仁見

30代に入り、自分のアイデンティティをより深く見つめることが多くなり、遅ばせながら生き…

仁見

30代に入り、自分のアイデンティティをより深く見つめることが多くなり、遅ばせながら生きることを真剣に考え始めました。 このnoteでは、自身の文学論、読書記録、文学作品を中心に投稿させていただく予定です。 ぜひフォローをお願いします。

マガジン

  • 新訳 枕草子

    枕草子を、古文が苦手だった方にも分かりやすく、現代語訳をしています。

  • 《小説》薔薇の慰め

    自作の小説『薔薇の慰め』を連載の形にし、マガジンでまとめたものです。ぜひご覧ください。

  • 香水小説

    香水の香りからインスピレーションを受け、それを掌編小説としてまとめています。 香りは人々の記憶を呼び覚ます。 こんな感じ方があるんだ!と楽しんでいただけると嬉しいです。

最近の記事

新訳 枕草子4「正月一日は」2

 前回までのお話はこちらからお願いします。  地方官である国守・受領の任命が行われる除目の頃になると、宮中一体が大変趣深いものになる。雪が降ってとても凍っているところを申文を持って歩き回る四位、五位が新人らしく気持ち良さそうな様子は大変頼もしい。また、白髪混じりの老いた者などが人に取り次ぎを頼み、女房らの局と呼ばれる仕切り部屋に寄って、自分の身分の素晴らしさのわけなどを独りよがりに話して聞かせるのを若い者たちはその真似をして笑っているが、どうして当の本人はそのことを知らない

    • たった1度の公演のために小劇団を立ち上げた話。それはあまりにも滅茶苦茶だった1

      劇団立ち上げに至るまで  私が大学4年生の時の話です。大学1年生の時まで演劇サークルに所属していたものの、1公演参加するごとにのにかかる12000円や年会費といった負担は苦学生だった私には厳しく、また周囲と馴染めなかったり、先輩たちが作る台本の稚拙さに辟易として、辞めてしまいました。  それでも、自分の脚本で演劇をしたい、演出をしたい、という思いは諦められないまま大学4年生の10月を迎えました。  私は、思い切りの強い方です。私以外に演劇サークルから足が遠のいていた友人2人と

      • 受験指導の際のモットー

         受験、と一言で申しましても、それを受ける生徒は様々です。ですが、「この学校に入りたい」という気持ちは皆一様です。これまで、教科においても、メンタルの面においても受験生と関わることは多くありました。  時に、厳しく接することもあります。私は「分かりました」だとか、「大丈夫です」と安直に言われると、自分と生徒との間に信頼関係は築けていないのだな、と思うようにしています。受験において決して「大丈夫」ということは存在しないし、答えを聞いただけで「分かりました」という場合は、その問題

        • 《小中学生向け》zoomでの家庭教師

          高等学校での教員歴5年の仁見です。 教科は国語ですが、様々に興味があるので、どの科目も指導可能です。 塾経験は2年、家庭教師歴は1年あります。 指導のモットーは生徒さまの話をよく聞き、それぞれの生徒さまにあった指導をすることです。 これまで、中学受験、高校受験、大学受験の生徒の指導歴、不登校、自閉症、発達障害等の生徒さまへの指導経験もございます。 教科は5科目指導可能です。金曜日の19時以降以外いつでも可能です。 まずは、お子様の学習状況のご相談や、体験授業を承ります。

        新訳 枕草子4「正月一日は」2

        • たった1度の公演のために小劇団を立ち上げた話。それはあまりにも滅茶苦茶だった1

        • 受験指導の際のモットー

        • 《小中学生向け》zoomでの家庭教師

        マガジン

        • 新訳 枕草子
          4本
        • 《小説》薔薇の慰め
          3本
        • 香水小説
          2本

