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きょん。

人間の都合で日本に連れてこられた生物が、レジャーランドから脱走して野生化し、そこで大増殖するニュースって、気になりませんか。

今回の千葉南部で大増殖している、小型のシカの一種「きょん」。勝浦にあったレジャーランドから脱出してから、今や7万匹に達するという。

7万匹である。かの天下分け目の合戦「関ケ原の戦い」ですら、東軍9万、西軍8万の兵力で戦ったのだ。きょん7万匹の兵力が結束したら、人類も近代兵器を投入しなければ太刀打ちできないだろう。千葉県南部は、きょんによって制圧されつつあるといっても過言ではない。過言だけど。

なんで増えたかといったら、それは天敵がいないからだ。長い年月をかけてつくられた千葉県南部の生態系のバランスの中に、きょんはいない。きょんの天敵となる熊も虎も狼もいない。先生がいない中高生だらけの学校みたいなものである。そりゃ、やることは一つしか無かろう。

しかも、このきょん。千葉県南部だけではなく、北部の柏市にも出現し始めているという。すごい。この勢いで行くと、国道16号線沿いに茨城、埼玉、八王子へと勢力を拡大するかもしれない。グーグルアースで緑色の場所を見てみると、関東地方には、まだまだたくさんの魅力的な森林があるのだ。

別にきょんは、この関東地方の地図をみているわけじゃない。だから、よし!まだ奥多摩に誰もいないから、ちょっとそっちの方で拠点広げてみるか、みたいなラーメンチェーン店の発想で動いているわけじゃない。ただただ、ごはんを追っているうちに、居心地のよい場所をみつけて、それが結果的に県境をまたいでいく可能性があるという話だ。きょんに罪もないし、悪意も無い。

ただこれが、様々な問題を引き起こしているから問題だ。農作物を食い荒らすだけでなく、道路や鉄道にも出て事故にもなっており、鳴き声も独特で気味が悪いという。見た目はかわいらしいが、やはり外来種。日本の土壌に馴染みがないのだ。すばしっこいから罠にもかからないし、猟銃でも仕留めるのが大変、捕獲して始末する時にも鳴き声がすごくて、精神的にキツイという。

ただ、このきょんは、台湾では高級肉として扱われるから、処理ではなくジビエとして生かす考えもあるが、それはそれで問題だという。

なぜかということ「駆除」と逆行するからだ。食肉として「利用」するとなると、それはそれで千葉県南部に、金目当てのニンゲンが押し寄せて、乱獲したり、無法地帯になりかねない。あくまで今は害獣として駆除の方向になっていて、それを共存、生産、利用となると、また捉え方が全く変わってしまうのだという。

なんだろうか、これは。見世物として、千葉県南部に勝手に連れてこられたきょん。そこから決死の脱出劇なのか、偶然なのか、千葉県の山々に放たれた数匹の先祖きょん。例えばこれが5匹だったとしたら、その5匹がしっかり生き抜いて、今や7万匹にまで必死に拡大したのだ。命の連鎖だ。

これは、いわば、人質に取られた人間が脱走して、その土地で生き抜いて繁栄し、ひとつの国を作ったのと同じではないか。そしたら元々の征服者は、その勢力を気味悪がって、侵略して制圧するか、捕まえて利用するか考えている構図と同じである。

ニンゲンって。。本当に勝手な生き物であり、場当たり的で馬鹿な生き物だとつくづく思う。その時の短期的な営利によって、個人個人が動いて、その中のちょっとした「バランスの悪さ」が拡大して、大きな大きな憎悪に拡大してしまうのだ。

共存共栄って、そんなに難しい事なんすかね。たしかに生物界は、弱肉強食の世界かもしれないけど。でも、他の生物はその弱肉強食であっても、ちゃんと限界があって、最後はバランスが保たれている。人間はもう力をもちすぎているのだから、いい加減、この競争社会、安直な資本主義から脱却して、共存共栄を目指すべきだ。だからといって、社会主義は結局全体主義になるから、そうじゃなくて、緩やかな競争の元に成り立つ、新たな政治システムである。

まあ、色々と書きましたが、、、このバランスを崩している人間が、天災や人災によって苦しめられているのは、因果応報としかいいようがないですよね。結局、地球先生によって、我々も統制され、戒められているのです。大雨の金曜日、外に出るのをためらいながら、そんなことを思ったのでした。


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