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「気がつくと、いきなり異世界だった。」

さて、これで何の本かわかった人がいたらすごいですよ。
わたしとお友達になってください。

いまは「異世界転生もの」がラノベ界を席巻していますし、「転生もの」以前は「召喚もの」がはやったし、いつでも「そもそも異世界(ファンタジー)」が舞台、という話は、それはもうたくさんあります。

ありますが、これはそれの中でも早初期の作品、しかも大物作家ものだ!!

神坂一著 『なりゆきまかせの異界人(ストレンジャー)』(富士見書房、1993)

みて、これの出版年。
これは「日帰りクエスト」シリーズ4作のうちの1冊目。
もう紙媒体では古本屋を漁るしか手に入れる手段がないんじゃなかろうか。
そして電子書籍で買えたときのうれしさよ。

普通の女子高生エリが異世界に召喚されるんだけど、召喚した側は国の危機を救ってくれる「勇者」を求めていて、需要と供給のミスマッチが起こった系の物語です。
さすが神坂先生。
王道と見せかけて王道をきっちり外してくるこの手腕。
すばらしいぜ。

こまかい設定もきちんとしていて、異世界だから当然「言葉が通じない」。
でもそれは召喚側がちゃんと予測していて、通訳魔術具を用意してあるとか。
エリが「週末異世界観光」を楽しむために、「塩と香辛料」を取引材料にして日本から持ち込むとか。
ライターとヘアスプレーとか、カメラのフラッシュ(うつ○んです懐かしい)とかで、ピンチを乗り切るとか。

神坂先生自ら「エリは遊び人Lv.0」の主人公、と言っているとおり、エリは普通の女子高生で、神坂先生お得意の「主人公世界最強レベル」のリナとかケインとかとは全く違うタイプの主人公。
なのに面白い。
戦闘能力0のくせに、なんだかんだ機転をきかせて生き残ってしまうのは、リナやケインにも通じるところではあると思います。

うーん、あれ?
これ以上書くことがないな??

なんたって最後に読んだのが10年以上前。
しかも1冊がめちゃくちゃ短いんですよ。
スレイヤーズすぺしゃるの前後編エピソードをちょっと長くした程度の分量しかないんですよ。
これ以上書くと全部ネタバレ。
いや、バレてもいいんだけども。

とにかくね、身もふたもない感じとか、文章の軽さとか、それでいて「異種族間の戦争」と「王都奪還」が物語の基盤であることか、重い部分はきっちり重い。
ラノベって、わりと軽く見られがちだけれど、それは文体が軽いだけであって、結構重たいテーマを扱っていたりします。
それはマンガでもそうかな。
あ、そういえば「日帰りクエスト」はコミカライズ版もあって、それも好きだったなあ。
昔売っちゃったから、もう二度と手に入らないんだろうなあ……
つくづく、紙の本、特に「再販されなさそうなやつ」は手放してはいけませんね。

それにしても、「いきなり異世界だった」っていうエリのメンタルの強さよ。
もうちょっとうろたえてちょうだい。

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