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推して「推し」を知るべし

「推し」について考えていたらぐるぐるしてきて、ヘッダー画像の人みたいになってた。

今や市民権を得て久しい「推し」という表現。この字が、なぜ「推し量る」なんて表現にも使われるのかが気になった。このnoteが好きなアイドルや歌手、コンテンツについて語るものだと思って開かれた方にまずは平謝りしたい。

「推し」は便利な表現なのだと耳にしたことがある。(今も使われているが)かつては「オタク」とか「マニア」といった言葉の一部であった概念が独立したもので、自分の偏愛を公言するのにちょうどいい塩梅の言葉だったのだろう。

単に「好き」と言うのではハマりっぷりが伝わらないし、かといって「夢中」や「恋してる」ではニュアンスが違う。このあたりの考察はたくさんありそうだから深入りしないが、言葉という「入れ物」が変わるだけで世界の映り方が一変する良い例のように見える。

閑話休題で、「推し量る」に戻る。とりあえず辞書を引いてみた。

おし‐はか・る【推(し)量る/推(し)測る】  
[動ラ五(四)]類似の事実を当てはめてみて、見当をつける。推測する。推量する。「当事者の心中を―・る」

goo辞書

「推測する」「推量する」とか言われてしまうと、「それはわかってるんだけど」と返したくなる。堂々巡りになってしまうので、語源から紐解く作戦に切り替えた。

「推す」の「推」は、「推薦」「推奨」と同じで、「選んでおし上げる」の意である。「推進」「推力」も似ていて、前におし動かすの意。どちらにも共通する語義は「おす(≒押す)」だ。英語の "push" の方が感覚的に近いかもしれない。

成り立ちを見れば、それも納得できる。「推」は「扌(手)」+「隹」で構成されている。右側の「ふるとり」は鳥の意であるが、ここではスズメもカラスも鳥貴族も関係がないらしかった。「隹」の音読みが「スイ」だから、「出」の意で使われているのだそう。「出納すいとう」とか言うね。形成文字ってやつ。手を使って押し出す、ということか。へええ。

おそらく、上で引用した「推し量る」の定義にある「類似の事実を当てはめてみて」がポイントなのではと思った。「推測」も「推理」も、何もない状態から考えを巡らすのではなく、既にわかっている事実に「当てはめて」考えている。この「当てる」が「押す」の意なのだとしたら、合点がいかないだろうか。どことなく、「隣接」「接触」「根拠」を意味する “on” のニュアンスを感じる。

「推し」は字の如く、自らの手でおし出したいものなのだろう。きっと「隹」が鳥を意味するのも偶然ではない。貴方が想いを寄せるその人、歌、あるいは物語が、もっと世界に羽ばたけるようにおし上げてあげるから「推し」なのだ。5秒で思いついた割には良いことを言っててすこぶる感動している。

平日のこんな時間に、どうでもよさここに極まる文章を書いてしまった。「推し」の真実を推して知るべくもなかったから致し方ないのだが、明日も推し事、もといお仕事なのがやるせない。


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