薄桜鬼ミュージカル 真改 土方歳三篇感想

薄ミュ土方篇、4月26日(金)夜の銀河劇場を観てきたので感想書きます。(原作ゲーム全編ネタバレ含む)
観終わった直後の印象だと、今まで観た舞台系の中で一番完成度が高かった感じがして、『薄桜鬼ミュは、美しかった(完)』としか言えないな…。と思ったのですが、やっぱりなるべく感想残しておきたかったのでもう少し細かく書きました。私は自分で観た作品の感想をしょっちゅう忘れてしまうから……。舞台(ミュ)は一度見ただけ、原作ゲームは一度クリアしただけなので諸々うろ覚えです。
※私はストーリーでは土方ルート、カプとしては沖田×千鶴と斎藤×千鶴、キャラとしては山南さんが好きです。

・薄ミュの進行がかなり原作ゲームに添ったものだったので、ところどころで『このへんの千鶴ちゃんの台詞、選択肢で自分が迷ったやつだ!!!!!』と思って面白かった。薄桜鬼の選択肢って何を選んだらキャラの好感度が上がるのかかなりわかりづらいから最終的に攻略サイトと睨めっこしてクリアした記憶が如実に蘇ってきた
例:土方さんが大丈夫だ…って千鶴に言うシーンで、「土方さんの言うことは信じません。土方さんの大丈夫は大丈夫ではありませんから……」って言うところ

・薄ミュ、歌もダンスもあるなら殺陣はそんなにやらないのかなと思ってたけど、殺陣もかなりしっかりやっていて見応えがあった。刀同士の殺陣だけじゃなくて、天霧さんが刀を鬼の腕で受け止めて戦う殺陣も設定に沿ってて良かった。

・ミュのストーリーは、大鳥さんに千鶴が土方さんとの過去の話を話す形式で進んでいく。
ミュの大鳥さん、適宜千鶴にお茶を渡したり(それを千鶴が過去回想で土方さんに渡しに行く)おにぎりを渡したり(それを千鶴が過去回想で土方さんに渡しに行く)して、お助けキャラ感が強くてじわじわきた。ミュの大鳥さんはゲームと違い土方さんと直接喋るシーンが無いこともあり、『歴史上の人物』というより『土ちづルートを応援してくれる妖精』のように見える。

・舞台上に土方さんが出てからというもの、『ひ、土方さんだ……』とその存在感に圧倒された。その気持ちは最後まで続いた。
久保田秀敏という俳優の人をあまり深く知らなかった(テニミュ2ndで仁王だった人というくらいの認識)けど、土方さんの再現度を見ると、他の舞台でもくぼひでがいたらいい舞台になるんだろうなと想像してしまう。

・夜に千鶴が羅刹に遭遇して、その後で斎藤沖田→土方さんと会うくだり、会った順番は斎藤沖田の方が先なのに土方さんと千鶴が出会ったときに初めて二人にスポットライトが当たるので、『この舞台は土方と千鶴がメインですよ』とわかりやすい演出になっている。
それはそれとして、私はカプとしては斎藤千鶴と沖田千鶴が好きなので、今回は千鶴と別キャラは個別ルート的な交友を深められないんだなあ~~~。そっかあ…………となった。舞台の斎藤さんや沖田さんがすごくキャラらしく見えたから、彼らと千鶴ちゃんとのルートも見たいと思ってしまう。

・薄桜鬼ミュのメインテーマっぽい曲(沙羅双樹の花を返り血で染めてやるみたいな曲)がすごく良い。
全体的に薄桜鬼ミュの曲は和風の世界観に浸れる曲が多くてレベルが高いなと思ったが、この曲は歌詞がすごく好きだなと思った。

歌詞の沙羅双樹=平家物語の『沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす』から来てるんだろうけど、ストーリーが進むごとにこのモチーフの捉え方が変わってくるのだ。

序盤の新撰組の立場が弱い時だと、『盛者』というのは『武士の身分を持っている武家達』を表している。だから新撰組たちには『これから成り上がるぜ』という勢い、活気がある。

ストーリーの中盤以降(新撰組が会津藩の後ろ盾を得た後)だと、『盛者』=『新撰組』を指している。だから新撰組や幕府がこれから斜陽、落日の立場になるんだなと自然に感じられる。同じ曲なのに印象が変わって聞こえるのがすごくいいなと思った。
あとこれは新撰組隊士たち皆が歌って踊る曲だけど、ストーリーが進むにつれて羅刹になったり隊士として戦えなくなったり…っていうキャラも出てくるので、変わっていく新撰組が視覚的にわかるのが辛いけど良かった。

