極寒の大西洋で、美しいザトウクジラに出会う【アイスランド旅】
こんにちは。
ドイツ・ミュンヘンで留学生活を送る大学生、桜です。
アイスランドに旅に来て今日で4日目。
最終日の今日は、一番楽しみにしていたホエールウォッチングへのリベンジ。
昨日までの奇跡みたいな体験も記事にしました↓
本日のレイキャビクは、美しい凪
おはようございます。
世界最北の首都レイキャビクの朝9時。
到着した日の荒れた天気からは想像もできないほど青い空です。
空が青い日は海も青い。
今日はビックリするほどの凪で、クジラに会うにはぴったりのコンディション。
波がない日の海が、防波堤を優しく撫でる音が好きです。
お昼からの予定までまだ時間があるので、晴天の下のレイキャビクをゆっくり歩いて過ごします。
海辺にあったこのオブジェ、クジラの骨か何かかと思いぎょっとしたのですが、かつてのヴァイキングの船を模したものらしく…
遠い昔ヴァイキングが入植して現地のアイルランド由来の人々と定住を始めたころから、いわばヴァイキングの国だったアイスランド。
デンマークやノルウェーの統治下におかれたのち1944年にアイスランドとして独立を果たしますが(前回の記事参照)、閉ざされた国であったアイスランドにもヨーロッパ各国からの移民が増え、どんどん多様化しているのだとか。
古くからそこに住むヴァイキングの子孫、赤い髪・青い瞳の“アイスランド人”が他国とどんどんミックスされているのだと知り、
民族のアイデンティティと国家の存続という相反する問題へのただならぬ「他人ごとではない感」。
レイキャビクの町はカラフルな建物が多くて、地図が無くても建物を目印に歩けてとても便利。笑
北側を向けばすぐ海が見える、とても素敵な街でした。
カラフルなレイキャビクを一望
やってきたのは、レイキャビクのランドマーク・ハットルグリムス教会。
街のどこからでも見ることのできる、コンクリート製のこの教会は、1986年完成の比較的新しいもの。
実はここ、上部にある展望台まで上ることができ、せっかく綺麗に晴れた今日なのでカラフルな街を見下ろしてみようと6ユーロほどをお支払い。
エスカレーターで展望台部分に到着。
眼下には圧巻の景色。
雪国は、雪の白さに負けない色とりどりの建物で溢れているのが特徴。
レイキャビクも例に漏れず、屋根と胴体部分で色が違う可愛い家が立ち並ぶ、見ていて飽きることのない街並み。
手前には大きな教会の影。
奥には雪が残る連山。
最高の景色を極寒の頂上で堪能しました。
小腹満たしに、アイスランドに来て何度目か分からないソウルフード・ホットドッグ。
味が日本人の口に合うのもそうですが、正直売ってるもの全部が高くて比較的リーズナブル(1つ800円ほど)なホットドッグしか選択肢に残らないという現実。
この国、こんなに物価が高くて国民の生活は大丈夫なのか?と思いきや、アイスランドの平均給与はなんとアメリカに次ぐ世界二位だそうで。
また大学までの教育がすべて無償、正規非正規のくくりがなく働き方が柔軟、などの理由でアイスランド国民の幸福度は世界的にも高いそう。
日本の大学も国公立くらいは全額無償にならないかなーとぼんやり。
ここはレイキャビクの観光地らしい、レインボーストリート。
国旗の青がなじむくらい澄んだ青空。
青い海へ、いざ
さて、今日の本命・ホエールウォッチングへ!
実は一昨日同じツアーに参加したものの、ひょうが降り高い波が船を揺らす荒れまくった海で、クジラになんて出会えるはずもなく…
ご親切に同じツアーへの無料参加権が貰えたので、快晴の今日、リベンジを果たしにやってきました。
日差しは暖かいものの、空気はしっかり2月の寒さ。
しかも海上となれば、風で体温が奪われて本当に極寒です。
二日前は全く見えなかった青空に、あの日会えなかったクジラにもしかしたら今日は会えるかも…と淡い期待を膨らませます。
すると、出航して30分もたたない頃。
前方の別の観覧船が姿を捉えたとの情報から、私たちの船も向かった先には・・・
船の真横をよぎる黒い影。
水面に控えめに姿を見せた小さな背びれ。
「Humpback whale!」と船内に響くアナウンス。
その名の通り背中が大きく曲がった、ザトウクジラとの出会いでした。
先日の記事にも書いた通り、私は21歳の誕生日にドイツ語版の分厚い鯨類図鑑を貰うほどの鯨類好き。
もともとシャチ好きの私、
国内のシャチに会える水族館は制覇したし、鯨の美しさに魅せられて、去年大学を一週間休んで北海道・羅臼町へとシャチに会いに出かけたことも。
そこで実際に出会ったのはシャチではなくナガスクジラでしたが、それを機にシャチから鯨類へとあこがれの対象が広がり、はるばるアイスランドの地まで鯨に会いに来たのです。
アイスランドの山々と、悠々と泳ぐナガスクジラ。
“歌うクジラ”としても知られるザトウクジラの最大の特徴は長い胸ビレ。
