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ユーは、そばを食べる。

「ユアミール・イズ・レディー」という声が聞こえる。年配の方の声だ。ぶっきらぼうと顔に書いてあるかのような、立ち食いそば屋さんの店主とおぼしきオジサン。店内を軽く見渡して、もう一度同じ言葉を繰り返している。

なるほど、ここは東京駅が近い。チェーン店のお蕎麦屋さんといえども心得たもので、外国人観光客に対して英語で接している。自動販売機でとまどう金髪白人の観光客に対しても、「ソバヌードル?ウドンヌードル?」と発音こそカタカナであるが、堂々たるものだ。

だが考えてみると、立ち食い蕎麦屋の注文の仕方というのは、外国人にはハードルが高い。あったかい、つめたい、うどん、そばの組み合わせを自分で考えなくてはならない。しかもその選択は、自動販売機の食券には反映されていない。うどんヌードルが食べたくても、そんな食券がないのだ。

こう見えても学生時代、本格的に英語を学んでいた私は、一応助け舟を出してみる。ウドン o rソバ、このチケットをショーしながら、ユー、カウンターでセイしてください。このマシーンでは、ウィズどんぶりがインポータント。かつ丼、親子丼、カレー丼。唐揚げ丼は、ソイソースをマリネしたジャパニーズチキン。マイ・レコメンデーションですよ。

まあ、本当はもうちょっと英語らしく話せるけど、、頭の中はこんな感じ。英語のコツは、英語を話そうとしない事だ。なんとなくでいい。とにかく、この食券機では、うどんかそばかを指定する必要はないことを知らせねばならぬ。でもこれ難しいよな。きっと遠くない将来で、外国人にも分かりやすいような食券システムになるだろう。

新橋の博多天神でも、隣に座っていた観光客に、とんこつヌードルの説明をしたな。カウンターにある高菜を不思議そうに見てたから、これは、フリーチャージですよ。ジャパニーズピクルスだと言ってやった。エスニックで、アジアンで、ディスティンクト(独特)なフレイバーだぜ。そしてベリーベリースパイシー。マイ・レコメンデーションですよ。

いつも話してて思うが、外国人旅行者のみなさんは、静かで大人しく、礼儀正しい。まあ、やはりそうか。ツーリストっていうのは、基本的には大人しいものだ。知らない家に上がり込んだのと同じなのだから。そして、何より英語が、英語らしく聞こえない。いかに日本でテープで聞いている英語が嘘英語というか、教科書の英語かということだ。訛りがあって当然なのだ。でも聞いているうちに、単語が拾えるようになるから不思議だ。

僕は、浅草の雷門で友達と待ち合わせていたら、5組ぐらいの観光客からカメラで撮ってくれと言われたことがあるくらい、「悪い奴には見えない」風貌をしているので、これからもツーリストの皆さんには優しく接したいと思う。そして、やっぱり自らも外国へ行きたい。勝手の分からない場所で、とまどう、あの感覚。コロナで忘れてたけど、また外国に行きたいなって思い始めている。

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