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Zsasz "décadence" に寄せて、想いの丈を語るオタク。(#012)

東京拠点のアイドルグループ・Zsasz(ザーズ)。
ティム・ヴィンセントをTwitterで知ったことをきっかけに、ライブハウスへ初めて立ち入り、私をオタクにしたグループだ。

そのZsaszが、2022年5月15日、
ワンマンライブ"décadence"を開催した。

発表されたのは、約2ヵ月前の3月20日。「重大ニュース発表!」との予告の後、「Zsasz史上、最大規模のワンマンライブ開催決定!」のティザー動画がTwitterに流れた。

小規模なワンマンなら、これまでいくつかやってきた。生誕祭や周年祭など記念が噛まないワンマンとしては、確かに最大規模だ。

開催を知って、素直に「めでたい!」と思った。同時に「めでたいが、思ったほどの重大ニュースでもない!」とも思った。2019年10月のデビューから、活動を続けて2年半だ。

新たな試みをするというから、そこそこ古参のオタクとして観たい気持ちはあった。とはいえ、グループの拠点は東京。重要なイベントはすべて東京で開催されるため、年間計画を考えると参戦は厳しく、チケットの購入は見送った。

開催が迫るにつれ、ワクワクする映像が度々出され、興味のあるアイドルを招待するなど、「アイドルライブとしての挑戦」色が色濃くなってきた。やっぱチケット買っときゃよかったかなぁ。

直前になり、「遠隔地のオタクのために」ライブをリアルタイム配信する旨が発表された。Instagramに力を入れていたり、アジアにルーツを持つメンバーがいるZsaszは、海外にもファンが多い。オーストリア、ロシア、アメリカ、イギリス、フランスほかのiTunesチャートでランクインしたこともあるぐらいだ。

「遠隔地のオタク」として、この配信は非常に助かった。(「ライブと配信」については、別noteで主題にする予定。)

当日は仕事終わりだったので、アンコールに入ってからしか、視聴できなかった。Zsaszのライブを観て元気をもらえたが、"décadence"での挑戦について、なんとも言えないなぁ。
そう思っていたら後日、こんなお知らせが。

この全編プレミア公開は、最初から最後まで視聴した。

率直な感想として、みんな楽しそうだなぁと思った。のびのび自由に遊んでるというか、今好きなことやってます!感があって、観ていて気持ちが良かった。

ナガセリツの目一杯の手足の伸ばし方、シャウトの伸びの良さ。愁月しのがライブだからこそ見せる笑顔はより満面だったし、朔も歌声の遊び方が絶好調だった。テンションが分かりやすいのがろむで、歌い方から踊り方から、一番鮮やかにはっちゃける。マントのたなびきもいつもよりサマになってた気がするぐらいだ。自由なのはいつも通りだけど、こういう時にこそアイドルとして一歩進んだ喜びから、妙にちゃんとしちゃうのがティムだ。かわいい。ていうか、髪伸びたなぁ。

そして披露された新曲「芸名」。
Zsaszはロック・ラウド系の派手なサウンドが多く、ハイテンポでシャウトのある曲が多い。だからこそ、ずっとバラードが欲しかった。我儘ラキアの"One"を聴いて、確信した。こういうのが得意なグループこそ、ここぞのバラードが響く。
「芸名」は、バラードであり、王道メタルコアでもある。Zsaszらしさを保ちながら、新たな魅力を引き出してくれそうだ。これまでの死角を埋めるような曲になるだろう。
他にも何曲か、新曲があった。

画面から見て取れる「新たな試み」はおそらく一部だろうけど、まず目に入ったのは、ステージ装飾だ。
全体的にエイジング加工が施されたステージに、絡まる蔦。duoの悪名高い二本柱も蔦に絡まれ、メンバーの名前が書かれた紙("WANTED"手配書のようなものだろうか?)が貼り付いているらしい。「退廃的な世界観」というコンセプトに繋がる演出だ。
それから、廃工場をイメージさせる巨大なファン(換気機構)が、ステージ後方で回っている。客席から見て真正面、ステージの幅ほぼいっぱいにわたる大きさで、圧倒的な存在感と異様さを放っている。
いつもなら会場注意が英語で入るオープニングSEも long ver. になっており、各メンバーの紹介が流れた。めちゃくちゃカッコイイ。