・新撰組たちが宴するシーン、みんな浮かれててかわいい。普段は落ち着いている方の斎藤さんも山崎さんも踊っててかわいい。
宴曲の中でも平助はちょっと今後の進路に迷ってる感じが出ていて、それは平助のキャラとしてはいいなと思ったんだけど、この宴会のシーンは土方さんが『日野時代からずっと長い夢を見ているみたい』というところなので、それに合わせて平助もはしゃいで欲しかったかもと思った。新撰組たちはいずれそれぞれの誠に従って行く道が変わっていくけど、ここだけは現実離れしてるくらい和気藹々としていて欲しかったというか。

・それはそれとして、平助が御陵衛士になると発表した後に不安そうな千鶴をぽんぽんするシーンはめちゃ良かった。
平助と千鶴、幼馴染で高校までは一緒だったけど平助が密かに遠くの大学に推薦合格したことを知って呆然としてしまう千鶴とか、そんな千鶴を見て「大学が別になっても絶対会いに行く」って約束し直す平助とか、そういう現パロがあまりにも似合う。

・薄桜鬼の土方さんは、恋仲になる千鶴に対しても甘い台詞はほぼ言わない(本当に最終盤にならないと言わない)し、口調はぶっきらぼうだけど、その声色に優しさとか葛藤とかの気持ちがしっかり滲んでいてすごい、と思った。ゲームをやったときは土方さんcvである三木眞一郎の技量がすごいから、で納得してたんだけど、ミュでもその辺りの演技がめちゃめちゃうまかったので驚いた。くぼひで、声優もいけるんじゃないか?

・千鶴ちゃんの人、歌が上手すぎる。
高音で歌うシーンがいくつかあったのだがどれも音が澄み切っていて衝撃を受けた。あと後半にある土方さんとのユニゾンが綺麗過ぎる。薄桜鬼ミュは全体的にみんなうまかったけど、千鶴ちゃんが抜群にうまかったから安心感を持って見ることが出来た。
土方篇を見ながら『他キャラルートも見てみたい』と思ったのは、他キャラルートの千鶴ちゃんが土方さんルートの千鶴ちゃんとは性格が変わるところを見てみたいと思ったのもある。(原作ゲームでの千鶴は結ばれる相手によって性格や態度にゆらぎがあると思う。そこが好き)
今回のミュの千鶴で一番好きなシーンは、風間の何度めかの襲撃の末に『貴方には絶対に従わない、そうするくらいなら舌を噛んで死ぬ』って啖呵を切るところですね。芯の強さがいい。

・沖田さんが労咳にかかっている事を知ってしまうも、斎藤さんに口止めされて「はい……」って千鶴が言うところ、沖田ルートから離れていく〜~~~~!!!!と思って悲しかった。いやこのミュは土方篇だから当然なんだけど、いざキャラに関わらない選択を取っているところを見ると悲しいな!と思った。

・山南さんが沖田さんの静止に関わらず変若水を飲んでしまうところ、千鶴が……千鶴がこの場にいない!!!と思ってもどかしかった。
原作ゲームだと『山南さんの様子を見ず部屋に戻る』を選択すると、そのまま朝になって昨夜こんな事がありました…とダイジェストで語られるんだけど、舞台だと何があったかしっかり描かれていたのでもどかしさがマシマシだった。いや千鶴がその場にいても山南さんは羅刹になるんだけどね……。

・土方さんが戦場で羅刹になり、風間千景と対決するところ、殺陣もやり取りも壮絶だった。
風間が土方さんに傷をつけられて激昂するとこ、このミュの風間の中でも一番好きなのよな。

・これ以降土方さんは羅刹になり、羅刹のウィッグ(白髪)を被ることになる。
正直、ビジュアル的にいえば……黒髪の方が好きだ!と思った。
三次元の白髪が二次元のイラストに比べると綺麗に見えづらいからそう思うのかな?とも思ったけど、後半で斎藤さんが羅刹になった際は斎藤さんのウィッグは綺麗だなと思ったんだよな。土方さんの羅刹ウィッグ、一瞬『この白髪のおかっぱの人は誰?』と思ってしまう。友人とも話して思ったけど、舞台上での土方さんの運動量がとても多いため、ウィッグが乱れてしまうのが原因なんだろうな。

