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【エッセイ】さらば灼熱の日々よ

夜風が涼しい。
エアコンを入れずに寝られる夜が戻ってきた。

夏の間の私は、夏を恨み、
「もううんざりだ、鍾乳洞か南半球で暮らしたい」
と、毎日思う。

けれど、いつしか蝉の声が聞こえなくなり、
冷やし中華がスーパーの麺コーナーから消え、
夕方六時の空が、もう黒々としているのに気付いたりすると、
「これで夏ともお別れか」と、一抹の寂しさが込み上げる。
そういった自分の五感や心の変化に、物悲しさが込み上げる。
それがいつもの九月だ。

しかし、今年は例外だ。
まったく寂しくない。物悲しくもない。
「ああ、やっといなくなった、せいせいした!」と、
まるで近所迷惑なお向かいさんが引っ越したような
爽快感と安心感に包まれている。

今年は体のセンサーが少し狂ったのかもしれない。
裏を返せば、それほど未体験な暑さだったと言えるのだろう。
体は本当に正直だ。

ドラマ「Beach Boys」は、夏という季節と、その終わりの空気感を見事に描いている。
反町隆史や竹野内豊はじめ俳優陣の生き生きした演技もさることながら、何より脚本が素晴らしい。

私のように、夏とイマイチちゃんとお別れできていない人は、
Beach Boysを観て踏ん切りをつけるのも一手かもしれない。

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