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Lucia di Lucianoの胸がときめく作品たち

とある金曜、久しぶりに仕事を早く切り上げられそうな雰囲気があったので、クローズの時間が早くて普段の見学が難しいギャラリーの展示を選び、足を運んだ。

真っ白な、本当に白亜とでも言えるような一面眩しい白の清潔で美しいギャラリーで、オーナーらしき男性も親切な方で、有意義な見学ができたので、その展示をご紹介しようと思う。



今回のアーティストはLucia di Lucianoという高齢の女性である。
まずはその女性についての紹介をしよう。

※アーティストについて

Lucia di Luciano(1933年-)
Siracusa生まれ、Romaにて美術アカデミーで学び、そこでGiovanni Pizzoと出会い、1959年に結婚。1964年、2人は他のメンバーとともに「Operativo R」を設立し、ゲシュタルト(※下のリンク参照)の視覚的プロセスの分析に基づいた作品を制作。彼女の作品には、白と黒のグリッドが重なり合う効果がしばしば見られ、それがイメージに明らかな多次元性を与えている。また、原色を徐々に取り入れることで、色彩への回帰も見られる。
最近の「Minimal」シリーズや「Untitled」シリーズでは、1960年代の厳格なグリッドからサインを解放し、ハッチングや純粋な色彩のジェスチャーの余地を残している。

説明を読むと小難しい感じがするが、「かわいい」が大好きな日本人女性ならかなり高い確率で好きな作品が多いと思う。それゆえ、まずはあまりときめかなかった初期のグリッドの作品の飾られた地下階から始めるが、後半戦は鼓動が激しくなると思うので、心がときめくまでの準備体操をしっかりして、暫しお待ちください。
それでは、3、2、1、スタート!

※地下階

1960年代の白黒にこだわった幾何学的な作品から1990年頃までのきっちりとした線や正方形で描かれた作品が展示されている。
入り口が上階にあり、一瞬、ピッカピカに磨かれた真っ白な空間に展示されたピンクや水色のカラフルな作品を見ずにはいられないため、一気に気持ちが高ぶり、「うわ~っ、かわいい~!」と思わず大きな声で言ってしまったくらいだが、原点は構造に重点を置いたお堅い"gestalt"にあり、地階の作品を見ることで、私の心もすぐに沈静化した(笑)

Sign Gestalt N.3(訳: ゲシュタル・トサイン) 1967年 
こちらはご主人の作品です。
(左)Articolazione strutturale discontinua(訳: 不連続な構造的アーティキュレーション) 1962年
(右)Struttura ritmica N.2(訳: リズミカルな構造) 1964年
リズミカルな構造の近景
よく見ると、上部に数字がうっすらと書いてあるのが見えます。
私には、小学校1年のノートのマス目に見えてしまう💦
Cromo struttura(訳: クロームの構造) 1978年
色が穏やかだからよいけれど、ずっと見ていると目がちかちかして立ち眩みしそうな作品。
(左から)Variazioni cromatiche(3)(1)(訳: クロマティック・バリエーション) 1982年
ピチカート・ファイブの世界っぽくて、この辺になると個人的にはかなり好きです。ピチカート・ファイブの曲は、天気の良い週末、ダンスのレッスンから帰宅してシャワーを浴びた後、Sportifyで聴きながら、身軽になった体で踊ったりしてみる(笑)
Cromo struttura N.27(訳: クロームの構造) 1990年
先日投稿したGianluigi Colin氏の作品にも通づるものがある気がする。
Variazione 7(訳: ヴァリエーション 7) 1999年
Senza titolo(訳: 無題) 2023年
上に飾られたカラフルな作品たちの予告かな、と思われる作品。


※階段に飾られていた作品

地下階と地上階の中間にあるので、お堅いにも可愛いにも属さない、表現の難しい作品なのかと思う。

Mnimal 2023年


※地上階

まずは地上階の遠景を載せておこう。小雨の降るどんより曇った日だったので、時折陽が差すと真っ白さが際立つのだが、雲に覆われている間にはこのように室内もグレーがかってしまった。

遠景
シリーズ「Minimal(2023年)」の遠景
ほらかわいい!どうだっ!
胸がときめいてきましたよね?
こんな柄のノートやワンピースやトートバッグなんかがあると、値段にもよるけれど、すぐに買いたい衝動に襲われる私😃心臓バックバク😆
私には、この作品は、コブシの花を見上げながらお花見しているイメージです。
青空と大地と土埃とお花、というイメージ。
本当は全然違うかもしれないけれど。。。
これこれこれ、一番のお気に入りの三連作!
絶妙な色合いと配置と大きさ、う~ん、たまらなく可愛いっ!!!
幾らかわからないけれど、200ユーロくらいなら即買いすると思う😂
ここから、シリーズ「Senza titolo-無題-(2023年)」です。
右は、東欧のライラック畑のイメージ、左は銀世界、かな。
これらは右から、私にとっては、、、
子供の頃、初夏に行った札幌のプールの水の色
5月の淡い青空
雪虫の降りてくる日の朝
のイメージだな。
いずれにせよ、私たち一人一人の中に刻み込まれた郷愁のワンシーンを思い起こさせてくれる気がするのですが、どうでしょうね。

ちなみに、雪虫をご存知のない方が多数だと思うが、この虫は雪が降る前日か当日に空から降ってき、地上や車のフロントガラスに着陸してほどなくして死んでしまう、青い目をし、白い綿を羽に付けた、か弱いアブラムシ科の虫だ。「冬の訪れを告げる虫」として、北海道ではなじみ深い虫で、私が唯一、可愛いと思って触ることのできる虫なので、Wikipediaのリンクを貼っておこう。

また脱線してしまったが、上の3連作が「Senza titolo(無題)」の最後の作品で、下が最後のMinimalシリーズの作品である。

彼女にとって重要なのは、絵画表面のダイナミズムであり、絵画空間における記号と線のリズミカルな連続であり、背景と記号のコントラストなのだそうだ。

この展示会では、このアーティストの、当初は幾何学的で白黒だった空間において遠ざけられていた色彩が、おずおずと、しかし着実に自己主張をし始め、彼女のすでに豊かなイメージ・記号の配列を視覚的に多様化・増幅させていき、現在のふんわり軽やかでリズミカルな作品へと変貌を遂げるまでの歴史を十二分に堪能させてもらえた。

華やかででキラキラした青春時代、青年時代を経て、堅苦しい中年・老後を送る人もいれば、堅苦しく抑圧された子供・青春時代を経て、次第に自分の殻を取り除き、活き活きとした老後を送る人もいる。
彼女の作品には、そんな幾多の人生の歴史がクロノロジカルに、またはリバースして描かれているように思えてならなかった。

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