リビングを上下階のどちらに置くべきか
今回はお客様のよくある悩み、リビングを1階と2階のどちらにするかについてアドバイスです。これからの家づくりをされる方のためにご参考まで
ハザードマップから考える
沿岸部や河川近くだと気になるのが浸水被害です。計画地が浸水エリアだった場合は災害時の数日間をどうサバイブするかが鍵になります。そうなると冷蔵庫やコンロがある階を上階に設けることが多いです。そんな時はエアコンの室外機も合わせて浸水レベルから上げるなどして非常時の対応ができるよう計画します。またイエローゾーンなどの崖地の場合は計算上1Fまで崩壊により土砂が迫るようであればリビングを2階に設けることもあります。停電時の真夏は2階は灼熱になるので太陽光+蓄電池の稼働率を考えて1階リビングにするのも一つ。
敷地の大きさ、庭との接点から考える
庭いじりがとにかく好き、犬を飼っているから庭で走らせたい、家庭菜園を楽しみたい、週末は友人とデッキでグランピングやBBQで楽しみたい場合は1階リビングをお勧めします。なにしろキッチン、リビング、屋外スペースとの繋がりが重要になってきます。特にBBQでは具材や調味料、ビールなど何かと行き来するので動線が同じ方が良いと思います。ただし、2階に大きなデッキが作れる余裕があれば2階リビングでも良さそうです。
眺望から考える
購入された敷地から山や海の素晴らしい眺望が見える場合は、2階リビングを当然お勧めします。リビングと連続するバルコニーとの組み合わせも最高ですね。もちろん眺望へのメリットはもちろん、狭小地などでは少しでも空などが見たい場合にも適しています。また、南北に渡る縦長の敷地などの場合は北側に日照が届かないので天窓を使って明るくするのも良いと思います。
吹き抜け空間から考える
自由設計の場合は大きな生活空間にこだわる方が多いと思います。特に吹き抜けのあるリビング階段やロフト階段などもアクセントとして希望される方もいます。1、2階をつなぐ大きな吹き抜けが欲しい場合は1階リビング、高い勾配天井などが欲しい場合は2階リビングがよいと思います。また隠れ家的なロフト空間が欲しい方は高さが取れる2階リビングが比較的計画しやすいです。ただし吹き抜けは生活音も響くので、音が気になる方は慎重に計画しましょう。
温度差から考える
暖気は上に上がります。そして冷気は下に下がります。なので夏冬には2階が暑く(暖かく)なり、1階リビングは夏冬は比較的涼しい(寒い)と感じるでしょう。寝室は家全体で考えると寝る時間までは使わないので、普段過ごすであろうリビングをどう快適にするか検討します。最近は住宅の気密断熱性も上がり熱交換式全館空調も発達してきたので、温度差については少しづつ改善されています。リビング勉強も増えてきたので、効率良く作業できる環境をどう設けるかも必要な検討事項のひとつ。
アクティビティから考える
湘南ではサーフィンをする人、アウトドアをする人など趣味性がとても高いです。特にウォータースポーツでは海からすぐにお風呂に入りたいことも多いので1階に水回りを配置、そうすると1階に面積が集中するので2階リビングになることも多いですね。またアウトドアでギアを収納するスペースがある方も同じことが多いと思います。星座を見るのが好きな人はリビングからの屋外デッキでの星空を楽しむのが良いかと思います。
防犯から考える
子ども1人世帯などはお子さんが1人で寝られることも多い、そうなると防犯への考慮も必要です。地域性もありますが就寝階が1階だと不安も多い。そんな時は2階に寝室を配置することもあります。
日照条件から考える
普段から日照が当たらないエリアは日照は相当大切です。朝日が他のエリアより数時間遅れ、日暮れが他より早いことも多い。そんな場所は普段生活する2階リビングにして少しでも日射を確保することが大切になります。ただ最近は夏が暑すぎるので、場所によってはその逆も然り。これは土地探しの段階である程度予想がつくので土地選びにも注意しましょう。
自分達の老後をイメージして考える
歳を取るとだんだん階段が辛くなる、いつかは車椅子かも。そして訪問介護によりお風呂とがいれてもらうことも。そんな時は1階にリビング+小さな部屋があれば全て成立します。若い時はあまり考えませんが夫婦二人でいる時間はもっと長いので老後も踏まえて考えてみましょう。スキップフロアの家で膝を悪くしたりしたら住み替えすら考えなくてはいけないかもしれません。ちなみに自邸は老後は這ってでも生活できる1階平屋という選択をしましたw
洗濯物をどう干すかから考える
洗濯物は天日で干す派?乾燥機で干す派?そんな影響も実はあります。
天日で干すということは干し場は洗濯機や浴室と同じ階にすると当然便利。濡れて重たい洗濯物を毎日運ぶのは相当な労働です。敷地が広ければ他にも選択肢はありますが、家が敷地いっぱいの場合は干せる場所も限られてしまう。干し場と水回りには当然服を収納する場所も近接するので就寝階になりやすい。つまりリビング階と位置が対局になることが多いのです。それはリビングに日の当たるデッキがある場合は階段を使って移動しなくてはならないことにもつながります。敷地条件や設計によって必ずという訳ではありませんが、こんな生活動線を考えることも大切です。
娘の思春期から考える
これは自分の意見というよりお客様の要望から出た話。思春期になった娘が夜中にこっそり家を出たり、帰ったりなんてことが心配なご両親はあえてリビング階段を選択しました。よってそこは1階リビングという選択肢。ご主人は夜中まで見たくない映画を見ながら階段下のソファーで頑張っているそうな・・・どちらも気の毒な感じもします。
さていかがでしたでしょうか?建築士はお客様のヒアリングの中からリビングの位置ひとつでも、このような様々な条件を考慮して最適な提案をしています。建売ではそんな個々の想定ではなく、売りやすい想定での間取りです。一生の家づくりはこだわって考えてみたいものですね。
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