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暮らしや営みの中で零れ落ちそうなことを掬い上げたり、心や脳に浮かんだ閃きを忘れないよう書き留めたりする、思考や思想の直売所のようなものです。
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2024年4月の記事一覧

エッセイに書かなかった、本当のこと

今から、3年前に書いた「"意識高い系"おんなともだち」というエッセイ。 国際女性デーにあわせて、女友達との話を……という依頼を受けて書いた文章なのだけれど、私自身非常に熱を込めて書き、沢山の人が読んでくれた。書籍の編集さんも気に入ってくれて、本にも収録することになった。 でも実は、このエッセイには話の流れが悪くなるから……と書かなかった事実があり、そのことに対する罪悪感がずっとあった。以下、中学時代の話のところで。 この中に、嘘は書いていない。話を盛っている訳でもない。

美大コンプレックス、なるものはどうして生まれるのか

美大コンプレックス、という言葉について考えている。 画家やイラストレーター、デザイナーなどの仕事をしているけれど専門教育を受けたことがなくて……という立場の人が使うことが多いこの言葉。まず、こうした言葉は他の分野でもあるのだろうか? たとえばこれが、「医者をしているけれど専門教育を受けたことがなくて、医大コンプレックスなんだよね」であれば即刻通報案件である。医師法は医師免許を持たない無資格者による医療行為を禁じており、 違反すれば3年以下の懲役か100万円以下の罰金、その

『小さな声の向こうに』 はじめに 全文公開

 今夜は嵐のように強い風が吹いている。  窓の外では蕾を携えた桜の枝が大きく軋み、空からは轟音が鳴り響く。不穏なばかりの夜からできるだけ距離を取るように全ての窓をぴたりと閉めて、部屋の中で耳に馴染んだ静かな音楽を流し、飲み慣れた茶を淹れる。呆れるほどに何度でも反復してきたそんな行為の中に身を置くことで、心はいくらか穏やかさを取り戻していく。文章を書くには、そうした準備運動が必要だ。  いまから3年前の冬の終わり、抜き差しならない事情によって私の心は枯れ果てていた。なにを目に