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【読書】沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 その4

出版情報

  • タイトル:沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史

  • 著者:仲村 覚

  • 出版社 ‏ : ‎ ハート出版 (2018/4/18)

  • 単行本 ‏ : ‎ 240ページ

本書から学ぶ、この一連の記事は下のような構成となっている。

沖縄を知ることは日本を知ること

 民族とは歴史と使命を共有した運命共同体だと著者はいうp11。沖縄はいかに日本なのか、本土に住む日本人にとっても、沖縄に住む日本人にとっても、スッと身のうちに入ってくるように本書では説明されている。

「琉球の言語も文化も民族も、ルーツは日本にある」p87。沖縄出身の著者がこう述べる言葉には重みがある神話の類似性、古いヤマト言葉、縄文のDNA。逆に日本の文化や言語、民族のルーツは沖縄にある、沖縄にこそ残されている、とは言えないだろうか?

 私たちは、もっと『自分のこと』を知るように、沖縄を知っていく必要があるのかも知れない…本書はそんなことを思わせてくれる。それが沖縄を、そして日本を守ることにつながっていく。本書は沖縄は日本なんだ!と改めて思わせてくれる一冊となっている。

 本記事では『住民を守るのは自治体の義務』と題して、その内容を見ていこう。

 例によって長くなったので目次を貼っておくので適宜参照されたい。


住民を守るのは自治体の義務

本書では「一章 沖縄の現実と真実」の中で、大項目 「国民保護の主体は自衛隊ではなく自治体」p30と題して、数ページを割いている。私はまったくこうしたことを知らなかった。良い機会なので本書に添いながら、少し調べてみたことを書いていこうと思う。

Jアラート

 恥ずかしながら、Jアラート(全国瞬時警報システム)が存在していることは知っていたが、自分のスマホで鳴るのかどうかすら知らなかった。普通にdocomo、KDDI、ソフトバンクなどを使っていれば、鳴るようになっているが、心配な方は、下記サイトを参考にチェックしてほしい。

 Jアラートとは総務省消防庁のサイトによると

全国瞬時警報システム(Jアラート)とは、弾道ミサイル情報緊急地震速報大津波警報など、対処に時間的余裕のない事態に関する情報を携帯電話等に配信される緊急速報メール市町村防災行政無線等により、国から住民まで瞬時に伝達するシステムです。

総務省消防庁HPより

そして

弾道ミサイル落下時の行動や避難施設の場所等については内閣官房国民保護ポータルサイトにて確認いただくことが出来ます。

総務省消防庁HPより

とのこと。

総務省消防庁HPより

 上図からも分かる通り、住民保護の第一義は国と地方自治体にある。避難誘導するのは、自衛隊ではなく、自治体だ。特に武力攻撃事態において、自衛隊は敵の排除に全力を尽くす必要がある。また自衛隊と地域住民が一緒に動いていては、住民が戦闘に巻き込まれてしまう。また戦闘は自衛隊にしかできないが、住民の避難誘導、保護は自治体職員でも代替が効くp32-p33。

これを目指して逃げよう:特殊標章

 誘導を担当する自治体職員は、ジュネーヴ条約で定められた標章をつけることが義務付けられているp33。

総務省消防庁HP 平成22年版 消防白書 (7)特殊標章

このマークは文民保護の担当者、車両、避難所などに掲示することになっている。軍隊にとっては攻撃してはならない識別マークであり、民間人にとっては、このマークを目指して逃げる=避難する必要があるp34。(文民と言う言葉は日本国憲法制定時に「軍人でない人」という意味のcivilianの訳語として作られた)。

国民保護法と国民保護計画

 「Jアラートの根拠となっているのは「国民保護法」という法律」だp31。国民保護法は平成16年(2004)に制定された。もう20年も経っている!正式名称は『武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律』である。想定している武力攻撃事態の類型は、

  • ゲリラや特殊部隊による攻撃

  • 弾道ミサイルによる攻撃

  • 着上陸侵攻

  • 航空攻撃

の4つだそうだp31。国と都道府県、市区町村はそれぞれ、警察などと連携して国民保護を行うのだが、大雑把にいうと国民保護の役割分担は次のとおりp31。

 最初に政府が警報の発令とともにに避難対象地域その避難先を決めて避難指示を発し…。
 次に、都道府県が国の避難指示を受けて対象自治体に伝達するとともに、避難経路とその輸送手段を決めて指定公共機関と調整し手配を行い…。
 都道府県から避難指示を受けた市町村は、その指示を実行できるように誘導計画を即座に作成し、誘導を行い…。

沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 p31-p32

著者によると、ほぼすべての自治体がすでに国民保護計画が作成済みであるという。では、わが街、横浜市の場合はどうだろう?