        記事

          《小説》薔薇の慰め 3

          ↑ 前回話はこちらからお願いします。  外の眩しさにローズ翁は、葉先から茎に至るまで太陽光線の持つ優しさに触れたようように感じ、外の幸せをかみしめていた。男は荒い息を漏らしながら、ローズ翁たちを車のトランクの中に入れバタンと閉めてしまった。花として、こんな扱いを受けたことは今までに一度もなかったローズ翁は戸惑いを隠せなかった。光と空気が遮断された中で、車の振動が花たちの不安を助長させた。 「何のつもりなの、これならお店にいたほうが百倍マシよ」 「どうせ枯れてしまう運命な

          《小説》薔薇の慰め 3

          富山県 高志の国文学館 川端康成展へ行って来ました

           先週までの大雪が嘘のように晴れ渡る中、ドライブで富山県へ。立山連峰が美しい。  富山県富山市にある高志の国文学館へ行ってきました。 貴重な原稿や書簡が見れる文学者の展示を見に行くのが好きな私はわくわく。  川端康成の筆跡は、読めませんでした。すごくごにょごにょと丸めの癖の、強い筆跡で、それも細かく書かれているので、時折読める部分がある程度。  最初に驚かされたのは、「十六歳の日記」の数ページ。小さめの、当時の日記帳にごにょごにょ文字でぎっしりと。これを解読される文学者や史

          富山県 高志の国文学館 川端康成展へ行って来ました

          《掌編》虚空と邂逅 BYREDO ビブリオテークに寄せて

           それは、鎮魂歌というにはあまりにも響きが強く、魂の復活を願っているかのような音色だった。バイプオルガンの響きが時空を超え、彼の従兄弟の生を確かめながら、一音ずつの音を放つ。  第二次世界大戦中、音楽学生だった鬼頭恭一の楽譜が戦火と記憶の靄の中から拾い出され、恭一青年が従兄弟を失った悲しみ、そして戦時中の国民への鼓舞激励をこの21世紀のホールとそれを聞く人の胸に振動させる。その時、我々は言葉を紡ぐことが出来ない。鎮魂歌を作曲した彼もまた戦争に招集され、亡くなっているのだ。間

          《掌編》虚空と邂逅 BYREDO ビブリオテークに寄せて

          新訳 枕草子3「正月一日は」1

           お正月はやっぱり空がうららかに晴れ晴れとして見え、霞がかっている中で、人々は皆身も心も特別に着飾り、心踊り、あなたも私もおめでたい言葉をかけあう。いつもにはない光景で趣がある。  1月7日は、雪の間に咲く若菜を摘む。毎年の行事ではあるけれど、いつもは目にすることがないので、人々はみな大はしゃぎ。楽しそうだ。白馬の節会のために、町の女たちは牛車を美しく整え見にいくのだ。中御門の敷居では、人々がごった返し、人々の頭も白馬を見ようと一箇所に集中し、女たちのせっかくの髪飾りも落ち

          新訳 枕草子3「正月一日は」1

          《小説》薔薇の慰め 2

           翌日、ローズ翁が目を覚ましたときには、まりちゃんによる朝の選抜の作業は終わっていた。確かに、隣にいた赤いローズやチューリップはごっそりといなくなっている。ダリア嬢も無事だったようだ。水と延命剤が新しくされ、頭が少し軽くなったように感じる。 「じい、じい、おはよう。私たちの勘は外れたわね。まりちゃんったら、今日はずっと、センター決めに時間をかけ過ぎてるの。私たちも随分前の方に来ちゃって、みんな注目!って感じ」 「僕はやはり花弁が大きいし、頭も大きいから、自分は後ろの方が目

          《小説》薔薇の慰め 2

          新訳 枕草子2「頃は正月」

          1年12ヶ月。それぞれにそれぞれの時に折り、1年を通して何かしらの趣がある。

          新訳 枕草子2「頃は正月」

          《小説》薔薇の慰め 1

          「ピンクとオレンジを基調にして、えっと、あとは薔薇はいろんな種類を入れてください。それから、よくわからないんですが、60代の人が喜びそうな雰囲気で。お願いします」 「ピンク、オレンジ、それから薔薇数種、60代。お相手は男性、女性?」 「義母へのプレゼントなんです」 「なるほど、わかりましたよ」  ローズ翁は馴染みの店員のまりちゃんと、閉店間際にやってきた客のやり取りを遠目で眺める。紺のカーディガンに紺のスカート、黒のタイツ、運動靴、大きな黒のリュックの女性客は、服装こ

