「SNSで見せる」前提の文章は、無意識に調整されている
ちょうど2年前の今頃に『新潮』に載せてもらったエッセイがある。"「キラキラ」を拾い集めて形成した、薄い膜の内側で" という文章だ。
当時の私はひどく疲れ果てていて、心はネガティヴなもので埋め尽くされていた。そういうときに「お題自由」である原稿依頼の〆切があるのは辛いもので、適当な文章がなにも出てこない。とはいえ、心を埋め尽くす出来事の内容を仔細に綴る訳にもいかない。そこで、ぼんやりとしながらも、自己批判的な文章を書いて送った。
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4,662字
新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。