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「命懸け」77分ワンカットの588人斬りに坂口拓の生き様が滲む『狂武蔵』

 120年を超える映画の歴史の中で、77分ワンカットの殺陣シーンに挑んだ人は、この人だけだ。坂口拓さん、TAK∴名称でも活躍している今、日本で最強のアクション俳優であることを知ったのはつい最近だが、『狂武蔵』を見れば、その実にキレの良い動きや、時間が経ち、だんだんと息遣いが荒くなる中で、より五感が際立っていく。全身から炎のような気迫がみなぎり、敵が向かってくるのをためらうものなら、手で「来いよ」と煽る。男の色気、ダダ漏れなのだ。

 ただこの77分ワンカットは9年前に撮影されたものの、封印されていたものであり、その超絶シーンを撮影するのに至るまでには園子温監督初の時代劇としてアクションチームが準備を重ねたものの、クランクイン直前に制作側の都合で中止となるという絶望的な状況から、拓さんの呼びかけで実現したものだった。拓さん自身が撮影後、一時は引退するほどの苦悩を味わったというお蔵入りされていた77分を蘇らせるため尽力したのは、現在拓さんと二人三脚でYoutube配信によるファン育成や、海外戦略を立てている太田プロデューサー(太田P)。拓さん、本作の監督である下村勇二さんが一緒に仕事をした『キングダム』でアクションの絡みがあった主演、山崎賢人が二人のリアルアクション道に強い感銘を受け、超多忙な中、2日間の追加撮影に参加。7年後の武蔵と対峙する吉岡一門の若侍を、苦悩の色をたっぷりみせながら演じきっている。

 インタビューでは、19歳から独力でリアルアクション道を切り拓いてきたこと、海外で評価され、日本ではトレンディードラマに声をかけられても、映画の中でのアクションを極めるため、いわゆる売れる道を一切経ち、リアル、つまり死ぬ気でアクションに挑み続けていること。お金を懸けるより、命を懸ける自分の生き方は変えられないし、それを映画にのせたい、そして世界に誇れる映画を作り、世界に「侍なら、坂口拓がいるじゃん」と広げていきたい。そんな、真っ直ぐな生き様=リアルアクション道をたっぷりと聞かせていただいた。今日から全国公開、坂口拓=武蔵のみせる侍道をぜひ目撃してほしい。


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