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「そのピッチに僕は立ちたい」3年 久住海斗

「そのピッチに僕は立ちたい」
3年 商学部 久住海斗


夏。
蝉がけたたましく鳴き、太陽は神々しく輝く。
視界が少しぼやけていた中、僕は自分より体格の良い先輩と競り合う。
ドンッ
少し鈍い音が聞こえた。
途端、身体が宙に浮き、その後ゆっくり沈む。
ぼやけていた視界は雲ひとつない青空をはっきりと捉えた。
バンッ
そして音と共に目の前が暗くなった。

そして、僕のサッカー選手としての記憶はここで止まっている。

幼少期から病弱だった。
毎年骨折はするし、流行病には誰よりも早く罹っていた。おまけにこの頃から持病が発覚。爆弾を抱えながら生活することになった。

週に1.2回リハビリに行き、身体を治すこと4年。身体は人並みに運動できるように戻った。それでも運動部に入るには体力不足だった。
サッカーはしたかった。でももう選手として90分走り切るのは出来ないことも自分の中で理解していた。それでもサッカーに関われないか。考えた末、広報としてサッカー部の門を叩いた。

3年目。
何もわからず右往左往の1年。少しずつ仕事を理解し身体を慣れさせ、自分の色を出そうとした2年。そして3年が勝負だと自分の中で考えていた。
チームに何ができるのか、広報として貢献できるか、奇しくも観客動員も全ホーム試合は出来るようになったため、少し燃えている自分がいた。

刹那。
身体は限界に近かった。薬を飲んで誤魔化してたがそれも難しくなった。
色々悩むことも多かったが一番は何も出来ない自分が嫌いだった。
それでも6月。
初勝利を上げた時。筑波を破り全国を決めた時。
自分の覗いているファインダーにたくさんの笑顔と、興奮が映っている時。
何にでも味わえないようなワクワク感。
痺れる感情。ほんの少しの感動。
広報としてたくさんの写真を撮り、もしかしたらその写真を通じて誰かの感情を揺さぶることができたなら、とても嬉しい。

夏。
視界がぼやける中、ピッチの中ではなく端で、競り合うのではなくカメラを向ける。ファインダーを覗き、ゴールを決めた瞬間。
逆転勝利で試合が終わった瞬間。
感情が爆発し、感情が身体を追い越して、僕は試合後のピッチを走っていた。
初めて限界を突破したように感じた。

プレーは人を興奮させる。
ゴールは人を熱狂させる。
サッカーは人の感情を揺さぶる。
僕はそれをたくさんの人に伝えたい。

9月末
ようやく走れるようになった。
少しずつ、また人並みに戻れるように。
また、チームに貢献できるように。
だってもう一度、そのピッチに僕は立ちたいから。

◇久住海斗(ひさずみかいと)◇
学年:3年
役職:広報
前所属:名古屋市立名東高校

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