ティザー要素の多かった"décadence"だが、ステージ装飾に凝ることについては早い段階から明かされていた。しかし、セット・美術・装飾の類が日常的にある舞台関係者としては、正直そこまで惹かれていなかった。
ところがこの配信を観て、思いを変えた。音が入り、動きが合わさると、俄然装飾が活きてくる。よく考えてみれば、アイドルのライブでここまでの装飾は見たことがない。フロア入口だけならまだしも、フロア内・ステージ上の装飾となるとなおさらだ。よほど力のある事務所の所属だったりすると話は別だが、Zsaszはフリーランスの地下アイドル。かなり画期的だ。
どちらも世界観を視覚化するものとはいえ、演劇における舞台美術と、アイドルライブにおけるそれとでは、位置付けも活き方も全く異なる。アイドル×ステージ装飾、かなりアリだと思った。
(せっかくならもっと装飾の密度を上げれば世界観がよく醸し出されたと思うが、初の試みとしては充分だろう。)

興味を持ってくれたアイドルを招待枠で呼ぶのもわかる。アイドルライブは演者と観客の相互交歓に重きを置き、その最大化のために身軽に乗り込む場合が多い。今回の「作り込んでおいて、そこへ招き込む」タイプのライブは、なかなか面白い企画だ。
そしてその様子を、現地に来れなかった人も含めて、覗き見てもらう。プレミア配信とメイキング公開まで含めて、「新たな試み」だったのかもしれない。

アンコールを含め80分歌い踊り通した後のMCで、「みんなでいっぱい考えたんだよね!すごくない!?」と嬉しそうにリッちゃんが言った。同調する4人も達成感たっぷりに、肩の荷が下りたような清々しい顔。ご時世もあれば、慣れない分野の制約もあって、時間も手間も掛かったろうが、それも楽しかったんだろうなぁと、想像するだに喜ばしかった。

和やかに賑やかに、肩に力の入らない、
Zsaszらしい姿でステージは幕を閉じた。


朔/パワフルでダンサブルな頼れる歌姫。

結成4ヵ月時点から見てきたオタクとして、 "décadence"は万感の思いがあった。
でっけくなったなぁ、めでてぇなぁ。
ひとつひとつの曲とか、スキルとか、いろいろ褒め称えたいところはあるけれど、経過を辿ってこそわかること、ここには書かずに秘めておく。ひとつ言うならば、余計な力が抜けた。とても自然体になった。それでいて、高いパフォーマンスを発揮できるようになった。そのラフさが、今回も良い方向に出ていた。ともかく、よくやったよ、あんたたち。みんな優勝!よくやった、Zsasz!

愁月しの/しっとりフレーズも情緒深く歌いこなす。

正直、焦りを感じていた節はあった。
後からデビューしたグループがどんどん進出していくし、Zsaszの展開スピードはお世辞にも早いとは言えない。それでも着実に力は上がっているし、進んでいるし、他のグループがカバーできない独自の地位を掴みに行きつつある。それが今回の"décadence"を観て、わかった。ZsaszはZsaszのペースでいい。

ナガセリツ/めいっぱいにパワーを繰り出す小動物。

私はギリギリ、コロナ規制前のZsasz現場を知っている。初めて現場に行ったとき、リフトで揚がったりフロアをぐるぐる回ったりするオタクに唖然としたのが、懐かしい。

初めてのアイドルライブで、なんなら、初めてのライブハウスだった。欲と性と夢の渦巻くTHE若者の街!って感じの渋谷の、ラブホが立ち並ぶあの坂道を、ちょっとびくびくしながら登った。現地に着いてからも、重くて黒いハコの扉に手が伸びず、心の準備をしながら何往復も前を通った。今は無き、渋谷VUENOSだ。

「特典会」というシステムを知らなくて、物販の価格表を見ていた時に「何かわからないことあったら何でも聞いてくださいね」と話しかけられた。当時はガタイのいい中心人物的なお客さんだと思っていたけど、ガタイのいい運営のかやのさんだと、後々気付くことになる。

おそるおそる「チェキ券」なるものを買ってみたものの、列に並ぶ勇気が出ずに、地上階と繋がる階段を意味もなく昇ったり降りたり。踊り場から覗き込んでいると、ティム列に誰も並んでいない!これはおれがいかなきゃ!なんて初見ながら使命感を感じて、めちゃくちゃ心拍数を上げながら、初接触を果たした。ティム・ヴィンセントは、当然、初めて話したアイドルだ。フタを開けてみれば、ティムの前には長蛇の列。何のことはない、並ぶ順番の戦略がオタクたちにはあっただけなのだ。

それから1~2ヵ月に一度、東京に遠征を続け、Zsaszとの時間を重ねた。関西民のくせに東京のアイドルしか知らなかったのは、Zsaszが出演するライブの対バン相手しか、他にアイドルを見なかったからだ。

