【時短系料理人・12】

俺は、ますます不安な気持ちに苛まれながら、高速道路を飛ばしている。
 
イライラや不安感を、前の軽乗用車に、"煽り運転”することで解消しようとしている。

ざまみろ。弱者め!

俺は、こうした弱いもの虐めは、昔から得意だった。
最高のストレス解消法である。

――暴走族時代から一緒だ。何も変わっていない。

暴走族の頃、ゴーストスポット巡りをした記憶が蘇ってくる。
その時も、この首都高速を通ったはず。
俺は、あの頃、暴走族の下っ端のクソガキだった。
弱小のガキである。

あの時、単車に女を乗せていたはずだ。 
ありゃ、たしかワイフだ。 
俺のことを尻に敷きまくっていたグロ鬼ワイフだ。 

しつこいようだが、俺は、生意気な子供と、鬼ワイフを殺してスープにして容器に入れて、自家用車で運んでいる。
この状況だけは理解してほしい。
 
不安感の要因は、そこにある。
俺も、人間だ。 
こんな不気味なスープと同じ車内にいるのは、気持ち良いものではない。
生まれながらの、殺人鬼なんているものか。

――俺は、前の車への煽り運転を続けている。

(え?)
 ソレは、浮かんで見えた
 俺は、ハンドルを大きく、右に切った。
一瞬、後ろから来たダンプカーにぶつかりそうになった。
『ブップゥ!』
ダンプのクラクション。

俺は、前方の軽乗用車とダンプカーに挟まれて、大事故を起こすところだった。

危ないよ。こっちが、人肉サンドイッチにされるところだ。

でもさ、さっきの何だったんだろう?

浮かんでいた、白いものさ。 

嘘だよな。

若い頃のワイフそっくりの女が、路肩にぼーっと浮かんでいた気がする。

気のせいだろうか?

 


 

 


 

 

 

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