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新規事業開発室・社内起業を考察する③~事業の"失敗"とはなんなのか~

こんにちは!
私は株式会社A(エース) で執行役員を務めています。キャリアは偶然にも、10年間ずっと新規事業開発で、大きな企業から、起業Day1の企業まで、幅広い企業体で新規事業を行ってきました。

前回の投稿では「良い事業をどのように見つけていくか」について考察しました。

今回は「事業の"失敗"とはなんなのか」という、少しセンシティブなテーマを考察していきたいと思います。

そもそも失敗とはなんなのか

「事業の失敗」と聞いたときに、まず頭の中に思い浮かぶのは「赤字」「キャッシュが尽きる」だと思います。

資金調達の見込みもなく、キャッシュが尽きる状況に陥るのは、企業としては絶命を意味するので、失敗と捉えられるかもしれません。

しかし、これは起業という挑戦の意義そのものが失敗を意味しているわけではありません。なぜなら、挑戦したことによって、何ものにも代えがたい経験をしているからです。

実際に、起業経験がある人の方が、VCから出資を受けやすいというレポートも存在しています。

そもそも、新規事業の成功確率は低いので、事業の「赤字」的な失敗は、失敗ではなくて、成功の母です。

ただし、これが社内での新規事業の場合、事業が成り立たなくなったあとの会社の対応によって「失敗」となりえます。以下は代表的な例です。

  1. 失敗の責任の所在を「経営チーム」以外にしてしまう

  2. 新規事業チームのネクストバッターボックスを決めていない

  3. 新規事業チームが納得感を得られていない状態で、事業を没収してしまう

これらによって、新事業チームの退職が発生したり、モチベーションを奪ってしまったり、新規事業を生み出すカルチャーが損なわれたりすると「失敗」となりえます。では、一つずつ、紐解いていきましょう。

1.失敗の責任の所在を「経営チーム」以外にしてしまう

事業の失敗の原因は、いついかなるときでも「経営チーム」にあります

新規事業の責任者や、新規事業のコンサルティングの人に押し付けるなんて、言語道断です。

そもそも、新規事業の責任者に全てを任せることも間違っています。この意味は、新規事業の責任者に「裁量」を持たせるなということではありません。新規事業の責任者に「丸投げ」をしてしまうことです。

丸投げをしてしまう理由としては、主に以下のような要因があります。

①自分がその領域のことを分かっていない・分かろうとしていない
②そもそも新規事業に対して、必要性や熱意をもっていない
③日ごろから健全な管理体制が構築されていない

そして、原因を「経営チーム」以外にしてしまうと、新規事業を生むカルチャーは徐々に萎んでいきます。

なぜなら「失敗したら何かを失う」という状況は、そもそも新規事業に挑戦する人を生むのには不健康です。

新規事業の責任者は2パターンあります。「ボトムアップ型」「トップダウン型」です。

ボトムアップ型は、メンバーが自ら発案して、事業の責任者に名乗り出るバターンです。トップダウン型は、経営チームが適切なメンバーを指名するパターンです。

「失敗にリスクが伴う」状況にしてしまうと、ボトムアップ型の場合は「自分で起業した方が良いか」となります。

そしてトップダウン型の場合は「自分はこのままいけば出世コースなのに、新規事業というリスクをとる必要があるのか」となります。

責任者に丸投げするのではなく、全社で知恵を絞りあって、責任者には健全な裁量を与えて、進行していく必要があると考えます。

2.新規事業チームのネクストバッターボックスを決めていない

これもとても重要です。前述した通り、新規事業チームに失敗の責任はありません。

とは言えど、新規事業チームは責任を感じます。会社のお金を溶かしてしまった、自分の出世の道が遠くなってしまった、チームメンバーと離れてしまう、他事業の人に良い目で見られない、自分の力を信じられない・・・などの負の感情を抱えます。

私も経験がありますが、事業の失敗は残酷です。物理的に仕事・メンバーが無くなるだけでなく、自尊心を大きく失います

これは本当に、当事者にしかわからない、筆舌に尽くしがたい感情です。どんなに上司が「そんなことないよ」と言っても、本人の気持ちは晴れることはありません。

その上に、ネクストバッターボックスが決まっていないと「自分たちは会社の荷物なのではないか」という妄想を抱かせてしまいます。

これを払拭するには、4つのポイントがあると思っています。

1.評価制度
2.会社として、今回の挑戦の意義を心から称える
3.ネクストバッターボックスで成功体験を積めるようにする
4.また必ず挑戦させる

1の「評価制度」については「プロセスで評価するのか」「成果で評価するのか」の企業体質で変わります。

成果で評価する場合は、新規事業メンバーの評価というものが難しくなります。この場合は、必ず新規事業メンバーに、評価制度を理解してもらった上で挑戦してもらうことが重要です。

プロセスで評価する場合は、事業がいかなる結果になろうが、評価をしてあげられます。ただし「事業が失敗しても、評価が上がるからラッキー」的な風潮にしてしまうと、新規事業が「既存事業からの逃げ場」になる可能性があります。

2の「会社として、今回の挑戦の意義を心から称える」については、まさに言葉通りです。

ここは、Heart to Heartの部分になります。今回の挑戦が、会社にとってどんなに価値があったことか。心からの感謝と、心からの賛辞を、何度も何度も経営チームから伝えることが大切です。

新規事業が失敗したあとに、会社に残るか否かは、その会社が好きかどうかで決まります。

3の「ネクストバッターボックスで成功体験を積めるようにする」も、言葉通りです。そもそも「次のバッターボックスを探しているから、少し待ってね・・・」なんて状況はご法度です。

会社には、常にあなたを必要としている場所があること。そして、本人の自尊心は、本人が成功体験を積み上げていくことが重要なので、その成功体験を経営チームが本気でサポートして必要があります。(しかし、割と新規事業を経験した人は、自分の与えられたポジションで直ぐに成功体験を生み出すイメージがあります)

4の「また必ず挑戦させる」についても、言葉通りです。必ず、何度でも、バッターボックスに立たせましょう。

1度でも失敗を経験した事業家は、本当にタフです。失敗を切り抜けようと試行錯誤することは、何にも代えがたい経験です。

3.新規事業チームが納得感を得られていない状態で、事業を没収してしまう

ここに関しては「事業計画」「撤退計画」を責任者に予め作成してもらうことが必要です。そして重要なのは、その計画を責任者自身で納得しているかです。

とは言えど、前述した通り、丸投げはNGです。健全な裁量を与えた上で、経営チームも一丸となって作成する必要があります。

事業計画や撤退計画の作り方については、トピックとしてかなり難題なので、また改めて別の記事で深掘りしようと思います。

さて、本日はこの辺にします!よかったら、ぜひフォローをお願いいたします。そして、A(エース)では、新規事業開発・SNSマーケティング・SaaS・D2C開発と、全方位的に人材を募集しています。もしご興味がございましたら、気軽にDMしてください!

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