ティム・ヴィンセント/Zsaszの切り込み隊長。

その後はコロナ禍。ライブハウスでライブができず、閉館も相次ぎ、多くのアイドルは配信ライブに活動の場を求めた。当然、右も左もわからない。画質も悪いし、どこを観たらいいのか演者も観客もわかってなかった。賛否両論飛び交う中で、お互い気持ちを乗せようと頑張りながら、困惑と模索の日々だった。
頻繁に足を運べない遠征民としては、ありがたい側面もあった。これまで見る機会のなかったグループに触れたり、アーカイブのおかげでじっくり観たり、食事をしながら観るなんて贅沢もできた。
配信ライブに切り替わって頭角を現したのが、ろむだ。これまで出てこなかったろむの表情や、観客へのアプローチが、カメラを通してどんどん繰り出され、磨かれていった。ろむの覚醒は、配信ライブしかできなかった時期を乗り切る、何よりの希望だった。台紙付き宿題チェキも、みんな丁寧に個性的に作ってくれた。戸惑いながらもできることにトライする中で、メンバーとオタクの団結感がかえって強まったような感覚がした。

ライブが再開できるようになってからは、Zsaszが大阪に来てくれるようになった。その度に浴びさせてしまう洗礼。ホームとアウェイ。
2021年8月、メンバーが欠けた中での激動の1週間。
突如降って沸いた、我儘ラキアとのツーマン。
AbemaTV「火曜日TheNIGHT」への出演。
ひとつひとつにドラマがある。私をオタクにした主現場だ。思い入れはひとしおあって、語り出せばキリがない。(キリがないから、また別noteに置いといて、ここでは割愛するとしよう。)

いつかと切望していたラキアと、急遽実現したツーマン。


そして、今回。メンバーは5人揃ってる。ライブハウスでできる。配信も慣れた。チームも仕上がってる。この日に向けて、たくさん考えて、いっぱい準備を重ねてきた。その中で見せてくれた、のびのびとライブを楽しむ姿。

前はこんなんできなかったなぁとか、ここは変わんないなぁとか、微笑ましかったり、胸を打たれたり、Zsaszの節目に立ち会うといつも心を動かされる。今回はその場に居合わせられた訳ではないけど、映像配信のおかげで、この心の動きを得ることができた。感謝したい。

後日というのも旨味があった。リアルタイム配信もいいものだが、後日ならではの楽しみ方として、メンバー本人たちと一緒にコメントしながら観ることができた。オーディオコメンタリーのような体験だ。

とても居心地が良かった。
いいチームだなぁ、、と思った。

ろむ/自由なみんなを転がしまとめる最年少おねえさん。

ずっとZsaszを応援しながらも、本気で行く末の発展を願い高みを目指すなら、どこかでゲームチェンジが必要だと思っていた。

これが「ゲームチェンジ」になるかわからない。が、アー写・衣裳・CD・MV・メイキングがこれまで年に一度、周年で変わってきたサイクルを考えると、今回の異色なワンマンライブが、流れを変える第一歩になるのかもしれない。7月には、5曲入りEPのリリースも控えている。

難局を乗り越えて3年目、背中を預け合うティムとろむ。


コロナ禍はまだ、明けていない。

けれど間違いなくZsaszは、この期間に多くのものを掴んだし、掴んだものを平時の世の中でどう活かしていくのか、目を向け始めているころだと思う。その段階に進んでいる。

Zsaszを目当てに初めてライブハウスを訪れた日から、色んなアイドルを知った。
デビューも、解散も、不祥事も、脱退も、加入も、いろんな光景を見ていろんな感情を知って、推しも、増えた。
けどやっぱ、帰属意識は圧倒的に、Zsaszなんよなぁ。私にとってZsaszとは、アイドルそのものだ。
本当にしんどい時はZsaszを聴くし、本当に楽しい時も聴きたいのはZsasz。自分が好きになった人には、同じく好きになってほしいとさえ思う。

私はZsaszのオタクである、
と胸を張って言おうと思う。
改めて、みたいな顔をして、
節目の度にこれを言っている。
きっとこれからも言うんだと思う。

名曲と名高いながらもこれまで敢えて触れずに来た、われらが鬱P(※Zsaszのプロデューサー)の「コロナ」を、そろそろ聴こうと思う。
(関係あるのかどうかは知らん)


ライブ映像のプレミア公開は既に終了しているが、メイキング映像は上記リンクより、視聴可能だ。ステージを降りた彼女たちの飾らない素顔も映っている。よければ見てやってほしい。

今回は、"décadence"を観て馳せた想いを中心に、筆を執った。Zsaszそのものの魅力についても、また書ければと思っている。


"décadence"終演の記念撮影。




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