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スローフード運動はトリノで生まれた~Born in Torino③~

手早く食事を済ませるファーストフードに異議を唱える形で、食の国イタリアから始まったらスローフード運動。じつは、この運動はピエモンテ州の小さな町で生まれたのを、あなたはご存じでしたか?
(ブラ市はトリノから日帰りできる距離なのでBorn in Torinoシリーズに入れさせていただきました。)

イタリアの小さな町のイメージ

スローフードって何?

スローフードは日本でも一時期流行りましたので、あなたも聞いたことがあるかもしれません。でもいったいどんな活動なのか、よくご存じないのではないでしょうか?
アンチファーストフード運動から始まり今では大きな国際運動にまで発展したスローフード。
今回は、スローフードがどのように始まったのか、そして今現在どのような活動をしているのかをご紹介します。

スローフードの始まり

私がスローフード運動の存在を知ったきっかけは、ローマのスペイン階段にオープンするマクドナルドへの反対運動でした。でも、調べてみるとそれは1986年の出来事。当時のことを覚えているはずもなく、なんでだろうと思いましたが、スローフードジャパン(スローフード日本の前身)が2004年に活動を開始したことから、その時に一気に日本に広まったのかもしれません。

スローフードの前身Arcigola(アルチゴーラ)とは?

スローフードイタリアの公式ホームページを見てみると、「スローフードはArcigolaで生まれ、1986年Carlo Petrini氏によってピエモンテ州で設立されました」とあります。
実は、「スローフード運動はトリノで始まった」とトリネーゼ達から聞いていたので、あれ?トリノとは書いてないぞと思い、ネットで「Slow Food Torino」と検索してみましたが出てきません。
なんだスローフード運動はTorinoではなくArcigolaという町で始まったんだ思い今度はGoogle Mapで「Arcigola」と検索してみますが、それらしい町は出てきません。辞書にも載っていませんし、夫に聞いてもそんな町は聞いたことがないといいます。
これは迷宮入りかとおもわれました。

そして、何とか検索を繰り返した後、たどり着いたウェブサイトで謎が解け始めました!

Gastro de lirio ~Fisiologia del gastro~の記事

こちらの記事によると、「1986年にArcigola(アルチゴラ)がイタリアのBra(ブラ)市で設立。1989年にスローフードのマニフェスト誕生」とあることから、Arcigolaは街の名前ではなくスローフード協会の前身であることがわかりました。

では、スローフードの前身となるArcigolaとは何でしょうか?
調べてみると、ArciとはAssociazione ricreativa e culturale italianaの頭文字をとったもので「イタリア余暇・文化協会」なのだそうです。同じ趣味や楽しみを持った人たちが集まって作る団体で、食、音楽や演劇、慈善活動などが多いようです。golaとはイタリア語で「喉」、「食い意地」という意味がありますのでArcigolaとは食に興味のある人たちの集まりであったことが想像できますね^^

Carlo Petrini氏によりピエモンテ州のブラ市で設立

創設者Carlo Petrini氏は、1949年ピエモンテ州クネオ県ブラ市生まれ。ブラ市のウィキペディアには「スローフード運動発祥の地であり、イタリア・スローフード協会およびスローフード・インターナショナルの本部、食科学大学が置かれている。」とありました。

スローフード運動はトリノではなくトリノから南東へ50㎞のブラ市が発祥でした!

ブラ市はピエモンテ州にあり、スローフードの二大イベントSalone del Gusto(サローネ デル グスト)とTerra Madre(テッラ マドレ)のがトリノで開催されていることから、当ブログではBorn in Torinoシリーズに加えさせていただきました。

イタリアスローフード協会の現在の活動

協会が掲げる三つの柱

イタリアのスローフード協会のオフィシャルサイトによると、以下の三つの柱を掲げています。

生物多様性の擁護
食物、多様な文化、伝統的な知恵、農村地域の利益のための共同体意識の役割を守り、地球を救う運動。
教育
幼稚園から大学、老若男女を対象に食にまつわるすべてについて学ぶ機会の提供。
アドボカシー
世界中の人々が「Good」「Clean」「Fair」な食べ物を手に入れられるように行動を起こす事。

