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わたしは予測変換を許さない

会社のPCの予測変換に憤っています。怒りの矛先を向けるべきはIMEであって富士ストリートの端末ではないと承知していますが、とりあえず不満を述べさせてください。

「等」を打ちたいと何度言ったらわかるのですか。「当」を単独で使う場面が思いつきません。なぜこの字をいつも意気揚々と真っ先に提示してくるのか見当もつかない、みたいな熟語を書くときに使うんです「当」は。ソロデビューは諦めてください。

はいすみませんでしたと貴方が次に挙げた候補は「党」です。ブチギレそうです。いいですか。わたしは今ビジネスをしているのであってデモ活動や環境保護運動をしているのではありません。【問1】オフィスでこの字を使う打率を求めよ。3つ目の候補でようやく「等」を出してきたかと思えば、華麗にキーを押し間違えさせて「スケジュール糖」と新種の人工甘味料を爆誕させてくるのですから見上げた根性です。

「歌謡」も超絶イライラ案件です。今一度申し上げます。わたしはビジネスマンなのであってシンガーソングライターではありません。仕事のスケジュール調整中、何が楽しくて「では、歌謡だといかがでしょうか」と上司に思い出の青春ソングを尋ねなくてはいけないのですか。

当然、求めているのは他でもないTuesdayです。すぐ改めるかと思いきや、貴方が差し出してきたのは「通う」でした。わかっています。「かようび」とちゃんと打たなかったわたしのせいだと仰りたいのでしょう。

ですが、そうやって自らの非を認めたふりをして「かようび」と入力した途端に「通う日」です。おふざけが節度を超えています。なんですか「通う日」って。平日ですか。そうですか。こんなところで貴方から「今日も通勤しろ」と言われる筋合いは微塵もありません。

ここまでは、過失割合100:0の事故。どう考えてもキーボードを打っているわたしに非は認められません。自動車事故に喩えるなら、もらい事故です。「当」にソロデビューされたことのあるそこのあなた。路肩で停車中に後ろから突っ込まれたときくらい憤慨すべきです。

示談が成立しなさそうな微妙な例を出すなら「お手数ですが、角煮お願いします」でしょうか。添付ファイルの中身を確かめてもらうつもりが、突然、豚バラ肉を長時間煮込めと頼む始末。そんなのお手数で当然です。n のキーが打ちづらいのがいけない。わたしは悪くない。

トラブルになりやすい人、というのもいます。英吾さんです。知り合いにそんな名前の人いませんが、多分どこかにはいるのでしょうからあんまり声を大にしては申し上げられませんが誰だお前。

言うまでもなく、呼んだのは「英語」です。言偏が行方不明すぎます。「お伺い」が「鴎外」さんになる舞姫現象ならまだわかります。英吾さん、なぜか最近よくお会いしますね。張り切っているところ恐縮ですが、生憎わたしの仕事で出番は無いので予測変換候補18番目くらいの位置でおとなしくしてろください。

妻にこの話をしたら、彼女も仕事で予測変換に惑わされているそうです。人の悩みは共通かと思いきや、取引先への連絡が遅れた旨をお詫びするメールに「お待たせしてモスバーガー」と書いたとのことでした。取引先も膝から崩れ落ちる予測不能の返信です。

何でもかんでもシステムのせいにすればいいわけではありません。予測変換を扱いきれていない自分のスキル不足に、当の本人は気づいていないのでしょうか。困ったものです。


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