・近藤さんと土方さんの別れのシーン、つらい。
薄ミュの第二幕は辛い展開の連続なのだが、ここがつらみの頂点に達したところだと思う。「俺があんた(近藤さん)のためにやってきたことは全部間違いだったのか」って土方さんが言うところ、声色も相俟ってまじで辛い。近藤さんの声は穏やかで、もう疲れて楽になりたいという言葉を本心から言ってるんだな〜と感じられる。このミュの中だと千鶴に剣術を教えていた頃の近藤さんはコミカルだし生き生きとしていたから、近藤さんにとって大名という立場が重かったという台詞の納得感が増すなと思った。
近藤さんと土方さんって、絡み自体は多いように見えて、『最終的にどうなりたいか』みたいな話し合いはちゃんとしてなかったな〜と言うことにこの辺で気が付いて気が重くなった。

・病床の沖田を土方さん&千鶴ちゃんが見舞うところ、沖田が剣を取る→咳き込んでしまって剣を杖にする、といった舞台ならではの見せ方が良かった。あと沖田と千鶴の絡みが好き。ここで沖田がはっきり土方さんを責めるんじゃなくて、千鶴に土方さんの側にいて〜って言うところに沖田の優しさを感じる。

・山南さん&藤堂くん&綱道さんの羅刹隊の終焉のくだり、泣けて良かった。

原作ゲームの頃から気になっていたのが、『千鶴にひたすらに輸血用の血を出させたら、羅刹隊も生き延びる事は出来たんじゃないか?』ということだ。
人道的観点及び千鶴を大事にしているキャラからすれば駄目というのはわかるけど、羅刹研究に重きを置いている山南さんが後半にそういう事を言わなくなるのは不思議ではあった。(前半途中で屯所で千鶴に迫るシーンはあったけど、土方さんに止められてからはやらなくなった)
土方篇の山南さんは『土方さんの意思を大事にする』という選択を取ったからそういったことは言い出さなかったのかなと思った。
土方さんが千鶴を女性として好きになったタイミングについては明言出来ないと思う(最後の最後で千鶴に告白するけど、内心ではその前に好きになっていたはず)けど、屯所で土方さんが山南さんから千鶴を守った時点で、もう千鶴を特別に守りたいという気持ちは無意識下にあったんだろうなと思う。山南さんは土方さんのその辺の機微を察したから、それ以上千鶴に羅刹関係で迫ることはやめたんじゃないか……と妄想している。山南さんは土方さんの兄みたいなものだしね。

・近藤さん斬首の報を聞いて、『副長はどうした?俺がいたら近藤さんを一人にはさせなかった』みたいな事を言う新八に、組織を離れた人間が組織に残った人間にあれこれ言うのは良くないぞ…!と思ってしまった。でも、新八にはそれだけ土方さんに対する信頼があったってことなんだよな。切ない。
ここに限ったことではないけど、土方篇の新八&左之さんは他キャラに比べてちょっと割を食ってる感じがある。原作ゲームだと近藤さんが大名扱いにウキウキしてる描写があって、前線に出てる新八や左之さんとの温度差がわかりやすく、その後二人が新撰組から離れる展開も飲み込みやすかったのだが、ミュの土方篇だと近藤さんが浮かれていて…みたいな具体的な描写が無い(新八の台詞で触れられるだけ)ので、二人が新撰組から離れた理由がやや不明瞭に感じてしまった。
でも、土方篇は土方さんのキャラ(及び土方さんにとって重要人物である近藤さん)を際立たせるために構成されているだろうから、これで良かったんだよなとも思う。

・残った羅刹と戦う新八&左之さんの周りに、もう亡くなった隊士たち(近藤さん、山南さん、藤堂くん、沖田)が現れて歌って鼓舞してくれるのが熱い。もう亡くなったとはっきり語られたキャラたち3人と一緒に沖田が出るので、『明言されてないけど沖田は病没したんだな』とわかるつくりになってるのがオシャレだなと思った。ここに限ったことではないけど舞台的な演出が全体的にうまい。

でも、不知火さんが新八&左之さんに協力的になってたのは、いつの間にこんなにデレたんだっけ……??と不思議に思ってしまった。原作土方ルートからしてこうだったかちょっと思い出せない。

