見出し画像

海外学振にボーダーラインで採用された話【要領悪いアメリカ留学38】

僕は、2023年4月から、令和5年度採用分の日本学術振興会海外特別研究員にギリギリで採用されました。
この「ギリギリ」というのは、謙遜ではなく、本当にギリギリだったのです。
そんなボーダーラインだった僕の申請書は、ダントツで採用された方の申請書よりも、これ以上書ければ採用される可能性があると言う点で価値があるような気がしますw
そこで今回は僕の申請書の内容と、今見返した改善ポイントについて考えていきます。


海外学振とは?(ラフ!)

海外学振とは、博士号取得後にポスドクとして留学するために非常に有用なフェローシップ制度であり、
Human frontierや民間のフェローシップよりも、この制度で留学している方が非常に多い印象です(人数を調べる元気はないw) 

海外特別研究員制度は、我が国の学術の将来を担う国際的視野に富む有能な研究者を養成・確保するため、優れた若手研究者を海外に派遣し、特定の大学等研究機関において長期間研究に専念できるよう支援する制度です。

日本学術振興会HPより

2年間カバーしてくれるともあり、2年以上の留学を考えている方はぜひ挑戦するのをオススメします。

僕がボーダーラインを自称する理由

海外学振は博士課程の学振、DC1、2同様、10月頃に発表されます。

2022年9月27日、この時僕が受け取った結果は、「補欠」。
つまり、全体の予算や採用人数次第で合否が分かれる状況でした。
この際、結果画面には「令和5年2月上旬までに採否のご連絡を行う旨」と記されていました。
ここから約半年、ドキドキしながら結果を待つことになります。

順位とかどうなんだろう??

2023年2月9日、学術振興会からメールを受け取りました。
ついに結果が、、、!と思ったら、

補欠者の皆様には、結果開示の画面にて令和5年2月上旬までに採否のご連絡を行う旨をご案内しておりましたが、実際に採否のご連絡をお送りするのは令和5年2月下旬までとなります。

わお!

そして、2023年2月28日にまたメールを受け取りました。
朝、起きるとめちゃくちゃメールが届いていました。
学術振興会と日本の所属機関(大学)の事務からでした。
ま、まさかと思い、結果を見てみると補欠繰り上げ採用の通知でした。

この年、全体の採用率は26.5%。うち、僕が割り当てられている生物系科学では30%。
幸運にも申請分野にも恵まれていました。

R5採用分の結果 学術振興会HPより

申請当時の僕のスペック

2019年12月に博士号取得し、申請までに国内2箇所で研究員として働いていました。

1st author 論文 4本 (IF 2〜5くらい、被引用は合計>100)
Co-author 4本
日本語総説2本
研究分野は神経科学で、分野内の基準的な雑誌Journal of neuroscience がIF5〜6くらいの分野。
お世辞にもIFの高い雑誌にpublishできてる訳ではありません。
ただ、どの論文もIFの割に引用して頂いていて、意味あるか分からないけど、被引用数を【研究遂行力の自己分析】の項目に書いておきました。

国際学会発表4回、海外学会発表賞1本。
フェローシップは学振に恵まれたことはありませんでしたが、民間給付型奨学金2つと、民間研究費1つ、科研費研究スタートアップ1回の採用歴があります。

英語は、TOEIC 750くらいでその他のスコアなし。留学どころかアメリカ行ったこともない。
日常、英語使うことなんてない。
海外における研究歴ももちろんありませんw

書いててなんで採用された?って悲しくなるのですが。。。

これまで、痛覚、視覚などの感覚を研究→聴覚の分野にスライド
生化学、分子生物学、解剖学、行動薬理の基礎経験あり→直前まで内耳の研究→聴覚をモデルとした電気生理や神経計算学を学んで拡張したい
と考え、ラボを選定しました。
詳しくはこちらで、、、


申請者情報等

ここからは、各項目に書いたことを一部ご紹介します。
まずはフォームから入力する申請者情報等。

(1) 書面審査区分 神経科学およびその関連分野
(2) 小区分名 神経機能学関連
を選択しました。
競争激しい気がしましたが、それ以外に適合しそうな分野がありませんでした。

評価書は申請時の所属機関の上司ではなく、博士の時の指導教官に依頼しました。
と言うのも、留学先のラボのPIがその先生のポスドク時代の同僚で、研究分野も近しいと言うことで選択しました。
奇しくも博士時代のラボで初めての海外学振取得生になりました。

アメリカの大学だったので、使用言語に関する項目は、上記スペックのように書きました。

派遣先における研究計画

(1) 研究の位置づけ

「当該分野の状況」、「課題と着想に至った経緯」について、参考文献を適宜引用しながら(わざわざ欄を設けず)1ページにまとめました。
図は1つつけています。

(2) 研究目的・内容等

「研究目的・方法・内容」、「どのような計画で何をどこまで明らかにしようとするのか」、「研究の特色・独創性」、「申請者が担当する部分」について2ページでまとめました。
具体的な実験内容について、小項目を設け、それぞれの実験の立ち位置について、イラスト+チャート様の図を1つ作りました。