国民保護計画の例:横浜市の場合

 横浜市の場合は、横浜市トップページ暮らし・総合防災・救急・防犯防災・災害防災計画・条例計画横浜市国民保護計画 のなかに、
横浜市国民保護計画の150ページのpdfがあった。平成18年11月に作成し、令和4年4月まで3〜5年ごとに変更を繰り返している。中高年は紙媒体でないと読んだ気がしないし、頭に入ってこない。いや私がそういう習性なのだ。中高年と一般化するのはイケナイ。エコではないが仕方がない。いい機会なので、全文プリントアウトして読んでみた。
 一番のポイントはいかに「避難・退避するか」。横浜市は住宅街もビジネス街も、何より観光地も控えている。さらに工場地帯もある!日本の縮図のようだ。それぞれの場所での退避の方法があるはずなのだが、ホントにざっくりしたことしか、書いていない。「一時的な集合場所を設置する」。どういう地区どのぐらいの規模どういう集合場所を設置する必要があるのか。この計画には何も書いていない。たぶん市の担当者は「県からそういう情報が降りてこないのです」とでもいうのではないだろうか?そして県の担当者は?こうしたことは国が大方針を決めるもののような気がするのだが?それとも、消防庁HPの文言を字義通り解釈すれば、都度「弾道ミサイル落下時の行動や避難施設の場所等については内閣官房国民保護ポータルサイト」を参照してほしい、ということか?アクセスが集中して大混乱になるのではないだろうか?それから…下記に「帰宅を促す」とあるが、そもそも帰宅できるのだろうか?

ケース3:区域外に不特定多数の市民を避難(退避)させる必要がある事態
突発的な事態の発生を受け、市長が退避の指示、警戒区域の設定を行う。大規模集客施設やターミナルなどにおいては、通勤客や買い物客などの一時滞在者が多く、不特定多数の市民を警戒区域外に退避させ、帰宅を促す。場合によっては、一時的な集合場所を設置する

横浜市国民保護計画 p86
横浜市国民保護計画 p86

台湾は核シェルター設置率300%。対して日本は0.02%。これは自治体に丸投げするのではなく、国でインフラとして整備していく必要があるのではないか?そういう声を国民の側からも上げていく方が良いのでは?ちなみに衆議院HPで『コロナ』で検索すると1万4000件余りヒットするが、『核シェルター』では30件。十分な質疑がなされているとは到底思えない。

住民を守るのは自治体の義務

 著者はいう。「国土を戦場にする防衛思想を持っている日本では、戦争が起きた場合、敵を排除する自衛隊の指揮官国民を避難させる自治体の指揮官二人が存在し、役割分担をして国民の命を守ることになっている」p38。さらに

そうであるなら、沖縄戦で多くの民間人が亡くなったのは、国民保護(避難誘導・保護)の失敗であり、その責任は市町村長や県知事にあるわけです。つまり、左翼やマスコミがよく述べる「日本軍は県民を守らなかった」は嘘だということです。

沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 p36

続けて、

 例えば、慶良間けらま諸島では多くの自決者が出ましたが、それは小さな島で山岳地帯に逃げ込むしかなかった島民が、降伏することを拒んで自決してしまったわけです。…
 慶良間の集団自決から私たちが反省しなければならないのは、日本軍に責任を押し付けるのではなく、「当時の県や慶良間諸島の自治体は、なぜ、もっと早く島民を避難させることができなかったのか」という点であるべきです。

沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 p36

そして県知事役割は大きい制空権を失う前の避難指示輸送手段の確保「国民保護計画」に基づいた避難訓練…。

 避難の成功の可否を握るのは、政府の避難指示を出すタイミングです。…次に輸送手段を準備するのは県の役割です。準備できる航空機や船舶の数により往復回数が決まり、避難に要する日数が確定します。避難指示はその日数を計算した上で、制空権を失う前に出さなければならない…専守防衛を謳っている日本では「国民保護計画」の訓練の成熟度によって、どれだけ国民の命が助かるかが決まるということです。そして、その避難の指揮官は自衛隊ではなく、都道府県知事だということです。

沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 p37-p38

沖縄戦の経験を活かせ

 こうした国民保護が必要だった事態があった。沖縄戦であるp34。

米軍が上陸してきた沖縄戦において命がけで県民を避難させたのは日本軍ではなく県知事です。県知事の指揮のもと、県の職員や警察官が県民の避難、疎開推進の責務を担ったのです。軍隊と民間人を切り離さなければならないのは、今も昔も同じです。
 当初、大本営は県民の一部を県外に疎開させ、残りは戦場になる南部を避けて、北部の山岳地帯に避難させる計画でした。

沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 p34

しかし計画通りに行かず、多くの民間人が亡くなった。沖縄県民12万人(軍人・民間人含む)とともに、多くの他府県の人々(軍人約6.6万人といわれる)も

そのような厳しい環境の中で、一人でも多くの県民の命を守るためその職に殉じたのが、兵庫県出身の島田あきら知事と栃木県出身の新井退造県警本部長です。二人は軍人ではありませんが、沖縄の島守しまもりとして多くの県民から感謝されています。

沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 p35

今後、国内が戦場になった場合、市町村の職員が住民を避難誘導・保護する必要がある。場合によっては市民のために命をかける必要もあるだろう。そういう覚悟が職員や国民にも、求められる事態になりつつある。アウトソーシングで派遣職員ばかりで果たして職務が全うできるのだろうか?自らの命を自らで守る覚悟が国民にあるだろうか?

中共に侵略されつつある日本…

 これは調べるのも書くのも辛い。日々向き合っている方々には本当に頭が下がる。だが、このことに目を背けていては明るい未来を描いていくことは難しい。実態を知る必要がある。

ニセコの現状

 本書から離れるが、ニセコの現状を報告するYouTubeを視聴した。残念ながら今、それが探せない。その続きの一部と思われるものは見つけたので、ご興味のある方はご視聴ください(チャンネル桜北海道)。日本が某国に侵略された時に何が起きるか。ニセコの現状を見るにつけ、すでに侵略が始まっているといった方が良いのかもしれない。ただ、これを『侵略・浸透』と解釈するか、単に資本主義の一側面と見るかは、見る人によって変わるだろう。あり得る未来の一つとして見てみることは意義があるように思われる。有効な手立てを国レベルで打ったオーストラリア、打てていない日本
 沖縄から遠く離れた北海道で起きていることではあるが、これが沖縄の離島で起きてもおかしくない。あるいは日本中どの市町村であっても。だから考えるための一助になれば、と思い、書いてみることにする。
 観光客も働く人もホテルなど施設のオーナーも外国人。日本人は裏方のベットメイキングなど下働きのみ。日本語の通じない街(こちらはYouTubeチャンネルテシ)。税金などはきちんと徴収できているのだろうか?それとも、資本注入だけでなく利益も外国に還元され、地元はただただ、なけなしのお金、国からの交付金をインフラ整備に費やすだけとなるのか。いったん富裕層の外国人に土地の爆買いをされると、今の法律のままでは、次に土地や家屋を購入するにしても、賃借するにも値段が上がりすぎて、日本人には手が出ない。また固定資産税が高くなりすぎて相続などを機に手放さざるを得なくなる。空き家は値上がり益を期待して空き家のまま放置される。どんどん日本人が流出し、外国人が流入する。京都などでも同じような状況が起こっているようだ。こういうことが日本中で起きるとしたら?あり得る未来として、手を打つ必要があるのではないだろうか?

