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黄昏によせて 3篇 (詩のようなもの)


 1

だれなの?と、
見えない人を呼んでみる。
風が代わりに返事をくれて、
黄昏の街に
消えてゆく影。


 2

太陽が吐き出した柚子色の光の糸
クモの巣みたいに世界を絡め、

西の空は怒りに燃える。

呑まれてく夜のワニに。
もう命は風前の灯火か。

飴細工の星々、
散らかっていく、
神話のように。


 3

黄昏が止んだ。
風が病んだ。

木々の梢の葉は揺れず、
ただ腐って地に落ちる。

黄昏が止んだ。
風が病んだ。

梅の枝のつぼみは萎み、
かすかな香りも漂わず。

春が転がり、
サイコロの目は冬に戻る。

遠吠えする、一頭の蝶。


だれなの?

応える声はもうない。


街は、


黄昏を無くし、風の声もやわく、

街灯の明かりに真昼の熱を広げて、


夜のワニさえも、

呑み込んでいく。

オロチのように…。




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