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#10 ALS患者になるまで①

2012年6月。
この年に初めて神経内科の診察を受けた。
いつもは内科の患者が多く、町医者的な個人医院。
丁寧な説明をしてくださると評判のドクターだと聞いていた。

ここに辿り着くまでに症状は出ていた。

つま先立ちができない。
歩き方がおかしく、歩くスピードが遅くなる。
階段を上がる時、手すりを持つ腕の力で足を上げていた。

もうごまかしがきかない状態だった。

先生は、打腱器というハンマーで手足をトントン。
その後すぐに血液検査を…と血を取って、1週間後に来るように言われて、その日は終わった。
この1週間、ネットでいろいろなことを検索しようとしてはやめ、してはやめ…を繰り返した。
正直、ケアマネの時、神経難病の方を担当したこともあり、自分の初期症状から、

「これは整形外科ではない」

という確信があったので、1週間後の結果が怖くてたまらなかった。

1週間後、血液検査からCK値(筋肉に何かしらの異常がある場合に高くなる値)が異常に高く、すぐに大学病院の紹介状を書いてくれた。

「やっぱりか…」

今までに感じたことのない怖さや不安、悲しみがこみ上げて、車の中で涙が出てきて、しばらく動けなくなっていた。

駐車場にあった車は、1台また1台と家路に向かう。
茫然自失の中、自分の車だけが動けずにいた。

日が暮れて暗くなり、ようやくエンジンをかけた。

「家族になんといよう…」

答えが決まらないまま、家に向かった。

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