          《小説》薔薇の慰め 1

          新訳 枕草子1「春は曙」 

          春はあけぼの。少しずつ明るくなっていく山の稜線。そこには赤紫の雲が細く連なっている。 夏は夜。やっぱり月の頃が素敵で、だけど月が見えず真っ暗な夜も良くて、蛍がたくさん飛び交う様子や、一匹、二匹、ほのかに光っているのも私は素敵に思う。それから、雨。これも素敵。 秋は夕暮れ。山に夕日がさして、天に届きそうに輝いているところを、カラスが寝床に向かおうと何羽かがその山の輝きを遮って飛んでいく。あのカラスにさえ趣を感じるのだから、雁が列をなして飛んでいく様子は本当に素敵。日が暮れて、風

          新訳 枕草子1「春は曙」 

          睡眠薬と眠りについて。私の処方薬と睡眠実践

           教員生活2年目は多忙を極めました。とある10月、定期考査の準備、文化祭の主任、入試対策委員があれば毎日3時間分は潰れる。部活動指導、生徒の個人相談、個別指導、厄介な保護者対応などなど。普段の業務に加え、今思えば仕事の比重はかなり重かったのでしょう。その頃は「眠い」「疲れた」などという感情はほとんどなく、朝の4時に仕事を終え、8時には出勤する、そんな生活も苦ではありませんでした。  異変が訪れたのは教員生活3年目の5月ごろ。某有名私大の入試問題が頭に入らない、授業の組み立てが

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          睡眠薬と眠りについて。私の処方薬と睡眠実践

          《掌編》淀みに咲く花  YSL LIBRE EDPに寄せて

           有給をとり勇み足で挑んだ長いショッピングの帰り道は、まぶたの下にへばりついたダークグリーンのアイシャドウのように滑りやすい道を小幅で歩かなければならなかった。真っ暗で苔むして、いつ転ぶか分からない、佑以子はインスタグラムでチェックし発売を楽しみにしていた冬コート、アイシャドウなど全てに手をとったものの、何かがそれを止めさせた。世の常識だ。  大きなビジューのついた水色のビッグカラーコート、偏光ラメがふんだんに使われた赤色のアイシャドウ、どれもスマホで見ていた通りのもののは

          《掌編》淀みに咲く花  YSL LIBRE EDPに寄せて

          戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々 オリガ・グレベンニク

          ウクライナとロシナの紛争は未だ終わりは見えないのだろうか。テレビのニュースでは、ぜレンスキー、プーチン、それから荒廃した街の風景、地図での説明、日本の支援について、戦禍を逃れるべく避難した人々、あらゆる報道のされ方をしている。その中でこの本の描写は異質なものであるといって過言ではない。 今回はこの本の概要と私個人の感想を記したい。 写真よりもリアルな写実作者はウクライナの女性絵本作家 写真や動画でウクライナの有様を目にしたことのある人は多いことだろう。 この本の作者は、2

          戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々 オリガ・グレベンニク

          初めまして!

          何かと、インターネットなどでカタカナ文字を見てもその意味が分からなかったり、インターネットの利用法が分からないことが増えてきました。 キャリアって何だろう、アイデンティティって何だろう。 社会生活がままならない状態でいつの間にか社会に置いてけぼりをくらっているな、と感じはじめ、少しでも自分の創作の幅を広げたく、noteを始めました。 まずはプロフィールから。 ・仁見(ひとみ) ・平成2年生まれ 女 ・通信教育課程で教員免許取得後、高等学校で3年間勤務した後、結婚を機に引っ越

          初めまして!