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私の観戦生活は、静かなスタジアムから始まった

これは、正直に言うと書きにくかった話である。多くの人々の足が遠のいたであろうこの時期に、逆に観戦回数を増やした。鳴り物が禁じられた静けさの中で、観戦の仕方を覚えていった。まったくもって本来の逆である……と、私は思っている。

だけど私は、その静けさがあったから救われた。静けさがあったからこそ、サッカーの試合を集中して観られた。集中して観られたからこそ、サッカー観戦の沼に落ちることができた。Honda FCを応援することができた。そんな始まりについて、今回は記していきたい。

以前の記事でも記載したが、私のHonda FC観戦歴は非常に浅く、2019年の天皇杯快進撃、その終了後からである。ただし初観戦の時は人が多く、雰囲気に圧倒されていた記憶が根強い。正直なところ、試合の記憶もあまりに薄い。まだまだ右も左もわかっていなかったのも、あるのかもしれない。

ともあれ。その結果諸事情も含めて、2019年の観戦はその一回にとどまってしまった。それでも一応、2020年シーズンは暇を見つけられたら良いなあとは思っていたのだけど。

ところが、その2020年に入って状況は一変した。新型コロナウイルスの流行である。学生の希望を根こそぎ粉砕し、一斉休校にまで追い込んだ忌むべき病は、サッカーの世界にも暗い影を落とした。Jリーグはもとより、Honda FCの所属するJFLでも、開幕が遠のいてしまった。
感染対策を名目に様々な規制が行われ、一箇所に大人数が集まるなどもっての外という事態になってしまった。当然、Honda FCを観に行く機会など与えられようはずもない。7月に延期された開幕戦は無観客試合。私は、You Tube上のライブ中継でそれを観た。

そんな中、私に朗報が飛び込んだ。コロナ流行の影響で大幅にレギュレーションを変更した天皇杯が、なんと無料で観られるというのだ。しかもエコパで、制限ありとはいえども現地観戦可能。そしてなんとも都合のいいことに、私の日程ともたまたま噛み合っていた。行かない理由は、皆無だった(世情的には皆無ではないのだが)

かくして私は、電車に乗った。開場よりも早いにも関わらず、エコパ――小笠山総合運動公園の地に立っていた。そして、Honda FCと常葉大学の試合を見届けた。そして、気がついた。普段集中力に欠ける傾向のあった私が、試合を集中して観ていられたことに。
たしかに、試合は静かだった。応援は手拍子のみに規制されていたし、発声もピッチ上のものしか聞こえてこなかった。ボールを蹴る音が広いスタジアムに響き渡り、状況を伝える選手たちの声がこだました。2019年に初めて観戦した際に比して、あまりにも静かな戦場だった。だがその静けさが、私に余裕を与えたのだろう。とにかく、試合を落ち着いて観られたのだ。

そしてその気付きこそが、私の人生に転機をもたらした。Honda FCが勝利したことも大きかったのだろうが、私はその後、さらに2度エコパスタジアムへと足を運んだ。FCマルヤス岡崎になんとか勝利したのも見届けたし、筑波大学を逆転で倒したのも見届けた。この3度の観戦が契機になって、再びHonda都田サッカー場へと向かう意欲が、私に生まれた。

かくして私は、Honda FCの沼に落ちた。いや、元から落ちていたのだろうが(常葉戦の時点でタオルは買っちゃっていたので)、さらに墜落した。2021年からは、私の日程に余裕ができたのも相まって、本格的に都田通いが始まってしまった。最初は予定とかぶらずに行ける試合、優先度の高そうな試合を選んでいたが、徐々に沼にハマり、今年に至ってはホーム14戦中13試合も観に行ってしまった。完全にどっぷりである。アウェイもFCマルヤス岡崎戦に関してだけは2022年から連続で現地へ行ったので、やはり沼っているのだろう。ともかく、私の人生に赤の彩りが生まれたのだけは事実だった。

そして2023年、私は些細なきっかけからこんなマガジンまで作成してしまった。

主にHonda FCの話をしながら、観戦記やJFLの話もするマガジンである。サッカー歴など授業程度しかないのに、ましてや戦術とかは素人なのに、やってしまった。でも構わない。Honda FCを推すのは、私にとって人生の彩りなのだ。彼らを推す過程でにわかだ素人だと叩かれるのなら、それは事実なので甘んじて受ける。仕方のないことなのだから。ただ、それでも勉強はしたい。そう考えている。

思っていた以上に長文となってしまったが、結論は表題の通りである。私のスポーツ観戦人生は静かなスタジアムから始まり、今やフットサルへも広がってしまった。さらにはバスケや、ラグビーまで覗き込もうとしている。
節操がないとは、言われるかもしれない。だが、スポーツの観戦は面白い。試合そのものもそうだし、グルメや演出なんかも楽しい。こんな楽しいものをしゃぶらずして、どう生きていくのか。今の私は、その領域につま先を漬けつつあるのだ。ともあれ、そのきっかけを与えてくれた、静かなスタジアムに感謝である。

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