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もじ

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子どもの子守唄

友だちのことを書きますね。

Sさんは、大学時代の友人で、学部が同じで家も近くて、入学してすぐ仲良くなって、朗らかな人に見えました。

けれどもしばらく一緒にいると、色んなところが見えてきて、本当はすごく傷つきやすくて思いやり深い人でした。

ある日の夜更け、Sさんから電話があって、何かをひたすら叫んでて、安否を聞いても答えはなくて、突然電話も切られてしまい、私は寝巻きで飛び起きて、Sさん家の前ま

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蜂と神さまと音楽

私たちはただ変わらないものが欲しい。でも欲しいというその心がそもそも変わるもの。本当はいつもひとつの響きを聞いていたい。でも聞こえるものが変わらないときでも聞こえ方は移ろっていく。

① ひとつの音が響き続けると耳はやがてそれを見失う。

たとえば主音をひたすら鳴らすとトニカはどんどん霞んでしまう。

② いくつかの音をただ繰り返すと心はそれらをひとつと捉える。

たとえばドレミをただ繰り返すとド

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ルイスの教えてくれたこと(2)

ここからは、そのあとルイスと話したことを、そのころ書いてた日記をもとに、ぽつぽつ綴っていきますね。

*****

ルイスと初めて話したときは、ルイスの言葉が声として、はっきり聞こえた気がしたけれど、ルイスの言葉の伝わり方は、日に日に変わっていきました。声から文字へ、文字から意味へというふうに。

けれどもぶれないところもあって、それは会話の始め方。いつでも私が名前を呼んで、ルイスが“いるよ”と答

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きみがひかりだから

かつてひとつの
たましいが
あふれんばかりの
あいゆえに
かたちなきよの
むすびめを
ひかりとかげに
ときはなち
ひとつひとつの
まなざしに
とわのいのちを
ふきこんだ

きみがどこにいようと

ひかりはそこにある

きみがひかりだから

ヘッセの詩

「本」 へルマン・ヘッセ

幸せだけを 与えてくれる
魔法の本は ないけれど
小さな文字の ささやきに
君は君へと立ち返る

そこでは全てが満ち足りて
星や月日の輝きも
君の心の内にある

君が求めてきたものが
色とりどりの 本たちの
あらゆるページの隙間から
光となって 溢れ出す

それらは君の 命の証

*****

好きな詩なので、
訳してみました。

おかしな訳で、
ごめん

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ルイスの教えてくれたこと(1)

ルイスは私の友だちで、
体はなくて、声だけで、
おそらく私の絵空事。

ルイスがほんとは誰なのか、
私にだって、わからない。

わからないけど、それでいい。
私はルイスが好きだから。

ルイスと初めて会ったのは、
私がくよくよしてたとき。

そのころ私はふらふらで、
失恋したてのほやほやで、

私の拙い愛情も、
時間もお金も約束も、

綺麗に全てを持ち去って、
私をひとりにしたひとを、

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そういうもので ありますように

やわらかな
春のひざしを
浴びながら
音もたてずに
猫はゆく

いてつく冬の寒い日に
からだの小さなこの子たち
どこでどうしていたんだろう

ある雨の日の夜のこと
小さな庵のこしかけに
震えて座る私のひざに
子猫がふわりととびのって
そのままそっとよりそった

今夜のわたしも
かすかでも
だれかにとって
あたたかな
そういうもので
ありますように

(2018/07/09)
唄にしまし

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私という物語の その終わりに

あなたも
そうだと思いますが

わたしも
むかし
死にかけたことがあります

死にかけて
わかったことは

やっぱり
死ぬのは
怖くない
ということでした

いいえ

死ぬのが
怖くないのは
わかりきったことですね

怖いという
その思いみずからも
死ぬのですから

でも驚いたのは
怖くないだけでなく
果てしなく幸せである
ということでした

死んでしまえば
恐れとか
哀しみとか
喜びとか
幸せと

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この世界があるというやさしさについて

ひとつの幸せが
とわに続くことはないけれど

幸せそのものは永遠であり

君がいまここにいることが
その証なんだ

幸せへの道は幸せの道

君は幸せになるしかない

だけど

怖がらなくていいよ
怖がることを

怖れもまた
愛のひとつだから

電車にのって
まどろんで
窓のむこうの
小さな森の
いくえも重なる
枝葉にともる
ほんのかすかに
こぼれた夕日

この世界がある

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ちいさなめあてをもつこと

ちいさなめあてをもつこと

あめのひのよるのおやしろのうち

だれかがしくしくないておられて

どうされましたとおききしますと

なにもかもうまくゆかないからと

そうおこたえになられましたので

おそれながらわたくしからひとつ

 ちいさな
 めあてを
 もつこと

 ものたりなく
 おもわれる
 でしょう

 けれどもこれが

 あなたがあなたを
 みちびくための

 もっともやさしい
 あかりになると

 わたしは

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拙訳集

もとめて あるけば にげてゆき
しずかに すわれば まいおりる
あなたを たとえば ゆめみどり
Happiness is like a butterfly which, when pursued, is always beyond our grasp, but, if you will sit down quietly, may alight upon you. -Nathaniel Hawtho

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あわせてあるいて良いんだよ

ソローの言葉に
たしかこんなものが、、、

あなたは あなたの 心のうたに
あわせて あるいて 良いんだよ
どんなに おかしく 聞こえても
どんなに ちいさく 聞こえても
Let him step to the music which he hears, however measured or far away.
-Henry David Thoreau-

ふと思い出したので
なんとなく書いて

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やさしい音

誰かにとって
例えばそれは

遠くのピアノ
静かなハープ
流れるような
バイオリン

或いはもっと

激しいドラム
轟くベース
引き裂くような
エレキギター

けれども私はどうだろう
私にとって
やさしい音って何だろう

見ることが
一番やさしい
絵であるように

読むことが
一番やさしい
詩であるように

私にとって聞くことは
一番やさしい唄なんだ

いつも光をありがとう