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声楽教育の5つの原則

優れた声楽教師は自分の感覚や経験を生徒に引き継がせようとするだけではありません。

リチャード・ミラーは、「The art of singing」において、生理学的・音響学知識を、実際の指導に活かした、優れた声楽教師のレッスンは以下の5つの原則に基づいておこなわれるとしました。

①教師と生徒のラポール(相互信頼)
②歌唱の診断と改善策の処方
③定義がはっきりして理解可能な用語を使う
④時間を無駄に使わない
⑤測定可能な結果を​​生み出す

以下にそれを詳しく紹介します。


①教師と生徒のラポール(相互信頼)

生徒がどのような学習段階にあったとしても、長所は存在します。声楽教育についての正確な情報に基づき、生徒の長所を見つけ出し、短所を改善することが声楽教師の仕事です。

指導の成果がなかなか出ないと教師は生徒の素質に原因を見つけようとしがちです。しかしほとんどの場合、問題のあるのは学生ではなく、長所に目を向けない私たち教師自身です。

プロの指導者として、生徒とのラポールを築くことが大切です。生徒の長所を尊重することが、実りある指導をもたらします。教師が生徒の敵対者ではないということを、生徒に伝えることが指導の出発点です。

それは指導者が持つ声楽教育についての正確な情報を生徒と共有することで可能となります。「カリスマ声楽教師」の高圧的で支配的な指導によってではありません。


②診断と処方

歌唱の診断と改善策の処方は、歌声の生理学的・音響学的についての正しい知識に基づいて、現状と、より良い響きを比較することによってのみ可能です。

「教師の好み」
「過去に教師が自分の師匠に習った方法だから」
「現在活躍している教え子に教えた方法だから」

などは、一切診断の根拠にするべきではありません。

歌唱の診断と処方は、脅迫的なカリスマやマジシャンの仕事ではなく、わかりやすく理解可能なものでなければなりません。


③専門用語の固有性

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