外国で研究することの意義(派遣先機関・受入研究者の選定理由)

まず、「申請者のこれまでの研究と派遣先機関の研究との関連性」について、自身の成果について3つに分けて書き記し、その上で選んだラボの魅力と自分のやりたいことをまとめました。(1ページの中の60%)

次に「国内外の他研究機関との比較・派遣先で研究する意義」について下記の2点を書きました。
選んだラボはプログラミングをできないと何もできないようなラボなのですが、僕は全然プログラミングができません(でした)w
その不安を、派遣先のラボのポスドクに相談したところ、「俺も初心者だったけど、うちらみんなで教え合ってるから心配しなくていいよー」って言われたので、まずそのような雰囲気を互いに高め合う研究チーム体制があると記しました。
また、共同研究しているラボなども教えてもらって、そのネットワークの強さについても書きました。
今見てもありきたりですが、、、笑

この部分は派遣先のPIだけでなく、メンバーにも聞いてみるのがいいかもしれません(僕の場合、PIにメンバーと1on1することを採用前に言われていたのでやりましたw)

人権の保護及び法令等の遵守への対応

これは、僕も正解がわかりませんが、、
動物実験とウイルスベクターを取り扱う予定だったので、それに関する記載を行いました。6行のみ。

研究遂行力の自己分析

研究に関する自身の強み

ありきたりですが、「研究における主体性」、「発想力、問題解決力」、「知識の幅・深さ、技量」、「コミュニケーション力」、「プレゼンテーション力」に分けて、具体的なエピソードを記載。
例えば、「コミュニケーション力」では

他者と話し合える機会を大切にしている。博士前期課程の際、共同研究先の研究室内の勉強会に参加させて頂き、単なる知識のみでなく、自分の視点の欠けているところなど多くの発見が得られることに気がついた。それ以降、情報科学の研究室のプログラミング初心者の勉強会や、ショウジョウバエを扱う研究室のセミナーなどに度々参加させて頂き、研鑽を詰んだ。さらには学内での医療に関する学生勉強会を立ち上げたり、薬学会にて既存薬を活かした薬剤開発を考える大学院生シンポジウムを主催しながら、学外の研究チームとも意見を交換し、積極的に知見を広げている。

ちょの申請書より

恥ずかしいくらいキラキラエピソードを詰め込んでおりますw
これらのエピソードと、「研究成果-原著論文 (査読有り、被引用数は google scholar による)」などを関連づけました。
ここまで2ページ中の1.5ページを使いました。

今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素

「多様な引き出しを持つこと」「感じたことや実験結果などをよりよく伝える表現力」「チームメンバーとのコミュニケーション能力」にわけて具体的なエピソードと共に記述。平均的な答え。

受入意思確認書

特記事項になんかコメント書いて、ってお願いしたら、

I intend to hire Dr. ちょ in my lab beginning Summer/Fall 2022. I am very excited about working with him and bringing his expertise to our project.

ちょの申請書より

と書いてもらいました。これだけですw

今見て思うこと

多様性に関する視点がない

アメリカでPIになった人たちの話を聞いていると、interviewで毎回、多様性について考えてることを聞かれたそうです。
外国で研究することの意義として、色んな人種、思想、価値観の人に出会えることは真っ先に挙げられます。
例えば、留学先のラボにどういう人がいるのか書いてみてもよかったかもしれません。

計画中の実験内容の記載が細かすぎる

「xxと言う薬剤を入れて、x日後にxxxする」みたいな記載はアバウトでよかったんじゃないかな?と思いました。
僕の場合、生物学における大局的な意義から細かい実験内容に至る中で、中間層の視点があまり名述されていませんでした。
もう1階層上の研究の立ち位置の記載等があると分かりやすかった気がします。

そういえば、分野外の人に見てもらってない

こういった申請書は、ちゃんと他人に客観的に見てもらった方が良いです(今更w)
僕は神経科学のラボのポスドクさんx2にみてもらいコメントをもらいました。
今思うと、生物学バックグラウンドで神経科学を浅く知ってるくらいの人に見てもらっても良かった気がします。

TOEICとかTOEFLなんとかならなかった?

TOEIC 745点のみで突っ込んでいきましたw
しかも受けたのだいぶ昔、、、w
いいスコアとっとけよ!
と思いましたw

お役に立ちそうですか?w

ここまで、僕の海外学振の申請書についてレビューしてきました。
普通のことしか書いてない気がしますが、何かお役に立つようなことがあれば嬉しいです。

流石に申請書をバーンと公開するのは気が引けますが、もしどうしても必要という方がいれば、ご相談ください。
また、僕でよければ申請書等にコメントできますので、こちらもどうぞ。
XのDMとかなら見ているので、お気軽にどうぞ◎
@chololologlobal

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?