協会の活動とテーマ別ネットワーク

slowfood.itの公式ホームページによると協会の活動とテーマ別ネットワークとして、①栗生産者のスローフードネットワーク、②スローフード旅行、③スローグレイン、④スロービーンズ、⑤スローフードヨーロッパ、⑥食と健康、⑦遅い蜂、⑧移住者ネットワーク、⑨スローオリーブ、⑩スローミートの10つの活動があげられていました。どれも意義のある興味深いものばかりですが、こちらのブログでは②スローフード旅行についてご紹介します。

スローフード旅行

スローフード旅行では、農家さんチーズやワインなど生産者さんと接し、その土地の文化や伝統を体験できる旅行です。イタリアにはアグリツーリズモというアグリカルチャー(農業)とツーリズム(観光)を合わせた造語がありますが、それと似ているように思えます。日本風に言うと「食育観光」とでもいうのでしょうか。
まだ、ポピュラーはないようですが個人的にはとても興味がありますのでぜひとも行ってみたいです♪

▻トリノから行けるスローフードの旅

ビエッラ山脈(Biella Mountains)
ビエッラ山脈はトリノから北東へ82㎞、車で1時間で到着します。山の谷間に美食の伝統を受け継ぐ村々があり、この地域で最も有名なのはエルボ渓谷上流の生乳バターです。このバターの製法は独特でアルプスの湧き水で冷やされた生乳の上部に浮いたものなのです。こういう製造方法もあるんですね!
また、バター製造後に残った牛乳で作られたトマ(Tuma)チーズはピエモンテを代表するチーズの一つです。
因みにトマ(Tuma)とはピエモンテ語でチーズという意味です。

タナロ渓谷上流(Upper Tanaro Valley)
ピエモンテ州の南側、リグーリア州との県境にありトリノから南東へ54㎞、車で1時間で到着します。変化にとんだ領域で谷底の緩やかな丘陵のラインから、リグーリアアルプス上部の険しい斜面の山岳地帯まで続いていて、ハイカーや登山家、マウンテンバイクなどで人気があります。手つかずの自然が残っていて千年のルーツを持つ古代の伝統が引き継がれています。また、広な地下の洞窟はドロマイトのような外観が特徴で世界中の洞窟探検家を魅了しています。オット ファイル コーンを使用したビスケットやジャガイモとソバで作られたポレンタ サラセナ(ポレンタとは通常トウモロコシの粉でできています)、夏に生産されるオルメアチーズが有名です。

slowfood.itに掲載されている旅行先一覧

slowfood.comに掲載されている旅行先一覧


スローフード旅行のイメージが湧きずらいよというあなたにプロモーション動画がありましたので、シェアさせていただきます^^
イタリア的な編集がまた興味を引きます。


イタリアのスローフード協会主催のイベント

トリノで開催されるイベント

Terra Madore Day(母なる大地の日)
1989年12月10日にパリのオペラコミック座でスローフードの国際運動マニフェストが署名されたことをお祝いする日です。トリノだけではなくイタリア全土で行われます。
昨年は12月10日から11日まで「王様の市場」がヴェナリア宮殿で行われました。

▻Terra Madre Salone del Gusto(テッラ マドレ サローネ デル グスト)
2年ごとに行われる食品に特化した最大の国際イベント。2022年9月22日から26日までトリノのParco Dora(ドーラ公園)で開催されました。

Cheese - Le forme del Late(チーズ・ミルクの形)
チーズ生産者が一堂に会する国際見本市。
2023年9月15日から18日にブラ市で開催予定です。


その他の都市で開催されるイベント

Slow wine fair(スローワインフェア)
ワイン生産者、醸造家、ワイン愛好家、ワイン商、流通業者、レストラン経営者などがボローニャに集まり、ワインの世界に革命をもたらす一大イベント。2023年は750のワイナリーが出展、1万人以上が来場しました。

Slow Fish(スローフィッシュ)
漁業と水生生態系の保護に特化した国際見本市。
2023年6月1日から4日までジェノバのPorto Anticoで開催予定です。


まとめ

いかがでしたか?
トリノをはじめイタリアでは全土で食と食を取り巻く全ての物を見直す運動が盛んなんですね。さすが食の国イタリア!
あなたは、どれが気になりましたか?
今回はイタリアのスローフード協会の概要を中心にご紹介しましたが、次回はイベントの様子やスローフード旅行についてご紹介できればいいなと思っています^^

改めて「食=命」。スローフード運動の奥深さと運動の意義の大切さに気付かされました。私たちの周りには農薬で汚染された食品や食品添加物まみれの食品だらけですから。。。

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