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チョコレートブラウンの板塀の家


叔父(赤木)の家の家族構成

叔父さん 啓介
おばさん 美津子
長男   実
次男   真也
三男   三男


愛理の失踪

「実は家にいて!真也と三男は沢の方見て来て!誰かに出会ったらきいてよ!」
雄介は、美津子の悲鳴のような声に飛び起きた。いつの間に寝てしまったのだろう、さっきまで従兄弟達と遊んでいたのに。

雄介がむっくり起き上がりキョトンとしていると、「愛ちゃんが帰ってこないのよ。お友達はみんな帰って来たのに」と慌てたおばさんの声が隣の部屋で聞こえた。叔父さんの啓介に電話しているようだ。


今ならスマホもあるし、少数派だが携帯もある。しかし当時は黒電話か有線が一家に一台、の時代である。運良く外回りから帰っていた啓介が勤務先で捕まったらしい。退庁時間間近で外は暗くなっていた。近くの駐在所に届けるように指示して、啓介はバイクに跨った。

慣れない山道に迷ったのだろうか、途中で疲れて寝てしまったのか、もしかしたら、川に落ちてしまったか、思考はどんどん悪いほうに向いていく。
当時は田舎で誘拐など滅多な事では起きない。勿論変な人がいない訳では無かったが、その心配はしなかった。

帰宅途中も愛理の姿を見かける事もなく、道ゆく人に尋ねてみたが首を横に振るばかりだった。「こんな時間に1人で小学1年の女の子が歩いている訳もないよな。」啓介は独りつぶやいた。崖の下や草叢も気にしながら、バイクをのろのろと走らせ夜遅く家に着いた。
家では泣きはらした目をした妻の美津子が待っていた。いくら探しても、誰に聞いてもわからないと言う。

ふと、啓介は愛理が越境入学(学区外)していたことを思い出した。本来なら、赤木家と愛理の属する学区は違うのだが、愛理の希望で親の職場のある赤木家と同じ学区に入学していた。当然学友も同じだしクラス編成も変わっていない。

愛理は赤木家に来る前はバス通学していた。啓介はバス会社に連絡してみた。夜遅かったから、愛理の乗ったかもしれないバスの運転手の自宅に連絡してもらった。しかしそんな子は乗せていないという返事だった。

一体愛理はどこに消えたのだろうか?
赤木家では探す手立ても見つからず途方に暮れていた。





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