無題

ユーザーの解像度を上げる!データ分析とカスタマーサクセス

本投稿はCSアドベントカレンダー、12月6日の投稿となります。
表題の通り、今回はユーザーさんがどのように・なぜサービスを使っているのかの解像度を上げ、to C向けサービスを使いやすく改善し、利用価値を感じてもらう(=サクセス!)ための、データ分析プロセスについて書きます。
なお、本稿で述べるデータ分析のプロセスは、to Cに限らず、データの量・質さえ担保できればto Bプロダクトに対しても転用可能です。定性・仮説をデータで磨いていき、更なる定性・仮説を得るサイクルを回す際に、そしてデータを取得し、活用する際に、参考としていただけますと幸いです。

要約

・データ分析はユーザーの解像度を上げるのに有用である
・データだけだとユーザー像を削り出しきれず、定性的なヤスリがけは必要になる(かもしれない)

ご挨拶

改めまして、hachidori株式会社にてCAST Platform事業部カスタマーサクセスをしております、Shimohiと申します。
CAST Platformは、アルバイトさんが「シフト管理と給与計算」をするためのアプリCASTを基盤とします。Platformと名のある通り、現在はCAST JOBというサービスとして、単発バイト・長期アルバイト応募機能もアドオンしております。

CSが何故データ分析を行うのか

今回データ分析を行ったのは、CSとして最も大事になる「ユーザーを解像度高く理解」している状態を作るため、そして「開発・CSの目線を揃えるため」となります。
CASTはC向けアプリとして、延べ20万を超えるユーザーさんにご利用いただいております。C向けである都合上、ユーザーさん一人一人にお会いして「継続して使っていただいている状態」(=サクセスしている状態)を把握することは難しく、サクセスしているユーザーさんを定量・定性的に把握できていない状態が長く続いていました。
Repro・リテンション分析機能を用いて、「5個以上シフト登録を行なっている」ユーザーさんは継続率が高いということは分かっていたものの、「使えているからいろんな操作を行ってくれている」以上のことは分からない状態でした。

そうした背景の下、継続的にご利用いただいているユーザーさんが、どういった使い方をしているのか、そうではないユーザーさんとの差異は何かを正確に理解し、次の開発・施策を検討できる状態にするため、分析を行いました。

データ分析のプロセス・行ったこと

データ分析自体は、あんちべさんの、『データ解析の実務プロセス入門』を参考にして進めました。

今回行った分析のプロセスは、以下の通りとなります。
⓪分析計画の作成
①データ分析の目的確定
②データ群の指定・出力
③データの加工・解釈
④アクションの作成・実装

>⓪分析計画の作成
分析を始めるにあたり、以下のことを決めました。
・分析の目的
->継続期間の長いユーザーさんの正確な現状把握をすることを持って、アプリ改善のためのネクスト・アクションを決められる状態にすること
・担当
->企画自分、データ出力をエンジニアさんにお願い、分析自分
・分析結果によるネクスト・アクションは何か
->示唆を受けて、今後の施策を作ること

分析自体は手段であり、目的ではないということを、企画者・分析の実行者は意識する必要があります。
データを観ていく過程は好奇心を満たされる部分もあり、それ自体楽しいものですが、特に、分析の目的・それによる最終的なアクションの方向性を固めておき、それに沿った分析が行えるような配慮は必須となります。

>①データ分析の目的
データ分析の目的確定は、必要なデータ・分析内容の決定にあたり必要となります。
上述のように、「シフトを5個以上登録しているユーザーは継続率が高い」ということはわかっていたものの、「どういった期間に対して、どのタイミングで、シフト登録というアクションを取っているのか」が不明瞭でした。

従って、「継続期間の長いユーザーさんの正確な現状把握をすることし、ネクスト・アクションを決められる状態を作る」という目的を以下のように分解し、ユーザーさん解像度を上げることを分析それ自体のゴールとしました。

分析内容:

・シフト登録は、アカウント作成日以降か、前月も含めてか
・継続している/していないユーザーさんの間で、シフト登録を終えるまでの時間や、シフト登録数、その他の機能の利用度合いに差異はあるか
・5個以上のシフト登録数は、実際にはいくつであれば、継続率に影響するのか
※その他の機能利用状況とのクロス集計の過程については、割愛します。