サラミスライス戦法

 中共の軍事専門家の書いた『超限戦』という有名な書籍がある。もともと1999年出版ということなのでもう25年も前に書かれた本だ。内容は、

「超限戦(ちょうげんせん)」は執筆者の造語である。 言葉のごとく意味は「(従来の境界線と)限度を超えた戦争」である。 あらゆるものが戦争の手段となり、またあらゆる場所が戦場となりうる。 とりわけ、「非軍事の戦争行動」は超限戦のコンセプトを形成する重要な要素の一つである。

株式会社日立総合計画研究所HPより 書評 「超限戦

この言葉を拠り所にすると、ニセコの実態がまさに超限戦の一環に見えてこないだろうか?合法的に日本に少しずつ浸透・侵略しつつある…。
 サラミソーセージは薄く切って供される。そんなふうにこちら=相手に悟られないように、少しずつ…。日本の北と南から…。

 本書『沖縄はいつから日本なのか』の著者 仲村は、尖閣諸島の『天気予報』という切り口でも実効支配の形式を着々と整えつつある、という。こういう方法が超限戦であり、サラミスライス方式だ。そしてこのことに危機感を抱いているのは、本当に少数派なのである。

中国政府が進める沖縄侵略の手段は、遠謀深慮で多角的な実効支配の既成事実作りです。中国気象局は2012(平成24)年9月11日から、尖閣諸島の天気予報を行なっています。…一方、日本の気象庁は、国会議員のたび重なる要求にもかかわらず、尖閣諸島と大きく隔たった石垣地方に含めて天気予報を発表しており、いまだに尖閣諸島のみを対象とした天気予報は行なっていません外国から見たら、気象行政では尖閣諸島を実効支配しているのは中国だということになってしまいます。…ネットで中国の天気予報を見ると、尖閣諸島は福建省の一部として報道しています。これまで、台湾の宜蘭県の一部と主張していましたが、天気予報開始をきっかけに福建省に変更されています。この瞬間から、中国政府は戦略を大きく転換し、台湾統一より尖閣・沖縄の侵略を優先する方針を固めたと考えざるを得ません

沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史 p200-p201

もちろん、この一点で「中国政府は戦略を大きく転換し、台湾統一より尖閣・沖縄の侵略を優先する方針を固めたと考えざるを」得ないかどうか、私には判断は、つかない。ただ、長年中国と沖縄の関係をウオッチし続けた著者から見ると、そのように見える、ということだ。「国会議員のたび重なる要求にもかかわらず…いまだに尖閣諸島のみを対象とした天気予報は行なって」いないということも気にかかる。いったい日本政府は沖縄や日本国民、日本の領土を守る気があるのか、ないのか。
 著者は他にも「日本政府は宮古海峡という要所を、中国が幹線道路化するのを黙認している」と報告している。本書には書かれていないが、昨夏には「沖縄県・尖閣諸島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)内に中国が「海上ブイ」を勝手に設置した」ことが問題になり、即時撤去したフィリピンとの対応の差が明確になったばかりだ。

いずれにしても日本国民として、沖縄の動向には今後も大きな関心を持っていきたい。

本書には他にも、沖縄復帰時のこと、それにいかに蒋介石や毛沢東が介入しようとしたか、逆に沖縄の人々はいかに一途に本土復帰を願ったか、現在も商業的な結びつきで、沖縄に浸透しつつある中共、などの様子がよくわかるように描かれている。もちろん、沖縄の歴史もたっぷり描かれている沖縄を通して日本を知りたい人、沖縄がいかに日本か学びたい人にうってつけの一冊である。



引用内、引用外に関わらず、太字、並字の区別は、本稿作者がつけました。
文中数字については、引用内、引用外に関わらず、漢数字、ローマ数字は、その時々で読みやすいと判断した方を本稿作者の判断で使用しています。


おまけ:さらに見識を広げたり知識を深めたい方のために

ちょっと検索して気持ちに引っかかったものを載せてみます。
私もまだ読んでいない本もありますが、もしお役に立つようであればご参考までに。

著者 仲村覚の本


著者 仲村覚の主催する一般社団法人 日本沖縄政策研究フォーラム


著者 仲村覚 出演のYouTube番組


外務省HP ジュネーヴ諸条約及び追加議定書の主な内容

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/naiyo.html

オーストラリアの対中戦略

北海道の現状

下記はオックスフォードで学んだ日本大好きイタリア人





先々週の分なのであるが、noteからお祝いをいただいていた。ご紹介できていなかったので、ここでご紹介させてください。そして、よかったら読んでみてくださいね。


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