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新訳 枕草子4「正月一日は」2

 前回までのお話はこちらからお願いします。

 地方官である国守・受領の任命が行われる除目の頃になると、宮中一体が大変趣深いものになる。雪が降ってとても凍っているところを申文を持って歩き回る四位、五位が新人らしく気持ち良さそうな様子は大変頼もしい。また、白髪混じりの老いた者などが人に取り次ぎを頼み、女房らの局と呼ばれる仕切り部屋に寄って、自分の身分の素晴らしさのわけなどを独りよがりに話して聞かせるのを若い者たちはその真似をして笑っているが、どうして当の本人はそのことを知らないのだろうか。「天皇に良いように申し上げてください。皇后さまや中宮さまにも。」などと言っても、昇進が叶えばとても良いことで、叶わなかったときはそれこそ哀しい気分でしょうね。
 3月3日は上巳の節句で、宮中では曲水の宴が催される。麗らかにのどかに光が照っている。桃の花が咲き始める。柳なども素敵なことは言うまでもない。その柳も、まだ芽が広がっていない様子も情緒深い。芽が広がりきっているものは、逆に不愉快に思われる。
 美しく咲いている桜。その桜の長く伸びた枝を折って大きな壺に挿すのは、それは本当に情緒深い。
 桜がさねの直衣というのは、表の生地が白で裏の生地が紫や赤の生地。白い直衣に仄かに赤や紫が見えるようおしゃれに、桜がさねの直衣を着て、お客様やご兄弟など桜の下に座っていろいろとおしゃべりをしている様子は、美しく見受けられる。

〜続く〜

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