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2023年面白かった小説ベスト3

1位 プロジェクト・ヘイル・メアリー

『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。

三体に続き、間違いなくSF史の名作ランキングに刻まれるであろう傑作。
設定が明かされていく最初のシーンから最高なので、できる限りストーリーに関する情報はなにも知らない状態で読みはじめてほしい。

私は面白いというウワサだけ聞いて読んだので、マジで人生史上でもトップクラスの読書感を楽しむことができた。本格SFではあるんだけど、エンターテイメント性が高くて退屈しない。SFはちょっと……という人にも読みやすくてとてもオススメ。

2位 世界でいちばん透きとおった物語

大御所ミステリ作家宮内彰吾が死去。妻帯者ながら多くの女性と交際し、外にできた子供が僕だ。宮内の長男からの連絡をきっかけに、父が最後に書いていたらしい「世界でいちばん透きとおった物語」を探しはじめるが…。

電子書籍化不可能、というヒントだけを頼りにいろいろ想像していたのだが、それをはるかに上回って超えていった。もともと実力のある作家さんだと思っていたけど、本作がきっと代表作になるだろう。

内容もスラスラ読める一方、しっかりミステリとしてのフォーマットを踏んでいるので、本格好きもライトなのが好きな層にも刺さりそう。この本を世に出したその事実に盛大な拍手を送りたい。

3位 正欲

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繫がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。

朝井リョウは本当に作家だなーー。彼の作品を読むたび、そうため息をつきたくなる。世界に静かに横たわっている価値観を浮き上がらせるその筆致が素晴らしく、読み終わるころには新しい視点を手にしている。しかも、鮮やかな説得力でもって語られるので一生忘れられない体験になる。

ポリコレについてすこしでも違和感を覚えたことがあるのなら、読んでおいて損のない作品。誰にも迷惑をかけることのない多様性をどう受け入れればいいのか。考えずにはいられない。


23年はちょうど80冊の本を読んだらしい。
後半あまり読書の時間を確保できなくて失速してしまった。隙間時間をうまく使って、来年はもうすこし増やせたらしいな。
「自由研究」3部作のラストを読んでいるところなので、楽しみ。



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