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海を感じる塩が好きだ。

ミネラル分が高い塩からは、海を感じる。塩に香りは無いはずだが、味わってみると塩の風味が出てくるようだ。海に行った時の潮の香りを思い出してしまう。料理人は素材のおいしさにはかなわない。そう素直に思わせてくれるのも、良い塩のちからだ。

文・撮影/長尾謙一 

クリスマス島の塩(素材のちから第18号より)
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生産農家の顔が見える料理をつくりたい
〝北海道産ホワイトアスパラの塩釜焼き〟には、北海道の勇払郡安平町追分本町の農家、八木さんがつくったホワイトアスパラしか使わない。口に広がるおいしさは、八木さんの語りかけかもしれない。

素材の良さを突き詰めるたびに、塩のちからを思い知らされる。

オーナーシェフ 岡本 英樹 さん

Remerciements OKAMOTO(ルメルシマン・オカモト)東京都港区南青山
北海道出身。高校卒業後、建築士を目指し働くが、自分が本当に立ちたい舞台として料理を選ぶ。ホテルニューオータニ、シェ・イノで学び渡仏。ギィー サヴォア、トロワグロ、ミッシェル・トラマ、ジャック・シボアと有名な星を持つレストランで修業し帰国。そのほとんどが三つ星。青山アン・カフェ料理長、博多全日空ホテル料理長、ドゥ・ロアンヌ料理長を経て、2012年ルメルシマン・オカモトを開店。

どんなに頑張っても、素材が良くなければおいしい料理はつくれない。料理人は素材の作り手にはかなわないのかもしれない。しかし、競い合うのは同じ場所ではない。素材の作り手と料理の作り手がお互いを理解し、それぞれの場所で自らと競う。最高の素材と磨かれた技術がつくるそのおいしさはお客様を魅了する。まさに「FACE  TO FACE」。長い時間をかけて構築してきた岡本シェフのフレンチの神髄をうかがう。


料理人は素材の作り手にはかなわない

私は北海道出身なので料理のベースとして、北海道の素材をひいきにします。素材の生産者の方に何回もお会いして、この方がつくったものならと納得して使います。

料理人は素材のおいしさにはかなわないと思います。一生懸命生産者の方がつくった素材を、私の料理を通してお客様にお届けする、それが私の任務なのだろうなといつも思います。ですから、なるべく素材を選ぶところにちからを使って、なるべくその素材をシンプルにお出しします。

仔羊などは、たった生後2か月で僕のところに送られてくるわけです。私が実際にその場に行って、その仔羊をなでていると、かわいがっている生産者の方がにこりと笑って、「この子、シェフのところ行きましょうか。」と言われた時には、改めて背筋がピシッと伸びます。命をいただくというのは、こういうことなのだろうなと思います。僕らは素材の作り手にはかなわない。

人生で一番おいしいホワイトアスパラを塩味だけで味わう

このホワイトアスパラは、北海道の勇払郡安平町追分本町の八木さんという農家の方がつくったものです。私の人生で一番おいしいアスパラです。

北海道産ホワイトアスパラの塩釜焼き

ここのホワイトアスパラが出始めると、私は料理に使い始めます。今回は、そのホワイトアスパラを「クリスマス島の塩」と笹の葉で包み込んで焼き上げました。

塩釜の中で、ホワイトアスパラのおいしさが凝縮される

茹でた感じになりますが、水は一切入っていないので、アスパラ本来の水分だけでこのような仕上がりになります。塩加減は、一応、笹の葉で包まれているので強くは中に入っていかないですね。

塩加減に関しては、「クリスマス島の塩」を添えておいて、お客様にご自分で調節していただきます。「クリスマス島の塩」で漬けた愛媛産レモンの皮の表面を刻んで一緒に添えます。

八木さんのホワイトアスパラは、これが一番おいしく味わってもらえる調理法だと思っています。茹でたりしませんからお湯の中にも旨味は逃げないし、フライパンで焼いたり、他の風味をつける必要もありません。味はすべて中に凝縮されますね。しかし、その素材の良さをいかすには、「クリスマス島の塩」がすごく大事なのです。

おいしいものの足し算しか、おいしい料理はつくれない

このポアローはたっぷりのお湯で湯掻くだけなのですが、塩の優しい味しか入りません。仕上げにもふっていますが、湯掻くときには「クリスマス島の塩」のクリスタルをお湯の中に入れて、それを溶かしこんだ後にポアローを湯掻きます。

ポアローのテリーヌ 地鶏のレバームース添え トリュフドレッシング

湯掻き上がったらさっと氷水に入れて、冷え切る前にバットに移しかえて冷やします。完全に冷えたものをテリーヌ型に詰め込むだけなのです。何のつなぎも入っていません。ポアローと塩だけです。

下はちょっとすっぱいトリュフのドレッシングです。上にレバームースを添えて、最後に3つをぐちゃぐちゃにして召し上がって欲しいのです。混ざった時にとてつもなく贅沢な味になると僕は思っています。

この料理も「クリスマス島の塩」が無いと成り立ちません。湯掻く時にどれだけ塩を入れるのですかと聞かれますが、計ったことがないし、その時その時で状況が違います。塩だっていつも同じ味なのかどうか、微妙に違うかもしれませんよね。必ず塩を入れて溶かした後に飲んでみて、「おいしい。」と思ったお湯の中で湯掻きます。おいしいものの中でおいしいものを湯掻くから、おいしいものができるのです。

まずいものを足し算だけでおいしくするというマジックは、僕は持っていないです。素材が良いから、私のような粗めのフィルターを通して、あとは届けるだけなのです。おいしい素材は、そこにちょっとだけおいしさをプラスしてあげれば、さらにおいしいのがわかってくる。それが本当のおいしさだと思います。どこかでずるいことをしていたら、それを隠すのは無理なのです、料理って。

「クリスマス島の塩」が表現のキーワードになっている

こちらは、北海道のミルクラムの料理です。まだ2か月前に生まれたばかりの乳離れしていない仔羊です。

北海道産ミルクラムのコンポジション

羊なのに香りも食感も羊らしくない。この素材の良さをストレートに表現できるのが「クリスマス島の塩」です。肉も脂も凄くさっぱりしています。

当店では仔羊をなるべく1頭買いしていますから、やわらかいもの、硬いものなどいろいろな部位が出ます。素材はお客様がお買い上げになったものなので、できるだけ全部をお出ししたいと思います。ラックはローストして、腎臓は焼いたり、バラ先ではベーコンをつくったり、ソーセージをつくったりします。骨でフォンをとって、それをベースにソースをつくっています。ベーコンなどは塩で一週間は漬けてしっかり中まで味を入れますから、ここでも「塩の味」がキーワードになってきます。あとは素材の味しかありませんから。

今回は野菜と肉ですが、海の物にも使えば「クリスマス島の塩」の持っているミネラルをもっといかせます。また、塩を使ったデザートでチャレンジしてみたいと思います。


お問い合わせ:クリスマス・アイランド21株式会社

(2015年6月30日発行「素材のちから」第18号掲載記事)

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