いらない

 もしも今あの扉からあいつが現れて
君の手をとって 君の目をまっすぐ見つめて
もう1度やり直そうと真剣な態度で君に迫っても

 君はすぐその手を振り払って 
あいつの前で僕の手を強く握ってくれるのかな
「あなたはもう過去の人」と
迷わず言ってくれるのかな

 怪我の直後は誰だって 
どんなに強がりが上手い人だって
痛いものさ 温もりを求めたくなるものさ

だから君も僕のところに来たんだろう
分かってるよ
僕は君の1番なんかじゃないってこと
それなのに君は本当に簡単に大袈裟な言葉を使う
僕を騙そうとしているんだろう わざとらしいんだ

 常に誰かと愛し合っていないと
死ぬ病気にでもかかっているのかと
聞きたくなるくらい君は焦っている
涙を流している
そんな病気ないって 
だって僕は今まで生きて来れられたんだ
今君の目の前にいる僕が何よりも証明だろう

 「やっぱり僕しかいない」って
簡単に言うけど 君は何も分かっていないんだね
君があいつと笑っている間
今の君と同じくらい泣いていた僕の長い日々を

 考えたことはあるのかな
君みたいに繰り上げるものすらなかった僕が
君が僕の顔すら忘れていたあいつとの日々の裏側で
ずっと1人で埋めていた2人分の空白を

 繰り上げ1位なら僕は要らない
きっと僕の後ろにもいる誰かに譲るよ
君はそいつの前でまた泣けばいい
その涙の原因は僕なのか あいつなのか

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