それを見せてくれることはありませんでしたが、時たま潮を吹く姿がとても神々しく、奥に見えるレイキャビクの街並みがより一層美しく見えました。
通常集団で行動するザトウクジラ。
私たちが出会ったのもおそらく一つのグループで、大小の個体が仲良く並んで優雅に泳いでいる姿を垣間見ることができました。
保護活動によって一時期よりは全体の個体数も回復しつつあるザトウクジラですが、人間の活動や温暖化によって生息域が制限され、彼らが自由に海で生きるのに私たちは寄り添うことさえできないのかなと思ったり。
昨今の捕鯨問題についても、いつも犠牲になるのはシーシェパードでもほかの保護団体でもなく、クジラたち本人なんですよね。。。
捕鯨についてここで論じるのは避けますが、私の考えはお察しください…
それはそうと、この記事のクジラの写真はすべて友人のいいカメラで撮ってもらったものなのですが、なんと鼻まで撮ることができました。
別の船をバックに綺麗に上がるブローも。
この時の、辺りに響きわたる分厚い呼吸音が堪らなく大好きです。
ザトウクジラと言えば、のブリーチング(海面に体を打ち付けるようにジャンプするやつ)は見ることができませんでしたが、最後に綺麗な白色のしっぽの裏を見せてくれました。
ちなみにその「いいカメラ」で、クジラを撮るのに必死な私の姿も撮ってくれていました(笑)
ここからは余談ですが、
このアイスランドの海、私の大好きなシャチの映画「フリー・ウィリー」で主人公のウィリーを演じた雄のシャチ・ケイコの生まれ故郷。
幼い頃にこの海で捕らえらて売られ、水族館を転々としたケイコは、
この映画出演をきっかけに”野生へ返してあげよう”という人間のエゴの犠牲になり、
芸をして餌をもらうことしか知らないケイコは再びアイスランドの海に放たれ、最終的には群れ最終的には群れに馴染めることなく肺炎で死去します。
ホエールウォッチングに訪れた観光客に一人ぼっちで芸を披露し続ける姿が最後まで目撃されていたのだそう。
そんなケイコの生まれ故郷に来られたという意味でも、今回のアイスランド滞在は私にとって大きな意味を持つものでした。
またね、アイスランド
美しいザトウクジラたちに出会えて、まだ心がじんわりと暖かい夕方。
陽が落ち始め、空気は夜の冷たさへと移り変わっていく時間。
今日初めてのまともなご飯を食べに、トルコ料理屋さんに来ました。
明日の早朝の飛行機でドイツへ帰るのですが、実は今夜はホテルを取っておらず空港泊。
この大きな教会を見るのも今回は最後です。
路線バスで、行きよりも安く空港へ。
寒すぎて防寒に見た目なんて気にしていられない。
空港には面白いディスプレイがありました。
今回訪れた北の果ての島国・アイスランドは、
350000頭のクジラがいて、
ガイザーの語源となった間欠泉を持ち、
一年中ベストシーズンとして楽しめる場所。
アイスランド旅・総括
夜空に揺らめく光のカーテンに目を輝かせ、目前に広がる“生きた地球”に心を奪われ、海に息づく美しい生命に癒される。
それらでさえ、アイスランドという島国の魅力のほんの一部でしかない。
これまで約20か国を旅してさまざまな感動や衝撃を体験しましたが、どこに行っても「来られてよかった!」と満足して帰ることばかりでした。
でもアイスランドはそうでなくて、
「必ずもう一度来なければ」
なんなら
「いつかここに“帰って”来よう」
そんな風に、初めて思えた国でした。
これから留学生活が終わったら、自分の人生を決めなければならない。
もしかしたら、というかたぶん、こんなに自由に旅できる時間はこれから持てないかもしれない。
何をして生きていこう、何のために生きていこう。
ずっとそんな悩みが尽きず時間だけが速く過ぎていったこの冬でしたが、
もし人生何かあったら、とりあえずここにこよう。ここに帰ってこよう。
私はきっとここで死ねるし、ここにもう一度来るまでは死ねない。
そう固く決心することで、一歩前に進めた気がします。
今まで、死を意識して生きるのと生を意識して生きるのは全く違うものだと思っていました。
でも今回、「私ここで死ねる」と感じた時に強烈に生を感じる体験をして、
思えばそれが18歳くらいから何度かあった気がして。
富士山に登ったときも、智頭急行や釧網本線に乗ったときも、羅臼で知床の自然を感じたときも。
思えば全部、旅してるときなんですよね。
これがまだ続くなら、当分は死ねないなと思ったんです。
そして「私ここで死ねる」を探し当てることこそが、私にとっての“旅”かもしれないと思ったんです。
私のエネルギー源になるであろう今回のアイスランド旅、これにて終了です。
アイスランド、来られて本当によかった。
ミュンヘンに帰るや否や、高熱にうなされたことも含めて素敵な思い出です。笑
それではまた!
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