深さはどれくらい?

 秋は広くて、冬は深いと思う。

 まだ寒さが新鮮に感じられるこの時期の訪れ、思い出すのは受験ではない。
中高時代の文化祭の季節と、そして、首吊りに失敗してはとぼとぼと家に帰った高校2年生のことである。

夏はただ暑いだけだが、春、秋、冬がやってくる時には引き出しの中から過去の記憶が引っ張り出される。

自発的に思い出せるものではなくて、何かしらの刺激で出てくる思い出達だ。忘れたくないから大事な人に共有しようと思う、けれど、ほかの人たちにはどうでもいいことだなと感じる。

私はあなたに、私が覚えている限りの自分の過去をまるごと共有したいけれど、あなたはただ「今」を生きているだけでも実りある時間を過ごすことが出来ているんだろう。
「今」の共有だけならば別に私じゃなくてもいいじゃん、と思う。たまたま席が隣になった人でも、月に一度くらいしか挨拶しないご近所さんでも差し支えはない。

私の今を構成している過去をあなたに見せることで、私のことをきちんと知って、興味深そうに面白がってほしい。

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