芥川ノブヒロ

夢の中での呼吸の仕方 How to breathe in (your) dream 記…

芥川ノブヒロ

夢の中での呼吸の仕方 How to breathe in (your) dream 記憶と記録の対話構造 Dialogue structure between memory and chronicle 消えゆく夢は生命の庭へ流れ着く Dream that died …

最近の記事

映画 胸騒ぎ 〜道徳的社会の敗北、善良である事の罪と罰〜

彼らはどこで引き返すべきだったのか。 どこまでだったら逃げ切る事が出来たのか。 生死を分ける分水嶺はどこだったのか。 見終わった瞬間、肺に真っ黒な汚物が溜まったような胸騒ぎを感じながら、私の頭は混乱しながらも、あの家族がどうしたら助かったのか考えざるを得なかった。 私は映画に感情移入するタイプの人間ではないのだが、今回は他人事とは思えなかったのだ。 人の親切を無下にするような人間になる位なら、(例え相手がシリアルキラーだとしても•••)死んだ方がマシだと。 そこまで人間

    • 深夜特急から学ぶ、"旅"と"旅行"の違いについてのいくつかの考察

      プロローグ 私が初めて深夜特急を読んだのは、20代前半の頃である。 大学在学中に就活をする気になれず、漠然と卒業した後は海外に行ってみようと思っていた私は、どうせならアメリカやロンドンなどのメジャーな場所では無い場所を探していました。 いくつかの情報の中で私は北欧・デンマークに目をつけ、100万円を貯めて旅立ったのです。 私はヘルシンガーの街にある、二食昼寝付きのフォルケホイスコーレに入り、一年弱程暮らしました。 その図書館で私は、先人が置いていった深夜特急に出会った

      • 生命はめぐる/星の降った日

        あの日からの夜、真暗な闇の中で、 様々な想いを巡らせながら、 沢山の人が、やはり夜空を見上げたのだろう。 津波の映像も、原発事故も、人々の叫び声も、全てが重くのしかかってくる。 のに、テレビ画面から目が離せない。 私はあの日以降、音楽が作れなくなった。 正確に言うと、作る気がおきなくなった。 私がそれまでに作ってきた音楽がいかに薄っぺらで覚悟のないものだったか、思い知らされた気がした。 私は別にプロのミュージシャンでもないし、積極的に音楽活動をしている訳でもない。私は

        • モネ 連作の情景展に寄せて

          誰もいない美術館が好きだ。 あのピーンとして張り詰めた緊張感がたまらない。 そこには特に有名な絵が飾ってなくたっていい。 どうせ絵の良し悪しなんか分かりゃしないのだから。 しかし、“絵”を“額”に入れて構成された部屋には、殺気めいて、甘い汁で虫を誘惑して捕獲するようなエロスが溢れてる気がする。 その中で絵と対峙する時、私と画家との緊張はピークを迎える。 それはもう互いが食うか食われるかの緊張感で、人知れずお互いのキョリというか、 “間”を取り合ってなされる攻防は、トイ

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          『ハウルの動く城』の魔法論

          ハウルの動く城が公開された当初、好調な興行収入とは裏腹に、内容については批判的な声も目立っていました。 やれ、キムタクの声がキムタクにしか聞こえないだの、賠償千恵子さんが寅さんを連想させて、いつ「おにいちゃん!」と言い出すか気になって集中出来なかっただの、主役2人に対する評価はイマイチだったように思えます。 話の内容はより直接的に、意味が分からない、途中からストーリーが破綻している等、辛辣なものが多く、今なお拭い切れていないようです。 私自身はディズニーのファンタジアを見

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          『千と千尋の神隠し』を読みほどく

          『僕は子供達に「大丈夫、あなたはちゃんとやっていける」と本気で伝えたくて、この映画を作ったつもりです』 スタジオジブリ2001年夏公開、「千と千尋の神隠し」の完成披露インタビューで、宮崎駿監督はそう締めくくりました。 この映画の主人公・千尋は、かつてのジブリヒロインのような、美少女でも類まれな才能がある訳でもない普通の少女です。 いや、普通どころか正直今までで一番可愛くない。笑 映画冒頭から、ぶちゃむくれの顔。 親への反抗的な態度は、転校先への不安の裏返しもあるが、そ

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