一対の眼球のためにあてがわれた酷く広大なディスプレイ、エミリア。
一章 はやい話、私のオーディオプレイヤーは壊れかけている。音楽をかけようとすると―それどころかかけようとせずとも―勝手に流れはじめ、そして止まり、またイントロへと戻ってやり直し、加速し、途端に別の曲へと移ってしまい、止まり、また元の曲のイントロに戻り、加速し、止まる。私が狂いかけていることにも実のところ気付いていた。田園都市線、各駅停車、押上行き。リュックには、何気なく手に取ったウェルベックの『闘争領域の拡大』を詰めていて、手持ち無沙汰だからパラパラとページを捲る……。外はず