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“世界最古“のウルトラマラソンに挑む(前編)

8月28日(日)に行われるComrades Marathon(コムレッズマラソン)の様子をお届けする。今回はスタート前日までについて。

1.コムレッズマラソンとは

南アフリカ共和国東部のクワズールー=ナタール州で毎年開かれる89kmのマラソン。1921年から行われており、この距離では世界最古のマラソンである。

州内最大の都市で海側にあるダーバンと内陸にあるピーターマリッツバーグの間を結ぶコースだ。ダーバンからスタートし累積で870m上昇する上りコースと、ピーターマリッツバーグから逆に向かう下りコースが隔年で設定され、今年は下りコースの年である。

ゴールのMoses Mabhida Stadium

2. 出走を決めるまで

1)初めは自信が無かった

半年前までは参加するつもりがなかった。コロナ禍や海外転勤を経験してから、走力が「ダダ下がり」だったからだ。
ここで走力が落ちた理由を言い訳させてほしい。

まず、生活面ではで初めての海外転勤を経験した。

現在、南アフリカ・ケープタウンにある日系企業の海外子会社(かなり小規模)に現地責任者として勤務している。
子会社へは数十年間日本から人を送っておらず、本社とのコミュニケーションはほぼ皆無であった。それ故、現地人マネージャーに任せっぱなしであった会社へのコントロールを日本に戻すのが私のミッションである。

引き継ぎもマニュアルも存在しない。自分がすべきことを一から考えなければならなかった。まさに「暗い森の中をさまよう」感覚であった。不安だった。

生活にも慣れなければならない。時間的にも精神的にも走る余裕がなかった。

加えて、ランニング環境も日本とはかなり違う。

(現地のランニング事情はこちらの動画で紹介している)

日本よりもいいところは、晴れの日が多く気温も湿度も高くないことだ。
その一方、走れる時間帯と場所が制限されている。こちらはお世辞にも治安がいいとは言えないので、日中しか走れない。
また、歩行者よりも車が優先される車社会なので危ない。それに、ケープタウンは岬にあるので風が強い。

つまり、日本のようにいつでもどこでも気軽に走るということができないし、走ったとしても強風で心が挫かれることがある。

2020年7月にエントリーしていた奥武蔵ウルトラマラソンがコロナ禍で中止になって以来、ランニングへの熱量は下がったままだった。
ケープタウンに来てからはマラソンを二つ走ったが、ともにタイムは4時間半だった。自己ベストの3時間59分からはほど遠い。

真剣に走る気持ちが戻ってこなかった。

2)自信が生まれた56km

そんな中、今年4月にツーオーシャンズマラソン(Two Ocenas Marathon)を走った。「世界一美しいマラソン」と称されている。
スポーツイベントが多い現地ではケープタウンマラソンと並んで有名な年中行事の一つなので、一度は参加してみたかった。

ツーオーシャンズマラソン

しかし、これまで走ったマラソンと異なり、コースは二つの峠を含む56km。完走できるか不安だった。

徐々に走行距離を伸ばして、スローペースながら3月には45kmを完走。レース当日も不安だったが、焦る気持ちを抑え続けた結果、Cut-off(制限時間)よりも2時間早い6時間で完走を果たした。

安堵ともに少し自信が生まれた。
これならコムレッズも走り切れる。

この後、5月の一時帰国時に「一人箱根駅伝もどき」を敢行し箱根駅伝1区〜4区の約90kmを、7月にCape Town Festival of Runningにて100km(初100km)を走り、自信を深めながら試行錯誤を繰り返した。

3.大会前日

朝4時半にケープタウンの自宅を出発し、6時のフライトで2時間、約1,300km離れたダーバンに到着。

ケープタウンもダーバンも海沿いに位置する大都市だ。
ケープタウンは南アフリカの南西部に位置し寒流が通っている為、涼しくて湿度が低い。一方、ダーバンは東部に位置し暖流が通っている為、やや気温が高く湿度もある。

空港到着後宿に荷物を置き、早速事前受付に向かった。
毎年2万5千人がこの大会にエントリーするが、今年はコロナ禍の影響からか1万5千人弱。それでも、会場は熱気で溢れていた。

事前受付の会場

先月経験した100kmマラソンの反省を踏まえてそれなりに対策をしてきた。
完走を果たし成長した自分になりたい(なれるだろう)と思う一方、何かしたら理由で「もし完走できなかったら」と思う自分がいる。

昨日から少し緊張している。

スタートまであと15時間。

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