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シネマテークとちくさ正文館

2023年7月28日、名古屋シネマテークが閉館した。
初めて行ったのは高校生の頃でこそから20年以上、たくさん通う時あんまり通わない時の波はありつつ、共にあった。
特に印象深いのは、デレク・ジャーマンの「ウォー・レクイエム」(ペヨトル工房のイベントと同時期くらいでその時のスタッフ集結して見た)、大好きなクリス・マルケルの特集、タル・ベーラの映画すべて(特にニーチェの馬のびゅうびゅう吹き付ける風の音)、去年と今年のシャンタル・アケルマン特集など。
中には寝たのもあるし、もう見たことを忘れてる映画もあるかも。でも基本的に、映画の記憶はシネマテークの記憶と結びついている。シネマテークだから見に行った映画もたくさんある。ロビーに座ってでチラシを見る時間も好きで、いつも嬉しいお出かけだった。

最後の日は原一男監督の「全身小説家」を見た。原監督の映画見るのは初めてで埴谷雄高が出てるということで気になって、行けるのがこの最終上映のタイミングと重なった。前日から完売との話を聞いて仕事を午後休みにしてお昼過ぎに受付したら見たことのない整理券の番号で、もう最後なんだというこの世の終わりみたいな気持ちで上映を待っていた。
それでも、映画はあまりにも面白かった!上映後の原一男のトークも明瞭で素晴らしかった!いつも通り、いい映画を見た高揚感でいっぱい。
上映後は下のつるのりにて友人とビールを飲んで楽しかった。躁状態で家に着いても目がバキバキだった。

閉館翌日のシネマテークにも行ってみた。廊下のポスターも剥がされてピンの穴だらけの壁が剥き出しになっていた。シネマスコーレで上映中の映画のポスターと、平野前支配人の本のポスターだけはまだ貼られていた。

シネマテークに行く前にちくさ正文館書店本店に行った。
ここも7月末閉店で打ちひしがれてた。映画を見る前後本屋に行くのはいつものルーティンだった。時間があって一番通っていた大学生の頃はちくさ正文館、書物の森(伏見→国際センター→今の場所に移転してきた)、ウニタ書房(当時は駅の近くにあった)、ピーカンファッジ(今はもうないレコード屋)を巡回してた。卒業後はだいたいテーク→ちくさ正文館のコースで、時々他のお店も行くのに落ち着いた。
今池は特別な町だった。昔は他の映画館もあった。HUCK FINNやTOKUZOでも時々ライブを見る。シマウマ書房も本山から移転してきた。映画の合間に一人で喫茶店でコーヒーを飲んだり、友達とお酒を飲んだりもした。

ちくさ正文館のふらっと気軽に入れる町の本屋という店構えがいい。置いてある本はすごかった。硬派で軽やかでかっこよかった。欲しい本は絶対置いてるだろうという信頼もあったし、知らない本もたくさん教えてもらった。毎回棚を眺めるのが新鮮で楽しかった。

その日は閉店3日前ということでいつもより混んでいた。2週間前に来た時から更に棚が更新されている。新しい本もあれば、古い本も。ペヨトル工房の本も久しぶりにこんなにたくさん見た。
佐川ちかの選詩集、1920年代モダニズム詩集、ミシェル・レリス「抹消」を買った。レリスのゲームの規則は翻訳が出ると決まったときからお店の壁に告知のコピーが張られていて、いつ出版するのか聞いた気がする。なかなか出なくて、出た後はとりあえず図書館で読んでいつか買おうと何年か眺めていた。古田店長にカバーもかけてもらった。

最後の日も仕事帰りに寄った。お客さんがいっぱいで暑くて汗が引かなかった。みんな本を抱えて、レジに行列もできてた。店員さんもお店も本もエネルギッシュだった。

シネマテークとちくさ正文館、大好きです。ありがとうございました。

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