・蝦夷地に向かう土方さんによる、千鶴置き去り事件
ここ、「自分では千鶴を幸せに出来ない」「自分は幸せを求めている訳ではない、ただ土方さんと共にいたい」みたいな問答が良かったな。
「風間が狙うのは俺の方だからもう別れても大丈夫」「私は風間から守ってもらいたくて一緒にいた訳ではない」という問答もいいよね。ミュの千鶴ちゃんは女の子らしい可憐な声なのに、激情で土方さんに反論するみたいな演技も似合うのがすごい。

・原作ゲームでは土方さんが羅刹になってからちょくちょく千鶴が血を吸わせるシーンがあるが、ミュでは暫く出てこなかったので、「史実の土方歳三が人気な理由って一人になっても戦い抜いたところだろうから、その辺踏まえて千鶴との乙女ゲーム的なシーンはミュではカットされるのかな…?」と思いながら観ていたが、最後にガッツリやってくれたので良かった。「薄桜鬼」の2.5次元化なので、原作要素を大事にしてくれたのは嬉しい。

・桜吹雪の中で風間と一騎討ちする土方さんのシーン、ただただ美しい。薄桜鬼土方篇ミュの感想を一文で言うと「美しかった…」に集約されるんだけど、それはこのシーンの印象が強い。
ここの桜の木が赤いライトに照らされていて、幻想的に見えて良かった。土方さんが理想とする『武士』に到達したということが、現実から離れた風景に暗示されてる感じがした。
原作ゲームやった頃から思ってたけど、風間が最後の最後に土方さんを認めて鬼としての名をつけてくれるところ、まじで熱いな。『鬼であってもお前のようには戦い抜けない……』って土方さんに言ってたところ、風間自身がかつての繁栄から斜陽になった鬼の一族だからこそ戦い続けることの苦しさがわかったんだなと思った。

・山南さんの「私たちは時代の徒花なんですよ」という台詞、原作ゲームでも思ったけどいい台詞だなと思う。
徒花って「はかなく散る桜花」のことも意味するらしいから、土方篇最後で桜の花が散っているところに土方さんと千鶴がいるところ、二人が新撰組を見届けてきたってことも示しているのかなと思う。

・ラストシーン付近で舞い散る桜は本当にきれいなんだけど、舞台上に桜の花びらが積もり続けるところが肉眼で見えるので、『花びらで滑らないか?大丈夫か?』ということが気になった。最後の土方さんと風間の殺陣は短めに終わった印象だけど、このへんの安全管理も考慮してたのかな。
個人的にはあんまりアクロバットな動きをされると怪我が心配になってしまうので、役者の安全を第一にして欲しい。薄桜鬼ミュは二階建てのセットから飛び降りて殺陣をするみたいなシーンがいっぱいあったので安全面が気になってしまった。

・カーテンコールでの久保田秀敏、最初「疲れてない」って言ってたけど、その実かなり疲れているようで大丈夫……!?と思った。でも土方篇の土方さんは歌って踊って殺陣をやって激情迸る演技をして……って、傍から見ててもめちゃめちゃ体力使いそうだな……と思ったので、疲れるのには納得出来た。劇中の羅刹みたいに、土方さんを演じることで寿命を削っている感じがあるから、くぼひでには舞台が終わったら養生してほしい。
最後にくぼひでが舞台からはけるところで舞台裏の照明?にぶつかっていたのもじわじわきた。千鶴の「土方さんの大丈夫は大丈夫ではないですから……」という台詞の説得力がカーテンコールで増している。

・スペシャルカーテンコール曲等で改めて思ったんですが、ミュの山南さんの人山南さんが似合っててメチャ良くないですか?黒髪洋服ルックになると更に『良い』と感じた。ミュの土方さんにあんなに感動したのにカーテンコールでは山南さんを目で追ってしまった。新テニミュの毛利役の人らしいけど山南さんをやってるときは全然面影を感じなかったので、役者ってすごいと思った。

・土方篇、すごく良かったんだけど、『このくぼひでの原作再現力を持って相馬ルートの土方さんも見てみたい』という気持ちも湧いた。相馬ルート、蝦夷地に行ってからの相馬と伊庭と千鶴のまさかのラブコメ展開と相馬千鶴の仲人と化した土方さんが面白かったから…。(ゲームやってるとき、薄桜鬼でこういうのもありなんだ……。と謎の感動があった)

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