させていき、中傷はグロリアさんの子どもやその二人の娘(グロリアさんの孫)にまで及んだ。

こうなったら上映できないのも当然ですね。

確かにリアリティーセラピーのロールプレイはたくさん行われていますが、その実施には、かなり配慮をするようガイドラインがあります。例えば どこかの会場でロールプレイをする場合、その会場にいる人の名前にかぶらないようにするとか、実際の事例は基本的には使わない(どうしてもと言う場合にはアレンジして扱うこともある、がかなり慎重に扱う) といったところですね。

基本的にロールプレイは学習のためであって実際のカウンセリングでは無いから、うまくいかないまま終わることもあるのですが、そうなった時に、 クライエント役はもちろん、聞いていた人がモヤモヤしたまま帰ることになるのを防ぐためにこうした配慮をするように、と案内されています。

過去には講師が選んだ事例(お題)が、そこに参加している方の体験を元にしていたものだったので「これ私の話だ」となって葛藤を引き起こした、なんて例もありました。

このようにいろいろありますが、自分もロールプレイの練習会を主催している身として、注意しながら皆さんの選択理論の学習のお手伝いをしていこうと肝に銘じた次第です。

ちなみに前述の「グロリアと3人のセラピスト」のフィルムは、分割してYouTubeにアップされているのを教えていただき、一通り見ることができました。カール・ロジャース(来談者中心療法)やフリッツ・パールズ、(ゲシュタルト療法)、アルバート・エリス(論理療法)について、それぞれの本家の方の関わり方が興味深かったです。

最後に: 選択理論心理学を学ぶことで自分の人生の舵を取るようになれる、とグラッサー博士は励ましてくださっています。そのためのロールプレイの会に興味がある方は、気軽に声をかけてくださいね。

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