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恩師、中西教授のご退官に寄せて。

私の学部時代の恩師、ご退官の言葉に期せずして涙。

「みなさんには、様々な社会的条件から、能力を発揮できずにいる人々がいることを常に理解しようと心がけてほしい。そして、他者の境遇を理解しようとする想像力の発揮を忘れないでほしい。社会を支える責任ある立場の人々の責務だと思うからだ。妄言多謝。」

先生を知っている人々ならば、クスクス笑いながら読めそうな文章だが、もしかしたら他の人が読んでも、随分と戦ってきた人だなくらいにしか思わない文章かもしれないので補足したいが、中西先生はとにかく穏やかで、いつもニコニコしていて腰が低くて、その割にしれっととんでもないことをやってきていて、寝る時間がないほど仕事が多くて、身の危険も感じることも多かったでしょうに、「昔はXXでしたけどね、今は丸くなりましたね」というけれど、それでもやっぱり良い人で、フィリピンをフィールドに開発経済を極めてきた先生だった。

ずっとフィリピンの最貧困層、スラム地区に半分住みながら長年フィールドワークをしてきた、その先生が言うから、言葉に重みがある。

「みなさんには、様々な社会的条件から、能力を発揮できずにいる人々がいることを常に理解しようと心がけてほしい。そして、他者の境遇を理解しようとする想像力の発揮を忘れないでほしい。社会を支える責任ある立場の人々の責務だと思うからだ。妄言多謝。」

私は、その先生のもとで、大学1,2年次の経済、3,4年次の開発経済の授業、2週間のフィリピン研修と、大変お世話になり、その後、社会人からのボローニャ大学への留学、修士取得後の博士課程への進学の際にも、推薦状を何度も書いて頂きました。

こうして、1つ1つ先生のお力添えがあって道が拓けて、今ここに私がいると思い、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

途上国を見る視点、彼らの生に寄り添い、ともすれば見逃されてしまう’弱者’の課題に向き合うこと、先生から教えてもらった宝物です。

私はその後、「食」の研究の道に進みましたが、現在ボローニャ大学博士課程で、文献に残らない「庶民の料理」のダイナミズムと、彼らが紡いできた料理の文化価値を研究しているのは、どこかできっと先生の’弱者の視点’から影響を受けているに違いありません。

将来は、舞い戻ったアカデミアのフィールドから、そしてアカデミアにとどまらず、数値の経済にとどまらず、本当の意味での社会の豊かさを広げていきたいなと思っています。

またいつか先生とお話しできる日を楽しみにしています。それまでどうかお元気になさっていてください。イタリアにもぜひ遊びに来てくださいね!

桜が満開のボローニャより、心を込めて。

中小路葵


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