これらのゴールから、把握するべき項目は以下のように定まりました。

(利用継続期間が長いユーザー/短いユーザーさんの)
・アカウント作成日のシフト登録数
・アカウント作成日において、それぞれ何個のシフトがアカウント作成日前/後に対して登録されているか
・アカウント作成から初回のシフト登録を行うまでの時間
・その他の機能の利用度合い

>②データ群の指定・出力
分析するべき内容が定まると、その分析を行うデータを取得する段階に移ります。
データを取得する際に注意したのは、以下の3点となります。

1. データの期間
2. 分析用の処理の可能性
3. データを取得したユーザー群の特徴に偏りがないか

1. 期間に関しては、大規模な障害・新機能リリースなど、継続率に大きな影響を与える要素がなかった期間を指定しました。計測した指標に影響を与える事象がある場合には、その期間を含む前後でそれぞれデータを取得し、比較する必要があります。

2. 処理の可能性については、Googleフォームを用いたアンケート等、1つのデータソースからはすべてのデータが集められない時に重要になります。今回はSQLでデータを落としてきたため、シフトデータが入っているテーブル、アカウントデータが入っているテーブルごとのデータをまとめ、処理が可能な状態にしました。

3. ユーザー群の偏りについては、今回は最終的に特定期間の全サンプルを用いたため、考慮しませんでした。今後ユーザーさんへのアンケートや、定性的なインタビューなどを行う際には、ユーザーさんの年齢・性別・社会的状況などを踏まえて、分析を行う必要があります。

これらの考慮を経て、分析に必要なデータとして、以下を取得しました。

・指定期間内の全アカウント(ユーザーID)の、アカウント作成日時
・アカウント(ユーザーID)ごとの、一定期間内シフト登録数
・アカウント(ユーザーID)作成日より前/後の期間に対して登録されたシフト数
・アカウント(ユーザーID)ごとの、一番古い/一番最近、シフト登録を行なった日時

>③データの加工・解釈
分析できる形にするため、データの加工プロセスを挟みました。
今回は、ユーザーIDが共通して取得できる情報だったため、IDを用いてアンケートでいう「回答者」として括る処理を行いました。
分析内容については、割愛します。

【結果・解釈】
登録後28日以上利用を継続しているユーザーさんは、アカウント作成当日に平均20個のシフトを、当月・前月に対して登録していることがわかりました。
なお、これらの数値は、大学生が週平均2~3回シフトに入っているというところから、現実に即したシフト数であることも言えます。

この内容から、シフト登録数が5個以上であれば継続率が長いという解像度から、「継続期間が長いユーザーさんは登録初日に、簡単に把握できるシフト(前月・当月)はすべて入力している」(かもしれない)という段階に、解像度を一段引き上げることができました。

一方で、シフト登録をやめ、離脱しているユーザーさんについては、アカウント作成後のシフト登録数が平均10個であり、継続利用していただいているユーザーさんの約半分であることがわかりました。また、インストール後に一度もシフト登録を行わず離脱しているユーザーさんも、一定数いることがわかりました。

これらからは、以下の示唆が与えられます。

・シフト登録を行わないユーザーさんは、チュートリアル/CTAの不足か、または画面のUI面で使いにくさを感じ、離脱している(かもしれない)
・シフト登録を行うが、離脱するユーザーさんは、複数個のシフト登録を行う作業に手間を感じ、離脱している(かもしれない)
・継続していただいているユーザーさんは、前月/当月のすべてのシフト登録を行うことにより、CASTの給与計算の価値を最大限体感できる状態になっている(かもしれない)

>④アクションの作成・実装
示唆は、正答ではなく、あくまでもユーザーさんのデータから言える「仮説」となります。
これらの仮説を検証する方法は、機能開発を俟つことにはなりますが、定性的なインタビューで「実際の使い方」を伺い、より実証性を担保することも、視野には入ります。

最後に

ユーザーさんに会える場合でも、会いにくい場合でも、データを使ってラフにユーザーさんの像を削り出すことで、CSとして何から着手するかが、一定程度見えるようになります。

そこから更に、ユーザーさんがどう使いたいか・どうすればサクセスするかをテスト/ヒアリングしていくことで、より解像度高く、ユーザーさん一人一人にサクセスをもたらせる状態を作ることが、CSとしてのデータ活用の考え方なのではないでしょうか。

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