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昭和の18歳が懐かしくなった話です。

18歳。

子供の頃に見上げていた18歳を思い出してみる。
土曜日の23時に見ていたテレビ番組「ねるとん紅鯨団」に出てくる18歳は、高校を卒業して、短大生や家事手伝いになり、結婚相手を探していた年齢の女性たちだ。「金八先生」に出てくる15歳ですら、社会人の匂いを振りまいていた。だから18歳といえば、とっくに大人になっていて、20歳の成人というのは、あくまで形式上の大人を儀礼として行うという時代。


しかしながら、今の40代半ばの私が見下ろしている18歳というのは、果たして「何歳」なのだろうか。隔世の感がある、という言葉は、こういう時に使うのだろう。4月1日、当社に高校を出たての新卒生が入社してくれたのだ。

私とは27歳離れているという。アレコレと雑談をしようと試みるが、なかなか難しい。そんな中、こんなことを聞いてみた。「好きな音楽、というか、普段聞いている音楽はどんなものなの?」

いわゆるJ-POPは、時代によって移り変わってきた。演歌から歌謡曲、バンドブーム、ビジュアル系バンド、ピコピコ音楽、沖縄ダンス、宇多田ヒカルだとかR&Bだとか、大人数のアイドルだとか。

我々の世代であれば、その文化の進化を語る事ができるだろう。それは、時代の景気だとか、世界とのかかわり方だとか、日本社会の変容だとかを映し出していたわけだし、我々はそのブームの在り方によって、日本人の文化がどこに向かっているか、どう変わっていくかを肌で感じていたのだ。

僕は、音楽というものについて、それ程深い知見をもっているわけではないが、テープやCDや、MDといった記録媒体を使って、それなりに音楽にふれてきたし、自分のマイテープ、マイMDといったものを編集する楽しさを味わっていた。(それにしてもMDの時代に、ボタンを何度もおしながらカタカナを探し当てて、曲名を打ち込んでいた時代って懐かしいですね)

私が中高生の頃と言えば、まずドラマ主題歌である。そしてCMソング、そして歌番組だ。このテレビの圧倒的な力によって世の中に知れ渡り、大ブームが巻き起こっていく。そしてタワーレコードやTSUTAYAにいって、CDジャケットでイメージを掴んだり、店員さんの手書きのレコメンドによって、アーティストを知っていく。それが文化の発信基地であり、音楽への触れ方であった。ああ、懐かしい。


「やっぱり、今の若い人たちは、ティックトックですかね」と、目の前の18歳の男の子は、落ち着いた声で教えてくれた。自分も若い人たちの一員なのだが、それを達観するような視点で淡々と話すところが、この子の面白さだ。「じゃあさ、音楽っていうのは、どうやってブームというか流行っていくの?」と聞くと、これもティックトックなのだという。

例えば最近は、「猫ミーム」というものがバズっているらしく、猫のかわいい仕草に、テロップを入れたり画像を編集したり音楽を入れて、ちょっとおもしろいショート動画をつくるのが流行っているらしい。そうすると、その動画で使用されている音楽が、みんなの耳に残る。これがインフルエンサーによって拡大され、うまくいけば芸能人やタレントを経由し、さらにテレビでも取り上げられる、という流れ。そういえば「キュンです」みたいな音楽も、そういう流れだろうし、考えてみればもうテレビが流行の発信基地ではないのだから、そうなのかもしれない。ちなみにこの男の子が好きなアーティストは、僕の知らない韓国アイドルであり、やはり知った切っ掛けは、ティックトックだったという。


ここで僕は、急に目の前が、一気に遠くなっていく感覚を感じる。隔世の感である。そうか、そうなのだ。この子たちの文化の発信は、「ガチャ」なのだ。偶発性が主流であって、そこにはブームの仕掛け人というか、大きな潮流というものがないらしいのだ。

テレビが発信基地という時代は、大人の仕掛けによってブームが生まれるという「胴」と「子」がある体制だった。僕たちは、人工的な波のプールにぷかぷか浮かんでいて、時々やってくるテレビを使ったブームの波を、きゃあきゃあ言いながら、みんなで乗りこなすというのが、あの時代だった。そこには、文化の流れや、系列や、背景があったように思う。

ところが今は、世の中から本当にバズりが生まれているらしい。なにか仕掛け人があるわけではなく、例えば過去の歌であっても、ラッツ&スターのめ組の人なんかも、ダンスの面白さで急にバズったりする。そして、また急に冷めていくようだが。そこにも何か法則性や、彼らの中の「流れ」があるんだろうが、それを僕たち40代半ばが掴むというのは、マジでガチで不可能といえるだろう。

いやー、、、どうですか、これは。もう若者が体感するカルチャーの流れを、僕たちは絶対に追えないんだという強い自覚。おそらくユーチューバーーの進化にも、それなりに「流れ」があるんでしょうな。僕たちのテープやCDやMDといった媒体の変化は、若い人たちにとっては、ユーチューブ、インスタ、ティックトックといったSNS媒体の変化なのでしょうな。トレンディードラマ俳優が、インフルエンサーなのでしょうな。一応、そうやってイメージができないわけではないんでしょうけどな。


新人研修終わった後で、「猫ミーム」みてみたけど、マジでわかりませんでした。OMG。もう無理ですね。僕には、これが生まれた「流れ」が追えてないですし。音楽文化も、2~3年単位でブームが入れ替わっていた時間軸なのに、2~3か月で入れ替わっていくだなんて、もう怖すぎるんですけど。下手すりゃ2~3日なんじゃないですかね。そしてその音楽の流行には、世の中を反映するというカルチャーが無い。これが怖いですね。なんか急に怖くなってきたんですよ。


そんなことを思っていた中で、最後に1つ発見が。僕が普段お話している60-70代の経営層と僕は、やはり最大で28歳離れていました。そうか、、、「ザ・中間管理職」って感じのところにいるんですねえ。だから、毎日毎日しんどいのか。僕が18歳の子に感じるような遠さを、彼らの世代も僕に感じているんですねえ。正直、同じ言語で話していると思えないぐらい遠い時があるんだけど、それは当たり前なんだろうな。

そりゃそうか。40代半ばだもんな。日本人の平均年齢のど真ん中ぐらいにいるらしい。18歳と73歳の間にいる45歳です。なんか色々ぐるぐる考えたんですが、もう「ちょっと待った!」も「大どんでん返し」もない。開き直るしかない気がします。そういう場所にいるんですよ。ただ、そういう節目の年代にいるんです。そしてそれもいつか過ぎ去って、50-60代になっていくのです。

もう時代に追われない、時代にまかせていく、そして未来を創造していきましょう。では最後は、往年の名ゼリフで。同年代の人は、ポーズも頭で想像してくださいね。せーの、「時代を先どるニューパワー!」。古いものは新しいですね。おあとがよろしいようで。

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