見出し画像

#京宮電車 創作メモ①

京宮電車とは

 鉄道趣味界には、架空鉄道というジャンルがある。文字通り架空の、存在しない電車を創作するジャンルだ。鉄道趣味もここまで来るとさながら荒野の観を呈する。架空鉄道の作者は日夜史料と格闘し、地図とにらみ合い、ようやく成果を出したときには「こいつぁいい電車だグへへ」と口からよだれを垂らしながら半笑いを浮かべるのである。

 私は架空鉄道の舞台として、「京宮電車」を考えている。東京と大宮を結ぶ私鉄である。この記事は、今考えている事を書き留めておくためのものである。

 東京から各方面には私鉄が伸びているのに大宮方面には一本もない。考えてみると少し不思議である。これはなぜかというと、埼玉県の県庁所在地へのアクセスを不便にするために、国が建設を認めなかったからだ……というのは『翔んで埼玉』の読みすぎである。冗談はさておき、大宮は鉄道とともに発展していった街である。実際に、1920年代には「東京大宮電気鉄道」という計画があった。東京ー大宮間の鉄道敷設は事業として成り立つ見込みがあったのだ。

「軽電鉄」としての京宮電車

 架空鉄道を表現する方法はいろいろある。地図の上に線路を引く、電車の設計図を書く、ダイヤを組む、電車の走る光景を文書や絵で表現する…… 既に何度か述べたことではあるが、私としてはこの最後の方法を採りたい。個人的に好きな作品としては、次のようなものがある。

 才能と意欲の欠如した私にとっては、無謀な挑戦かもしれない。しかし、私には表現したい風景がある。それは「踏切」だ。

 私鉄には大きく分けると、汽車ポッポ上がりの路線かチンチン電車上がりの路線かという違いがある。汽車は非力だ。であるから、できるだけ高低差なく一直線に線路を敷かなければならない。もともと汽車が走っていた東武伊勢崎線や西武池袋線は、街道筋を気にせずに線路が敷かれているものである。
 これに対して、チンチン電車は力があるし、こまめに客を拾うことができる。チンチン電車の進化していった京王線や京成線は、街道筋と絡み合いながら、街を突っ切って電車が走る。このチンチン電車上がりの私鉄を、「軽電鉄」と名付けることにする。軽電鉄の特徴は、線路がうねうねしている、駅と駅の間が短い、電車がちょこまか走る、といったところにある。踏切は電車と街の接点であるが、踏切の多さも軽電鉄の特徴といえる。
 より詳しい説明は、下掲の記事に委ねることにする。

 私の家は京王線の隣にあった。物心ついたときから、京王線の電車は暮らしのなかにあった。私が軽電鉄を創作したいと思うようになったのは必然であろう。東京と大宮の間の軽電鉄、それが京宮電車である。王子電軌が北へ北へ伸びていった世界線、とでもいおうか。私は、京宮電車の歴史を考えるとともに、この世界線における街と電車の光景を、これから表現していきたいと思っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?