超こわくない話(ギャグ劇団笑)『深夜コンビニの恐怖』

 僕は寺の息子。本当は怖がりだが見えてしまう。

 お寺を継ぎたくないのでフリーターをしている。

 住職のオヤジは、フリーター生活から足を洗わせようと様々な試練を与えてくる。

 このコンビニもその一つ。ここはオヤジの知り合いの店らしい。
 
 この店を選んだ理由は一つ。“幽霊”が出るらしい!

 時給が2000円。高すぎる。
 ここは昔、近くにあった工場が爆発して、マンションの一階から三階部までが焼失したらしい。
 
 部屋にいた人たちは黒焦げ。ここで起こる怪異は、その時に亡くなった住人達の幽霊によるものだという。

 目の前には廃墟と化したマンション。取り壊すのに金がかかるため、いまだに焼け焦げたまま放置されている。
 
 きわめて不気味。

(帰りたい)
 だがオヤジとの戦いの意味合いがある。朝が来るまで逃げることなどできなかった。

「丑三つ時」
 店長が青い顔で告げる。

「夜の丑三つ時を過ぎると、ほとんど客は来ない。そこから怪異が続く。耐えられなくて逃げ出すアルバイトがほとんどだ。もう肝試しさ。ここは恐ろしいコンビニなんだ」
 自分の頭がバーコード化しているハゲた店長は逃げるように帰っていった。

 怪異が起こるのは丑三つ時を過ぎたあたりからだという。

 僕はオヤジに勝つために、その地獄のような時間を乗り切らなければならない。

 22時台の品出しを終える。あとは特にやることはなく客も来ないため、店の奥でエロ本を読んでいてもいいという。
 
 怖くてそれどころではない。

 夜も深まり「問題の時間」が到来した。
 
『キンコン』
 入店のチャイムが鳴る。

「いらっしゃいませ」
 僕は怯えながら、入り口を見た。
 
「キャッキャ」
 明るい笑い声がして“ホッ”とする。 
 制服姿の女子高生の二人組である。冗談を言い合いながら買い物をしている。

『キンコン』
 別の客がやってくる。
 カップルだ。仲良くイートインスペースで食事をしている。イートインが満席となった。

 にぎやかに食事をしている。

(運がよかった) 
 数分おきに買い物客が来たため、怖い思いもしなかった。

 無事に夜が明ける。

「おはよう。異常ない?」
 バーコード頭が出社してくる。

「ええ。怪異は起こりませんでした。むしろイートインスペースを利用する客がたくさんいて心強かったです」
 僕は微笑む。

「イートインスペース?」

「ええ」
「元気なお客さんたちで満席になりました」

「バカ。アレ、全員幽霊なんだ」


 


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